25-Last Least-
「アンタ・・・・・・何でここにいるんだ!?」
「お前らがやってきたんだろ?俺はここに滞在して説教していただけだ。お前らが帰ってくるのを待ってな」
「・・・・・・隼人、コレは・・・・・・!?」
「アクターに・・・・・・こんな能力は無い」
「そんな・・・・・・」
「新型の可能性がある」
つまり僕に対応策はわからないってことだ。
そう言って隼人は表情を強張らせる。
「で・・・・・・どうするんだ?お前らは」
「・・・・・・」
「俺の説教でも聴いているか?それともこの現象の根拠を捜すか?一応言っておくと、俺は階段の場所を教えたが、3階にいく階段だとは一言も言ってないぞ。ここに戻ってくる階段だったかもしれない」
そう言っている更級を見る。
だが、俺でも分かる。
それは無理だ。
なぜなら俺達はこの2階から、扉を開けて廊下を進み左に曲がり3番目の扉を開けてクローゼットをずらし階段を昇った。
つまり、それまでの経過で俺達は2階に居たのだ。
だから3階に行き着くのが当然のはずだ。
少なくとも2階に行き着くことはありえない。
アクターで何か細工をしたということか・・・・・・。
「してない」
隼人は言った。
「してないって・・・・・・?」
「分かった。ていうか、少しおかしいとは思っていたんだ」
「おかしいって・・・・・・・」
「彼は答えを教えてくれていたんだよ」
そう言って男を指差す。
「彼の言っていた階段ってのは、この階に通じる階段だったのさ」
隼人は、男の横を通り扉を開いた。
長い長い廊下。
先ほど見たのと同様だった。
「まず」
隼人は、廊下を指差す。
「この廊下は緩やかな下り坂だ。しかも人が普通では気付けないほどに」
「・・・・・・そうなのか?」
「間違いないね。発想を逆転させれば」
「逆転・・・・・・?」
「ああ」
そう言って隼人は笑う。
「どうして2階に到達してしまったのか、じゃない。2階に到達するにはどうすればいいのか、だ」
「それは・・・・・・」
「前提が崩れている、だろ?そうだ。僕は前提を変えたのさ」
隼人は廊下を進む。
どうでもいいけど男を放置しているのはいいだろうか?
「左に向かって曲がる」
「ここに細工は?」
「無い」
そう言って隼人は3番目の扉を開く。
「ここに細工は?」
「無い」
「部屋には」
「ある」
「どんな?」
「気付きにくいよ。でも、ちょっと意識すれば気付く」
そう言って隼人は扉を閉めた。
・・・・・・ん?
体が少しずつ体が下がっていく。いや、上がってる?よく分からない、あの感覚。
・・・・・・分かった。
「エレベーター・・・・・・だよな?」
「よく分かったね」
隼人はそう言ってクローゼットを持つ。
「エレベーターが止まるまでは、クローゼットは動かない。そして、到着すれば――」
エレベーターが止まった感覚を得る。
そしてその瞬間、静かな音でクローゼットはスライドした。
何も力を加えなくとも動いたのだ。
「・・・・・・階段が急すぎたのもそういうことか」
「そういうことだね」
俺達はそう言って階段を昇った。
すると。
そこに男は居なかった。