06-突然はいつも-
別に義務は無いけれど、面白そうだと思った。
それにここで逃げても、王城はすぐにでも俺を捕まえて、協力させようとするだろう。
まぁ、面白そうな物語になりそうだ。探偵の真似事なんて初めてだけれど。
「正式名称、サンダー・ボルト」
王城はそう言いながら事件のあった中央街の周囲を歩く。
「日本語名ってのが、存在してね・・・・・・。それが言いえて妙さ。『青天の霹靂』だよ」
「晴れた日に空から雷が降るようなことを言い表す語・・・・・・だな。なるほど」
「でも恐らくそれだけではなさそうだよ」
「それだけじゃ・・・・・・ない?」
俺は王城の言葉を反復するように訊く。
「能力者が1人だけじゃない可能性・・・・・・或いは、能力が1つではない可能性だね」
「どういうことだ?」
「一応、警察官たちの厳戒って程ではないけれど態勢が捕られていたんだぜ?そんな中、誰にも気付かれずにそんな能力を発生できるかな?」
「そうか・・・・・・雷を落とすんだから、それなりの危険性はあるよな・・・・・・」
「それに『サンダー・ボルト』は、雷を自らの体から発生し、それを空に送り込み、それが地面に落ちる。放物線のような動きをしてから地面に落ちてくるのさ。だから、雷を自らの体から発生させるような奴が居たら目立つさ」
そう言って王城は、歩き続ける。
「でも、能力者が1人じゃないっていうのは?」
「ステルス・アーマー」
またも突然そう言う。
「別名を『透明人間』だろう。似ているものに『見えざる影』という事も有るんだけれど、これは消えるのではなく、他のものに意識を反らさせる力だ。現実に消えているわけではない・・・・・・」
と、そこでハッとしたように、
「話がそれたね」
と続けてから、話を戻した。
「『ステルス・アーマー』の凄いところは、自分だけでなく他人に能力を付与できる点だよ」
「つまり、他人を消せるってことか」
「そういうこと」
「・・・・・・じゃあ、能力を2つ持つっていうのは?そんな事がありえるのか?」
「事例はある。理由も方法も分からないけれど」
そこで、王城はベンチを見つけてそこに座った。俺もその横に座る。
「その流れで言うと、『サンダー・ボルト』と『ステルス・アーマー』の2つが同時に存在している人間ってことか・・・・・・」
「の可能性もあるってこと」
王城はそう言ってから空を見上げる。
「ふむ・・・・・・。夜の間に開放される事は予想通り無いな。また、後でもう一度行ってみよう。恐らく、警察もただの事故として処理するだろうから、普通に街中を歩く事は可能だと思うよ」
「あっそ。俺は協力しないからな」
「いや、君は来ると確信しているよ」
「勝手に確信するな」
俺はそう言ってから立ち上がった。
「俺は寝る。家で」
「そうかい。ところで学校の宿題は終わったのかい?」
「終わってない。今日中には終わる」
「僕はもう終わらせたよ。あのくらい1日で終わらせたまえよ」
「自由研究はどうしたんだよ」
「僕に知らない事は無い。だから、どんなものでも既存の情報があれば研究なんかする必要は無いのさ」
そして王城も立ち上がり、俺より先にその場を去る。
「じゃ、また後で」
と言って。
俺は協力しないと言ったのにも拘わらず、それを気にも留めていなかった。
「・・・・・・」
それにしても眠い。1度帰って寝ることにしよう。そして昼におきてから、宿題をしよう。
そう思ってから、俺もその場を去った。
「!」
ピシャァ!
と。
俺の目の前に雷が落ちた。