3.2歳の時
この小説のキャラクターを募集します
第三章「学園編(上)」に登場するキャラクターです
アイデアをお聞かせください
よろしくお願いします
(場合によっては性格などが若干変わることもありますので、ご了承ください)
◆3.2歳の時
今日は二歳の誕生日。早かったね、ホント。光陰矢のごとし、って、こんな時に使う言葉だったかな。覚えてないけど。
今回は前の時ほど大きいパーティではなかった。どうやら、元気な子供に育ってほしいがために、一歳の誕生日は盛大にお祝いするらしい。
横の席では、
「ぱーちぃだあ」
と言って嬉しそうに手を叩く妹、ミリシア。可愛いね。その心をいつまでも保ってほしいな。結構切実な願いなんだ。
ミリシアの声を聴いて気が付いたが、そういえば俺はまだ一回も人前で話したことがない。いつから話すのが良いか、判断しかねていたからだ。
でもなあ。二歳って、やっぱり今のミリシアみたいな感じに、単語を一つづつつなげてるだけの言葉なわけだ。正直舌足らずな演技はきついな。恥ずかしい。
ってことで、俺はもう少し待つことにする。普通に話しても、おかしくは無い年齢くらいまで。
大丈夫だよ、そのうち話すから。それまで楽しみにしといてね、母さん。
◆
やっぱり今年の誕生日のプレゼントは本だった。ただし今年は一冊だけ。一歳の時が大規模だって聞いた後だから、すぐに納得できたけど。
本の題名は《勇者パロウの物語》。魔王が勇者の話を子供に与えていいのか? と思ったが、どうやらこのときの魔王は、本当にやばい奴だったようだ。頭のねじが、一本どころか百本は抜けてると思ったくらいだ。きっとこんな魔王になるなってことなんだろう。
魔術の続きじゃないのは残念だったが……考えてみれば、魔術の才能があるか無いかもわからない子供に、そんな本の続きを与えるわけがない。
いまさらながら、俺は普通じゃないことに気が付いた。
ミリシアを見れば、一目瞭然な気がするがな。俺、全然泣いたりしないし。
俺のことを母さんが心配する気持ちが、少しわかった。確かにこんな子供、俺なら病気じゃないかと思うね。
それにしても本はいいね。新しいことを教えてくれる。
どうやら、魔術という名前は勇者パロウの相手、魔王ハデスが使ったかららしい。魔王の使う術、で魔術か。単純明快だね。単純すぎてびっくりしたよ。
ま、俺が普通じゃないこともしっかりと理解できたので、とても実のある誕生日会だったと思いますね。うん。
ああ、でも俺は自分が特別何て思ってないよ? 慢心はいけないからね。自分の発展を阻害するものだ。
なんか深いこと言ったので、少し気分がいい。
◆
凄いいまさらだが、赤ちゃん用のベットから、普通の大人用のベットに変わった。前の物は少し狭かったので丁度良かったのだが、少し名残惜しかった。
大人用ベッドのふかふかさで、そんな気持ちはすぐになくなったけどね。
◆
俺が二歳半になる少し前。
最近、ミリシアがよく遊びに来る。
「おにいちゃん、あそぼー」
とても癒される時間だ。
俺は親に対してドッキリをするために言葉を話せないふりをしていたので、ミリシアに対しても口は開かない。それでもジェスチャーだけで伝わるのだから不思議だ。
さすが子供クオリティ。
「ありがとうおにいちゃん、だいすきー!」
別にロリコンな訳じゃないけど。こういう妹、少し憧れるよね。
そういえば、大して歳の差は開いてないのに、きちんと俺のことは兄として認識してるんだね。本当にうれしいよ。教育の良さだろうね。
抱きついてきたミリシアの頭をなでると、ニカッ、と嬉しそうに笑った。そうだな……例えるならヒマワリのような――。
なんで俺は花にたとえるなんてことしてるのだろう。少し冷静になった。
でもきっと、こうしてくれるのは今の内だろうね。
人の目があるところではしてくれないし。男女を意識する年齢になると、特に顕著になるだろうね。年齢も近いし。
だから今のうちに――たくさんなでなでしとこう。そうしよう。
◆
前々から知ってはいたのだが、俺には数人の兄がいる。女の子はミリシアが初めてらしい。きっと大事に育てられてるんだろう。初めての女の子だし。
俺にとって兄とは、病院生活を精神面でも、少しだけ金銭的にも支えてくれたミカゲ兄のイメージが強い。たぶん、世の中の兄が、すべてこんなにやさしいわけではないだろう。
だからこそ、俺はミカゲのイメージを崩したくなくて、こっちの兄たちとはあまりかかわらないようにしてきた。
まあずっとかかわらないなんて、無理だとわかってたから大丈夫だけど。
それに父親が魔王である以上、後継者争いなんてのもあるんだろう。
あの人が死ぬ場面を想像できないが……。
まあ、たぶん俺には関係ないだろう。俺には魔物族と人間族の橋渡しの象徴と言う意味があるからな。
なんせ俺の母さんは、現勇者アカツキの妹らしい。
そのアカツキという人にも会った。武人のような堅苦しさは無く、どちらかと言うと、フレンドリィな感じがした。
魔王と酒を飲む勇者。新しいな。
小説にしたら、少し儲けられるかな?
――まあ無いだろう。
でだ。何故兄について話したかと言うと、数えたところ八人いた兄の内、嫌いな奴を見つけてしまったからだ。
魔王が俺を合わせた九人を集めて食事会をしたときだ。
何故食事会何てするのか、わけがわからないが、きっと腹の探り合いでもしているのだろう。言葉に少し、とげが見える。
どうやらこの国には、兄弟だから仲良くしようなんてことは無いようだ。
少し腹が痛くなる。
「しかしまだ二歳の坊ちゃんでは、この食事会に参加するのも大変でしょうなあ」
そこでだ。俺が言った、いやな奴の声が聞こえたのは。
どう考えても、二歳の坊ちゃんとは俺のことを指している。
きっと言葉を理解していないと思っているんだろう。それは俺の演技が通じていると言うことなので、その時はうれしく思った。
しかし彼の目線でわかった。あれは見下している目だってな。
正直生理的な嫌悪感を感じた。あいつとは話したくないね。
将来口より先に手が出るように、鍛え始めよう。たぶん、面倒くさがりな俺でも、長く続く。
◆
この国では、子供は七歳ごろから学校に入るらしい。成人は十五歳。八年間の一貫教育だそうだ。それぞれの進む過程で、授業を選択するようなことは、十歳になってから、らしい。俺にはまだ早いな。あと四年後くらいまで。
俺が生理的嫌悪感を持つ第二王子パリヌエッタは十二歳のため、基本学校にいる。寮で生活して周りとの友好を深めるとかなんとか。俺にとっては好都合。春、夏、秋、冬にそれぞれ最短一週間、最大三週間の休みに帰ってくるだけだ。
第七王子のトリスが来年入学すると、この城の中の子供は、俺とミリシアだけになる。
……別に関係ないな。学校に行けと言われたら、喜んで行くさ。
俺は両親に恩返しがしたいんだから。
――このごろ忘れかけてたけど。