34-Endless Less-
知るか。
俺は俺だ。
味方なんか始めからいなかったようなもの。想像で創った俺の世界がたとえ崩壊しようがしまいが、それは俺の人生には関係ない。
姉は関係ない。
「関係ないんだよぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」
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今日元が立ち上がり、叫んだ。
気迫。
ただの気迫だ。明らかにそこにアクターの感じは無い。
しかし、それは俺達の勢いを消すには十分何かだった。
「な、何だ!?」
『これは一体・・・・・・』
隼人と今日元さんのあわてる声。
『・・・・・・気をつけろ、お前ら。何かおかし――』
ブツッ。
という音を立てて今日元さんの声は聞こえなくなった。
それを合図に家が変化する。
「うわ!」
「く!」
東先輩と隼人が倒れる。
「大丈夫か――う」
頭痛が走った。
俺の体も静かに崩れ落ちた。
気付いた時には、俺は立ち上がっていた。
真白な空間に居る。奥もなければ、上もなさそうだ。
隼人と東先輩は横に居た。
「・・・・・・君らが今日元の望んだ相手?」
目の前に1人の人間が居た。
その姿は今日元だったが、車椅子に乗り、目には眼帯をしている。
「何だ、お前」
俺の質問に帰ってきた答えは
「クレイジー・シーン」
と簡潔だった。
「な・・・・・・」
「彼は僕と繋がったね。完全にリンクした」
「どういうことだ!」
東先輩が訊く。不謹慎ながら言わせて貰えば、あんたが聞いても分からないだろう。
「彼の強い願いによって、2、3、4を飛ばして最終形態にまで到達したのさ」
「最終形態・・・・・・」
隼人が言葉に引っ掛かったようだ。そして思案するよな顔をする。
「もう今日元は居ないよ。立場逆転だ。ここは今日元の脳内。彼の想像の塊。そして君らの相手は僕だ。どうする?多分君らは勝てないよ」
「出してくれって頼んだら出してくれるのかい?」
隼人はこんな状況でも相手を挑発する。
「・・・・・・どうだろう。彼の願いは『姉へ絶望を与えたい』という願いだ。んー・・・・・・、君らを殺したところで今日元終に絶望が与えられるかどうかは・・・・・・」
1人ごとのように男は言う。
男・・・・・・クレイジー・シーンだ。
「まあ、言っても僕の体はこんなだから。君らでも勝てると思うけど」
「先手必勝だ」
そう言って東先輩は走りこむ。
「後手必殺ってね」
男はそう言って右手を突き出す。
手に青い球体が作られ、それが東先輩に向かって飛ぶ。
反応できる速度じゃない。
「が・・・・・・!」
東先輩は球体が当ると、目にも留まらぬ速さで俺達2人の間を突き抜けた。
「え――」
「おっと、壁を忘れてた」
そう言って男は右手の指を振った。
柱が突如として現われ、東先輩の体がそれに衝突して――。
さらにその柱を突き抜ける。
「あれ?」
そう言って男は新たに柱を幾重にも出す。その柱を4、5本突き抜けてから、東先輩は床に落ちた。
「な、何だこれは!」
「クレイジー・シーンさ」
言った男は目の前に居た。
車椅子は放置されている。
「え――」
「目に見えているものが全て本当だと思うなよ。この世界は全部が全部」
隼人の体を右足でける。
すると隼人の体は乱回転して飛んでいく。
「狂った場面だから」
「今度は上手くキャッチするぜ」
そう言ってガチャガチャのカプセルのようなものを出した。
そしてその中に隼人の体を入れて、ふたを閉める。
「酸素は何分持つかな」
「お前・・・・・・!!」
俺は拳を突き出す。
男はそれを避けて、眼帯を外した。
「目からビーム」
ふざけた調子で男は言うと、言った通りに眼帯のところからビームが出てきた。
腹部を貫通した。
それが衝突した瞬間、強烈な痛みを感じる。
そしてもう痛みは感じなくなっていた。
俺の体が崩れ落ちる。
俺は意識を失った。