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紡がれ行くあの過去  作者: 榊屋
第二章 突然が当然のこの世界
57/81

23-Thinking King-

 隼人の能力名をそのまま流用。

 1階には何もなかった。

 絨毯と壁紙以外、何一つ無い。

「何も無いな」

「・・・・・・・・・・・・」

「じゃあさっさと行こうぜ」

「何も無いはず無いだろ?」

 隼人はそう言った。

 どうも、先ほどから怒った口調が変わらない。

「いや、どう見ても――」

 ・・・・・・。

 ああ、そうか。


「聖域指定・・・・・・」

「引っ掛かったばかりなのに、成長しないな君は」

「うるせえ」

 俺はそう言って隼人を見る。

 当の本人である隼人は、まるで気にしていないかのように歩いていく。

 時には何も無い空間を避けるようにしている。

「おい、隼人――」

「ソウメイ君!右だ!」

 言われた瞬間、何のことかも分からず、俺は右に向かって手を出した。

「!?」

 何かが手に当った。

 そしてその衝撃が俺の体を吹き飛ばした。

「っと・・・・・・」

 衝撃を受け流そうと、そのまま流れに沿って吹き飛ばされ――。

「っで・・・・・・!?」

 何も無い空間につまづいた。

「と、あ、わ、ああ!!」

 こけた。

 しかも、何も無い空間に頭をぶつけた。

「痛ぇ・・・・・・・・・・・・」

「大丈夫かい?」

 そう言って隼人は俺の横に立った。


「どういうことだ・・・・・・?」

 何も無い空間から声がした。

 聖域指定の男の声だった。

「・・・・・・」

「どうして、お前には分かるんだ?この場所にきたはずの無いお前に」

 そう言って男は姿を現した。


「貴方が、例の聖域指定の・・・・・・」

久留巳くるみ仁志ひとしだ。質問に答えろ」

「・・・・・・この部屋のおかしい点が1つだけある」

「・・・・・・」

「階段まで消したのは間違いでしたね」

 隼人はそう言って、何も無い空間を指差す。

「・・・・・・そうか」

「僕の脳なら、この空間に何があるか分かるんですよ」

「見えているのか・・・・・・?」

「ええ。だから、この世界で僕に勝つのは難しいかと」

 そう言って、隼人は拳を突き出した。

「そして、これで終わりにしましょう」

 隼人は笑った。

「キングダム」


 世界が真黒に変わった。

 目を閉じて、開けたときには既に、だ。

 この感覚は慣れそうも無い。

「これは・・・・・」

「貴方より格上です。物を見ないようにして騙す能力とは違い、これは物の介入を完全に拒みます」

「・・・・・・」

「しかもこの世界では貴方は能力を使えない」

「チェックメイトだと言いたいんだろうな」

「ええ」

「舐めるなよ」

 男は走り出した。

 それから隼人を蹴る。

 隼人は微動だにしない。

「この能力は把握している。この力の最中はダメージを受けない。そして蓄積されたダメージを全て後で衝撃として受ける事になる」

「・・・・・・」

「なら、今この間にダメージを与え続ければいいだけの話!」

「解除」

 そう言って隼人は笑った。


「な――」

「任せた」

「あいよ」

 俺はそう言って左手で久留巳の頭を殴った。


「結局、殴り合いは出来なかったな!!」

 そう叫びながら。


 当然ながら。

 あらかじめ作戦を立てていた。

 聖域指定の男と出会ったとき、隼人の脳ならば対処できる事を聞いていた。

「嫌だ」

「は?」

「俺は悪い意味でアイツに借りがある」

「・・・・・・そうか。まぁいいよ。君のプライドを守ることも君を守ることと同義だ」

 そして立てられた作戦は、単純だった。

 隠れた状態や物体を隠した状態で現れれば、俺に対処は出来ない。

 が。

 1度キングダムを使えば、それらは全て解除になる。

 後は相手が油断した瞬間――そして能力を復活させれていない間にけりをつける。

「大丈夫。君の左手なら脳だって破壊できる」

「いや、そこまでするつもりはない」

「そうか?でも、右手で殴るのはやめたほうがいい。頭を殴った時に膨大な量の情報が君の中に入り込む。言っても『頭』だから」

「・・・・・・分かった」



 作戦は見事成功した。

 無駄に人を殺すこともなく、男は倒れ伏した。

「コイツどうする?」

「警察に突き出そう」

「で?それまで倒れてくれている保証は無いわけだけど・・・・・・」

「そうだね。でも心配ないよ」

 そう言って隼人は家具を指差した。

「これらをコイツの上においておこう。いくら消えても、透明人間みたいなものになるだけで、逃げれるわけじゃないし」

「・・・・・・そうだな」


 何だろう。

 隼人は怒ると異常なストイックさを出す。

 コイツは怒らせないほうがいいなと、思うこと頻りだった。

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