28-Level Rival-
「東先輩!ソイツは――」
「言うな!ソウメイ君!」
隼人はそう言って邪魔をする。
「知らないほうが今は勝てる!」
「・・・・・・そうか」
「はぁ?お前ら何言ってんだ?」
東先輩はそう言って、首だけこちらに向けて怪訝そうな顔をする。
「気にすんな、東先輩は自分でやってくれ」
「お前タメか。殺すぞ、後で」
東先輩は言いつつ正面を向いた。
「お前、俺の後輩達に何やってんだ」
「・・・・・・お前は東諒だな・・・・・・。ブラックリストが・・・・・・」
「ぶっ潰すぞ」
東先輩は一歩ずつ歩いていく。俺達から見れば更級は現れたり消えたり忙しい。
「俺の能力を教えてやる」
更級は咄嗟に言った。
「え、マジで?教えてくれるのか?」
「ダメだ!」
隼人が言う。
「何だよ、どういうことだ?」
「いいから、気にしないでくれ!」
隼人がそう言って焦りを見せる。
その様子を見て、東先輩は言った。
「・・・・・・分かった」
・・・・・・あれ。
待てよ。これ・・・・・・。
「分かっちゃったのか?」
更級は笑った。
「何だ!?」
東先輩が言った。
やっぱりだ・・・・・・!
『分かった』・・・・・・『知った』から、消えた!
恐らく東先輩にはもうすでに更級の姿が見えてない!!
東先輩の体がこちらに吹っ飛ぶ。
「が・・・・・・!?」
宙を舞う。
「くっそ!」
東先輩は空中で身を翻し、着地する。
「どうなってる!?どこ行きやがった!?」
東先輩はそう言って周りを見渡す。
「教えてやろうか?」
目の前に更級が現れた。
「俺の能力を・・・・・・」
「え、マジで!?教えてくれるのか!?」
まずい。
知ってしまえば、東先輩も俺達と同じになる。
――が。
今ここで止めてそれを『分かって』しまえば、東先輩は更級の姿を見失う。
それにもしも、止めたとしても更級が一方的に説明してしまえば、東先輩は聞いてしまう。
結果、俺達は固まる。
「俺の能力は、自分が知らないことと出会ったときに俺と出会うことが出来る」
「・・・・・・」
「そして、何かを『知った』という感覚を得たら、俺の姿を見えなくなる。以上だ」
そして俺の視線から更級は消えた。
「東先輩。何とかできるのか!」
「・・・・・・分からん」
「そんな・・・・・・」
その瞬間、更級が現れて拳を固めていて、拳は既に東先輩の前に有った。
「東先輩!!」
拳は。
拳は空を切った。
「・・・・・・分からん」
東先輩はもう一度そう言って顔面を掴んだ。
「え・・・・・・」
「何だ!?」
俺と隼人は焦る――いや、1番焦っているのは更級だが。
「反応できた・・・・・・のか?」
「分からんな」
東先輩は何度も言う。
「・・・・・・だが、俺は消える!」
言った瞬間に俺と隼人の視界から更級は消えた。
が。
確かに東先輩は何も無い空間を掴んでいた。
「一発でいくぞ」
東先輩は言って、拳を固めた。
「何故だ!」
更級は姿を現す。
恐らくもう消えない。
俺達にも何がおきているのか分からないから。
「何故お前には俺が見えている!?」
「さっきから言ってるだろ?」
そう言って東先輩は顔をしかめた。
「お前が何を言っているのか、お前らが何を理解しているのか・・・・・・俺には分からないんだ」
つまるところ。
バカだから。
東先輩の拳はしっかりと更級の顔面を思い切り潰した。