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紡がれ行くあの過去  作者: 榊屋
第二章 突然が当然のこの世界
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18-Area Barrier-

「みーつけた」

 俺はそう言って、男の前に立った。

 広い公園。

 しかし真夜中ともなると人は1人も居なかった。そして風でブラブラと無造作に揺れている片方のブランコの横のもう1つのブランコに、悠然とした面持ちで男は座っていた。

「・・・・・・」

「かくれんぼは終わりにしようぜ」

「ああ。そういうことね」

 男は立ち上がった。

「見つかるはずが無いって聞いていたんだけどな・・・・・・」

「俺の存在を知らなかったんだろうな」

「だと思う。俺は写真でお前の顔は見たが、お前までそういうのだ・・・・・・ということは聞いていなかった」

「だろうな」

 隼人は昔からコイツらで言う『そういうの』と関わり続け、東先輩はここ最近でコイツらと関わり続けている。

 それに対して俺は、コイツらと関わった時も目立った行動をしてないし、『そういうの』に関わり続けたのはごく最近だ。

 俺の存在が割れていないのもまあ当然だろう。隼人と東先輩はブラックリストだろうけど。

「これからどうするつもりだ?」

「アンタを捕まえて、警察に突き出す」

「俺みたいなのが、お前に捕まると思うか?まして、警察官ごときが俺を捕まえたままにしておくのはほとんど不可能だ」

「・・・・・・」

 それもそうだ・・・・・・。

 いや、ここで納得している場合じゃない。相手のペースに飲み込まれる訳には行かない。

「どうだろうな」

「・・・・・・どういうことだ?」

 どういうことなんだろうな。自分でも考えながら言っているのだから、俺に聞かないで欲しいくらいだ。

「警察にも『そういうの』に対する特殊対策部隊が存在するんだぜ。お前くらい捕まえられるだろう」

「嘘だな。そんなもの存在する情報なんて聞いたことが無い」

 ばれた。しかし、男も多少焦りを見せている。

「嘘じゃないぜ。俺はその内の1人だからな」

「・・・・・・何だと・・・・・・」

 掛かった。

 飲み込めそうだ。

「特殊対策部隊だからな。俺みたいなガキでも出来るわけだ」

「という事はあの眼鏡の少年もか・・・・・・」

 男はそう言って俯く。

「・・・・・・ここは戦うよりも逃げた方がよさそうだな」

「逃げられると思ってんのか?」

「逃げられる」

 男はそう言って立ち上がる。

 俺と男の距離は2メートル程度。

 ともすれば、逃げられるはずが無い。

「お前の能力は分かってるぜ」

「・・・・・・本当に分かっているのか?」

 男はそう言って余裕の表情を見せた。

「俺の能力はお前の斜め上を行くぜ?」

 瞬間。

 男は動いた。

 その動きにあわせて動く。

「反応速度はすばらしい。身体能力は高そうだから、物理的に逃げる事は不可能だな」

「分かったら大人しく捕まれ」

「戦えば負けるだろうが、逃げる事は可能だと信じているぜ」

 男はそう言って、俺の方に向かって走りこんできて拳を振るってきた。

「くっそ・・・・・・!」

 ギリギリでかわせそうだったが、無理だった。拳は俺の頬をかすめる。そしてそのまま素通りする。

 立ち位置が逆になり、俺はブランコ側に転がり込んだ。

「戦わないんじゃなかったのかよ!」

 俺はそう言って、男のほうに飛びついた。

「俺には下準備が必要なんだよ」

 男はそう言って、突っ込んでいる俺から離れるように後方の空に高く飛んで、俺を指を差した。



「残念でした」 



 瞬間。

 俺の体は空気に張り付いた。

 傍から見れば、とても上手なパントマイムだったろう。


「・・・・・・なんだ・・・・・・これ・・・・・・!?」

 俺はその壁に手を添える。ガラスを触ったような感覚を得た。

「俺の力だよ」

「・・・・・・何だと・・・・・・」

「どうせお前のことだから、爆発の能力だと思ったんだろう?残念だったな」

 男はそう言って、俺の手のひらに重ねるように手を置いた。

「お前は俺の能力も分からず――何も見えずに・・・・・・逃げられる。大丈夫だ。俺が3キロ以上離れれば解除される仕組みになっている」

 何も見えず・・・・・・!?

 どういうことだ!?

「くっそ!」

 俺はその壁を思い切り叩いた。

 ドンという鈍い音がした。

 俺の拳が痛いだけだった。

「今度会うときは、殴り合えるくらい強くなっとくんだな。少年」

 男はそう言って、歩き去っていった。




 気付いた時には俺は公園の中央に寝転んでいた。

 どういう経緯があったのかは全く覚えていない。



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