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2.1歳の時

  ◆2.1歳の時


 おめでとう、俺! めでたく一歳の誕生日だ!


 とおもい、そしてこの世界が十二か月で一年かなんてわからないじゃないか! と突っ込んだけれど、どうやらあってるらしい。今日、二か月前に会った妹のミリシアと一緒に、誕生日のパーティをしてもらった。普通にケーキを食えたので、満足満足。同じミルクや離乳食ばっかじゃ、飽きちゃうからね。


 まあ大した量は食べられなかったんだけど、いつもとは違う物が食べれるのは嬉しい。

 離乳食は病院食を思い出させると言うのもあるけど。


 パーティには父さんも出席していた。最初にたぶん家臣みんなに、

「エヴィもミリシアも、大きな病に苦しめられることなく、一年を過ごすことができた。これも、みんなお前たちが頑張ってくれたからこうなったんだと思っている。

 今日はガンガン食べてくれ!」

 といって乾杯をしていた。その言葉を言い終わると、頭に付けてあった角を、スポッと抜き去った。なんかカチューシャみたいな感じのものだった。


 いや、まさかホントにまお○うの魔王と同じだったとは。あれ、結構ふざけて言ってたのに。


 面白かったのでまた見たい。


  ◆


 一歳の誕生日のお祝いは、本だった。母さんから一冊、父さんから一冊、家臣一同から一冊。計三冊。


 そしてその本は、なんと俺の部屋に置くこととなった。うれしい限りだ。最高だね。これで念願の文字習得が出来る!


 明日から早速読もうと思う。


  ◆


 家臣の人たちからもらった本は、歴史の本だった。伝説にまつわる話や、国の建国についてなど。かなり勉強になる……んだろうが、今のところまだ読めない。それでもある程度法則は見つけられそうなので、数日のうちには読めるようになるだろう。


 この身体、半端ない。


 父さんに貰った本に手を付けたのは、誕生日から二か月経ってからだった。

 歴史書を読み込んでしまったからである。


 どうやら、この世界は魔物族と人間族、あとその他数種の種族で成り立っていて、俺の父さんは魔物の王らしい。ガチで魔王でした。ちょっと笑える。


 人間とは基本仲が悪いが、どうやら三十年くらい前の戦争で、勇者が魔王(俺の父の若かりし頃)が一騎打ちで戦って、引き分けになって、なんだかんだで仲良くなったから、人間と仲良くなりましたー、なんて適当なことが載っていた。


 もっとも俺が驚いたのは勇者の存在だったけどな。一度見てみたいよ、勇者。


 父さんの本は、剣術についての本だった。やっぱ剣なのか。この世界で鉄砲とか作ったらどうなるんだろう。やっぱ魔法があるのかね?


 とはいえ文字は習得したので、この本は一通り読んで終わり。きっとこの先習うのだろうし、今は剣をふれるような歳でもないからな。それでも、家臣と親に見つからないように本を読むと、二週間はかかってしまった。


 すぐ眠くなると言うこともあったんだけどね。


 そして、母さんからもらった本をみて驚いた。体に衝撃が走った。

 何故なら、本の題名に、こう書いてあったからだ。《魔術基礎》って。


 この世界の本に、背表紙にタイトルを入れる習慣が無いのが恨めしい。これ、すぐに読みたかったのに。


 だが、考えてみれば文字を覚えているから読めるのであって、すぐに魔術書を読んだからと言って、魔術が出来るわけでもない。約一歳と三か月。きっと俺は、この順番で本を読んで正解だったんだ。じゃなかったら多分、飽きてたね。


 とりあえずそう思っておこう。


  ◆


 魔術書はかなり面白い。すぐに読み終わり、また読み直している。


 魔術は難易度で五段階、術の効力の規模で五段階、計二十五の階級に分かれているらしい。要するに、E1が一番簡単で、A5が一番難しい、みたいな感じだろう。牛肉の等級みたいで、なんかいやだね。


 ひとまず、難易度Eのレベルは、《何かを作って飛ばす》程度。規模1は、《範囲一メートル以内》ぐらいのようだ。


 範囲一メートルとは微妙な感じだが、きっと範囲魔術とかもあるのだろう。なきゃおかしいか。

 そして、きっとA5のうえにS0とかがあるんだろうな。そんな気がするよ。


 ひとまずあまりあたりさわりのないような、《ウォーターボール》を使うことにする。

 ……なんで転生物ってウォーターボールがよく出てくるんだろう。使い勝手が良いからだな。きっと。そう認識しとこう。


 なので使うための呪文を探してみるが……なんと、まったく見つからない。これは不良品か? と思って読み込むと、数ページ前の使用法の欄に、「イメージを膨らませる」と書いてあった。


 つまりこの世界では、無詠唱が普通ってこと? なんて残念な。少しくらいあってもいいじゃないか。


 という俺の気持ちを読んだわけではないだろうが、文章の最後尾のあたりに、「この本には載っていないものの中には、呪文を唱える必要がある魔術も存在します」と書いてあった。


 これは基礎の本だから、きっと中級とか上級の魔術なのだろう。後は難しい、それこそA5の魔術とか。


 ま、今んとこ俺には関係ないので別に良い。そのうちわかるだろう。


  ◆


 あっという間に一歳半だ。まるで俺の時間だけ進むのが早いみたいな感じがする。まあ気のせいだろうけど。


 《ウォーターボール》はほぼ使えるようになった。と言っても投げたりはできないので、手の上でとどめておくだけである。


 そういえば、これほどの水をどうやって出しているのだろう。無から作り出した? それとも空気中の水分を集めた? わからない、本当に、全く。


 でもいつか解き明かしたいね。きっと楽しいだろう。

 それに両親も喜ぶだろう。親孝行と合わせて、一石二鳥、かな。


  ◆


 俺の、ゲームで言うところのMPは、結構多いようだ。今日、初めてMP切れのような状態に陥った。今までは時間の都合上、そこまで行くことができなかったのだ。


 だが、今日は少し実験も兼ねて、危ないが火属性の《ファイヤーボール》と《ウォーターボール》をぶつけてみた。

 同じ大きさのボールだと、完全に相殺して、全て蒸気に変わることを確認した。少し水の方を多めにすると、おそらく余ったであろう水が、俺の顔の上に降ってきた。その逆は危なすぎるのでしていないが、きっと予想通りだろう。


 それを、いくらか繰り返した後、その水蒸気で雲を作れるかどうか試してみた。

 イメージで魔術を使うのならば、きっとそんなこともできるはずだ。


 あくまでも俺の推測だが、上位の魔術で呪文の詠唱が必要なのは、イメージしきれないからなのだろう。よって言葉によって魔術をサポートするのだ。

 この推論が正しければ、基本的に、魔術はイメージすることだけで出来る。さらに、イメージを膨らませれば、今までにない魔術も作り出せる……かもしれない。


 この世界は魔術が発達しているため、理科に関する知識は大してないのだろう。

 そうだとすれば、前世の記憶を持っている俺は、かなり有利になれる……と思う。


 まあとりあえず、無駄にはならないだろう。


 当面の目標は、雲を維持すること、にした。


  ◆


 魔術を使えば使うほど、俺のMPは増える様だ。しかも超爆発的に。魔王の血、すげえ。


 よって、二歳を迎える一か月前には雲を一時間程度は持たせることが出来る様になった。


 効率よくすれば、MP消費も遅くなると言うことに気が付いた後は、ずいぶんと楽になった。そのかわり、MPが0にまでなることはそうそうなくなってしまった。


 しかしそこで、すこし行き詰まってしまった。


 その気になって練習すれば、きっと雨を降らせたりすることもできるだろう。しかし部屋の中でそんなことしたら、水没してしまう。


 と、困っていたある日、暇になってしまった俺は、小石程度の《ウォーターボール》を出して遊んでいた。その時、少し寒気がしてくしゃみをしてしまう。集中力を切らしてしまったので、水をかぶる覚悟をしたが、水は落ちてこず、自分の後ろの枕のあたりに、何かが落ちたのを感じた。


 それをみてみると、なんと氷った玉じゃないか!


 たぶん「寒い」と言う俺の感情に反応して、たまたま出していた《ウォーターボール》が氷になったのだろう。


 これは大発見だ。そして今まで気が付かなかった俺が不甲斐ない。


 雪は、雲の中で氷った水蒸気が落ちてくるものだし、雷は雲の中の氷が擦れあってできる。ざっとしすぎた記憶だが、だいたいは合ってるだろう。


 つまり、物を凍らせることができればさらに出来ることのバリエーションが増えるのだ。


 魔術書に載っているのは、《土の玉(アースボール)》と《風の玉(ウィンドボール)》、それと治療系統と精霊魔法だけ。

 土はそもそも部屋の中に存在しないので却下。風の玉は漠然としすぎて、何をイメージすればいいかが分からない。治療は相手がいないし、精霊魔法はそもそも理解ができない。


 時間をかければ、そのうち出来る様になるのだろうが、今は水と火のバリエーションを増やすことにしよう。


 なので、今日からは氷の特訓開始。


 まぐれとはいえ、一度できたのだ。気長に練習すればいいだろう。


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