6.5歳の時
コメントが来たのでハイテンション!♪安い人間だなあ自分(笑)
あと一話で幼少期編は終了
すごい早かった印象です
◆6.5歳のころ
春が目の前に迫ったこの季節。一人でできることが多くなってきたこのごろ。
正確に言うならば、させてもらえるようになった、だけど。母さん、大事に育ててもらえるのは嬉しいけど、ちょっと過保護すぎるよ。
そんなこんなで俺は五歳の誕生日を迎えた。地球の暦で言うと、二月の下旬あたり。
ただ、今回はミリィと俺、その母親二人、それとメイドのメリラの五人だけのパーティだった。
どうやらこのごろ父さんは忙しいようだ。なんでも魔物族の好戦的な一派が、人間を攻めようとしているとか。母さんたち――どうやら父さんは、七人の妻を持っているらしい――も良くついて行ってるので、少し疲れているような気がする。
魔王は大変っスね。少しなりたくなくなっちゃったよ。
少し小さめのホールケーキを五人で分け、みんなで食べた。ミリィが口の周りにクリームをつけていたので、ナプキンでふき取ると。
「エヴィは本当にお兄さんね。ミリシアも、見習わないとだめよ?」
とミラエナが言った。
俺としてはミリシアがこのままでいてくれてもいいのだが……まあそうはいかないだろう。世話を焼ける間に、出来るだけお世話をしとこう。
それにしても、もう五年たったのか。早いねえ。
しかしまだ、俺が知らないことがある。
この城の外についてだ。
知識を蓄えるのは家の中でも出来る。むしろそうすべきだと俺は考えている。
しかしそれを実際に使えるかどうかは、実際に外に言ってみないとわからない。
そもそも使えるのかどうか、と言う点も含めて。
学園に入学するのが最初の外出では、仕入れられる情報が少なくなる。この城の周りには町が広がっているのだから、絶対に出かけるべきだと思う。いや、しなければならない。
ひとまず、母さんとメイドのメリラに相談だな。
◆
「そうですね……。当分は、ミクルア王子の入園の準備が忙しいので。
王子たちが学園に行った春以降なら、町に出ても構わないですよ」
とメリラは言っていた。母さんは、
「メリラが付いて行ってくれれば大丈夫」
と言っていた。ようするに良いってことだろう。
今はミリシアが、自分の母を説得中。説得と言っても、ひたすら泣いてごねているだけだが、説得は説得だ。
健闘を祈る。
◆
俺には、あまり剣の才能が無いのかもしれない。
そう思って、エル兄に聞いてみた。すると、
「いや、そんなことは無いだろ。誰でも始めたばかりなら、そんなものだ。むしろ伸びる速さは、おれ以上だぞ? だいたい、お前はまだ五歳なんだから。そんなことに悩むな」
と苦笑されてしまった。
多少お世辞が入っていることもあるだろうが、それでも少しは心が楽になった。
こんなに剣の練習を教えてもらっておいて、いまさら無下にもできないからな。
◆
初夏のころ。俺は初めて城下町に出ることができた。
俺たちが来た北側は、フリーマーケットの様になっていた。
多少のお小遣いは貰っているが、しっかり考えて使わないとすぐに足りなくなるだろう。
お忍びで来てるから、顔パスするわけにもいかないし。そもそも、そんなことはできればしたくない。
なので、俺は端から値段を調べていく。紙とペンは、このために、事前に借りておいた。
探す物は、もちろん本だ。できれば魔術に関することが載っているとうれしい。
ミリィは、初めての町に大はしゃぎ。メリラさんがいなかったらどうなっていたことやら。
結局お目当ての本は見つからなかった。案外掘り出し物があると思ったんだが……まあ仕方がない。
また、いつか来ることにしよう。
◆
と言うのはメリラさんと母さんに言った縦前だ。もちろん魔術の本が読んでみたかったのは本当だが。ちなみにそのことも二人には話していない。俺が魔術を使えるって知らないからね。教えるつもりは、今のところゼロ。
実際の目的は、町の観察と情報の入手。王宮にいる限り、全然わからないようなことをいくつか聞けたのが、かなりの収穫だろう。
今のところ、次の魔王を継ぐと思われているのは第一王子か第三王子らしい。二番のアホ之助は期待されていないようだ。
確かに、あいつに任せると国が亡びそうだ。
北地区は、王都の中でも比較的治安が良い場所だとも聞いた。正反対の南側はスラム街になっているとか。きっと、俺とミリィを北に連れてきたのは、そういう理由なのだろう。
いやな話も聞いた。
王都ではあまり見られなくなったが、少し離れた町などでは今だに他種族、特に人間に対する差別があるらしい。ところによっては奴隷までいるとか。
「そうなんですか……」
「ああ。だが今の魔王様になってからはだいぶ減ったね。少なくとも、王都にいれば迫害はされずに済むようにはなった。昔よりは良くなったさ」
獣人族のおばさんは、そう語っていた。
しかし奴隷か。胸糞悪いな。
別に俺は、人は生まれながらに平等だ、なんてことを思ってはいない。それならなんで俺は十五年で命を落としたのか、説明ができない。
だが、勝手に相手の命や自由を奪っていいとは思えない。まあこの考えは、二十一世紀の日本から来た考え方だから、この世界の常識とは違うのかもしれない。
それでも、あまり好ましい事態ではない。
俺が魔王を世襲し、奴隷を無くすことが出来るのならば、魔王になるのを良いかもしれない。
少し前向きに考えることにしよう。
◆
そういえば、俺が心の底から嫌っている第二王子・パリヌエッタは見事学園を卒業できたらしい。案外能力はあるのかもしれない。
だからと言って尊敬するわけないけどな。
俺も再来年には学園に入る。何か試験でもあるのだろうか? 文字や、簡単な計算を復習しておこう。
同年代はミリィくらいしか知り合いがいないので、友人を作れたらうれしいと思う。
◆
ここまでが、俺の五歳までの幼少期の話だ。必要な情報は、ほぼピックアップしていると思う。
ここからの学園での生活は、俺にとって波乱万丈なもとのなった。
その発端は……そうだな、俺とミリィが六歳半の時。入園まで約半年となった時だった。