08-もう一度-
「何で生きてんだ」
「何で残念そうに言う?」
俺は王城と遭遇した。
王城の目の前には俺のときと同じような焼け焦げたような後が見受けられる。
そこは、街の中心を軸に、俺が襲撃された場所とは点対称の位置にあった。
もう日は照っていた。しかし、事件は丁度先ほど起きたらしい。
「向こうが僕らを襲撃する事は分かっていたからね。まずは見つからないように逃げ続けて、昼になるのを待った。それから、あからさまに登場したのさ」
「何で昼まで待ったんだよ」
「目撃者を減らすためさ」
「減らす?」
増やすならまだしも、減らしてどうするというのだろうか。
「いいかい?僕らが事件の調査をするためには、あの中心街で起きた事件は『事故』として警察に処理してもらわなくちゃならないのさ。じゃないと、僕らが底に近づくのは無理だからね」
「そりゃ・・・・・・そうだな」
「だから、間違っても『晴れた日に雷が落ちてきた』なんてことを常識にさせちゃならない。夜だったら、雷が落ちてきたら目撃されやすいけれど、日中雷が落ちても見えにくいだろうから。人があまりいない、町外れで事件を起こさせたのもそういう理由からだよ」
なるほど・・・・・・。案外考えているらしい。
「・・・・・・でも、どうして怪我をしてないんだ?」
アイツは雷を落としてすぐに後ろから殴りかかってきた。例えそれを避けたとしてもすぐに攻撃がくるだろう。見えない敵を相手にして『無傷』というのもありえない。
「ああ、それは別の事実があったんだよ」
「別の事実?」
王城は俺の発言に、待ってましたと言わんばかりに指を出す。
「アイツは、ステルス・アーマーを持っていないらしい。その証拠に、僕は犯人の攻撃を避けた瞬間に、犯人が逃げ去っていくのを見たよ」
「そんな・・・・・・」
じゃあ、どうやって――。
「そう、ここで新たな疑問だね」
俺の心を見透かしたのか、王城はそう言って笑う。
「どうやって誰にも見られずに落雷を落とせたのか」
「・・・・・・」
そう。犯人が何らかの形で『ステルス・アーマー』を使用、或いは付与されていることを前提に俺達は事件を追っていた。
しかし・・・・・・。
向こうがそういうスキルを持たずに、そんなことをする方法があるのだろうか。
「行こうか」
王城はそう言ってから、街の中に向かって歩いていった。俺も自然にその後を追う。
「行くってどこに行くんだ?」
「こういう時にはまず、事件の近くに拠点を構えなければならない。偶然にも王城グループが経営しているホテルが近くにあるからね。そこに拠点を構えよう」
「金って有るのか?」
「おいおい、僕は王城の人間だぜ?そのくらいの金はいつでも持っているに決まっているだろう?」
「そうか・・・・・・。それに、よく考えれば王城の人間だって言えば金なんか掛からないよな」
「・・・・・・はッ・・・・・・」
王城はそう笑うと少し悲しそうな顔をしたまま、街へと歩き続けていった。
なんだろう。
あの笑い方は自嘲にも似ていたと、そう感じた。
今回の話に掛かった時間。
15分。