19-Through Throw-
「・・・・・・」
右手の力を使えば追跡は出来る。
1日かければ、間違いなくあの男を追いかけることも可能だろう。
だが。
追いかけたところで俺にはどうにも出来ない。先ほど同様、撒かれてしまうだろう。それに行き着いた先には恐らく化物が揃っているに違いない。
今この状況で俺がやれることは、ない。
「・・・・・・帰ろう」
俺は地面に向かって呟いて、足を進めた。
「お帰り」
帰ると隼人がそう言って迎えてくれた。
いや、迎えてくれたというには少し乏しい出迎えだった。
扉を開けて、玄関に倒れていた。
「酔っ払いか」
「こう見えて――」
と言いかけて、少し黙った後、
「見た目どおり、僕は運動はあまり得意じゃないんだよ」
と言い直した。
「走ってたのか?今まで」
「いや。帰ってきて、10分は経ったかな」
「何で倒れっぱなしなんだよ・・・・・・」
俺はそう言って隼人の横に座り込む。
「体力が無いもので」
「ていうか、キングダム使って何とかできないものなのか?」
「アレは異常に精神力を使う。慣れたら戦いにも利用できそうだけど・・・・・・それにそれ以前に、アレは本来の世界とは別次元にあるといっても過言ではないし、対象者がいないと使用できない」
「対象者ってのは?」
「基準が無い。どうも、そのあたりは『アイツ』が勝手に決めている」
「アイツ・・・・・・?」
・・・・・・。
ああ、そうか。
「僕は会話したこと無いけれど、アクターだね」
「会話って・・・・・・」
「僕も良く分からない。それ以上聞かれても何とも答えられないよ。それより」
手早く話を切って、追求を避け、さらに話を転換する。
行動が早い。
「君は一体何をしていたんだ?」
「・・・・・・」
「いやいや、深い意味は無いよ。僕らが居なくなってから君が帰るのは遅かったから、聞いているだけだよ」
「・・・・・・別に何も」
「本当に?」
隼人はそう言って尋ねる。
「・・・・・・」
「例え君が犯人を追跡する事が出来て、見事見つけることが出来たけれど、『聖域指定』によって負かされて撒かれたとしても、僕は責めたりしない」
「知ってたのかよ・・・・・・」
全く。
お前は本当に「見透かした野郎だ」と隼人が先に言った。
見透かされた。
「いやいや、僕は僕の予測を話しただけだよ」
「嘘つけ」
「それにしても君はテンプレのような天才的な展開だね。さすが主人公」
「俺は主人公じゃない。それより、現状の話しをしろ」
「ふむ。じゃあ能力の話から」
そう言って隼人は体をようやく起き上がらせた。
「聖域指定」