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紡がれ行くあの過去  作者: 榊屋
第一章 始まり始まり、この世界
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07-忙しなく動く脚-

 目が覚めると、俺は病院に居た。


「・・・・・・」

「目が覚めたか」

 そこには響也が居た。

「お前、街外れで倒れてたらしいぞ」

「あぁ・・・・・・」

「まぁ今更心配なんかしないけど、母さんには迷惑掛けるなよ。兄さんも世話しきれないから」

「悪いな、響也」

 俺はそう言って、ベッドから起き上がる。

「何処かへ行くのか?」

「俺が倒れた場所まで」

「ああ、そうか。院長さんが言うには、どうして倒れたのか分からないけど、心配停止状態だったらしいから気をつけろよ」

「分かってる」

「行ってらっしゃい。勝手に退院したって伝えておくな」

「ああ」

 俺はそう言ってから、病室を出た。

 そして、閉まっていく扉を背中に

「いつも悪いな・・・・・・」

 と伝えた。

「いいよ」

 響也がそう答えると同時に病室の扉が閉じた。


 病院を出てから走った。

 俺の全力疾走なんて高がしれているかも知れないし、今更急いだところで意味は無いだろうけれど、それでも走る。

 太陽は既に昇りきっており、時間的にはまだ昼が来ていないだけだろう。体感(或いは腹)時計からして11時だろうか。

 長々と気絶していたものだな。

 まずは走りながら現状確認。

 服は変わっていないし怪我も見つかっていない。しかし心配停止になった。

 それはつまり、俺に雷自体は落ちていない。

 ではショックで心配停止という事か?

 いや、それは無い。俺に限ってそれはありえない。つまり――。



 つまり、雷が落ちてきてそれに目を奪われている間に後ろから殴られたという事か。心配停止は恐らく、『タケル』の行動だろう。あいつが俺を心配して、死んだように見せかけたということだ。

 閑話休題。

 透明人間にして雷を持つもの。

 今回の犯人である確率が非常に高い。

 だったら、これは俺は被害者だ。

 もうやるしかないな・・・・・・。




 しばらく走って、ようやく俺が倒れた場所についた。

 雷が落ちた形跡として、そこには焦げたような跡がある。

 超至近距離で俺の目の前に落ちてきたのにも拘わらず、俺にはヒットしていないところから考えて、これはただの雷ではないという事が容易に分かる。

 人はまばらで、それを見ていた人からすれば、俺に雷が当りショック死。或いは、それを見て驚いて心配停止だろう。

「どうでもいいか」

 人の気持ちなんて考える必要は無い。

「・・・・・・」

 俺が狙われた理由を考える。当然、それは俺がこの事件に首を突っ込み、答えに近いところまで忍び寄った事。つまり、王城と俺の見解を聞いていたということだろう。ということは必然的事実が存在する。


 王城も同じ目にあっているということ。


「・・・・・・さて」

 アイツは家の方向に向かって帰っていったのだろうか?いや、アイツの事だから捜査をしているに違いない。となればまだこの周辺をうろついていたのだろう。

 わざわざアイツを助けてやる義理や人情は存在しないわけだが――いや。


 助けられないのか。


 だから、俺はアイツを見に行くに過ぎないのだ。

 俺はアイツの生死を確認するためにまた走り始めた。


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