16-Pass Past-
50話突破。
後、20話くらいで終わると思うよ。
「俺が家を飛び出してから、ものの数ヶ月だ」
今日元さんはそう言って続けた。
その時は中学3年生で、丁度卒業式を終えて、中学生でも高校生でもない時期を見計らって家を飛び出した。出来るだけ計画してから行動していたつもりだ。生活用品を準備して、バイト先も見つけてから家をでていたからな。
バイト先でとにかく自らの生活費だけ稼いで、路上で生活していた。家に関しては考えていなかったわけではないけど、足がつくようなことはしたくなかったから。
しばらくして、俺は迷子になった。
昔から方向音痴で、迷子になる事が多くてね。だが、俺は既に自らの才能を持っていたから、まぁ大体何とかなっていた。
しかし、予想外な事が起きた。
そこがチンピラの溜まり場だったことを俺は知らず、そのままそこをうろついていた。
後はご想像通り、俺は奴らに捕まった。
で乱暴されかけた。
まぁ犯されかけた、ということだな。
そこに現れたのが、東だった。
第一声は、大きな声で
「死ね、お前ら」
だったよ。
別に俺を助けに来たわけではなくて、他の女にも色々と手を出していた連中が、俺を連れて行っているのを見て、我慢できなかったらしい。
東はその時点では、俺みたいな力は持っていなかった。
けど、そのチンピラたちは東の相手にならなかったよ。
「お前も俺と同じなのか」
東はそう言った。
「俺もつい最近出てきたばかりだ。今から俺は暴走族を作る」
「犯罪か・・・・・・」
「いや、俺は族は族でも義賊になる!」
堂々と彼は言ったね。
『ぞく』の字が違う事を知らなかったらしい。
どうも義賊になるための第一歩だったらしいよ。つまり俺は踏み台に過ぎなかった、と・・・・・・。
言いすぎ?
ああ、そうだな。それは東に悪い。少なくとも俺は助けられたのだから。
それをキッカケに俺は東に協力し始めた。同様に東もそれをキッカケとして、力を持ち始めた。
それだけだった。
それだけで私は十分だったのさ。
なのに・・・・・・。
「ああ、そうだ」
そう言って今日元さんは話を打ち切った。
「俺が今回、路地に居たのは、呼び出されたんだ」
「呼び出された・・・・・・!?」
つまり。
つまりソイツが犯人の関係者だという事では・・・・・・!?
「呼び出したのは、俺の父だ」
「え・・・・・・!?」
「いくら反抗して出て行って気に入らなかったからといって、俺を犯罪者にしようとするか、普通?」
分かっていたのか・・・・・・。
「俺の話を聴いてくれたお礼だ。本当は黙っていようと思ってたんだがな」
「・・・・・・どうしてですか・・・・・・?」
「こんなこと言ったら、お前らは犯人だけを倒しに行くだろうけど、東はそうは行かない。俺の家族も潰しにいく。まぁ別に俺の家族はどうなろうと関係ないんだけど、そんなことになれば、東は犯罪者だ」
そう言って今日元さんは、天井を見た。
「これ以上東を関わらせる訳には行かない」
東が俺に迷惑を掛けないように関わらないのと同じだ。
と続けた。
東先輩は恐らく気付いていないだろうが、今日元さんは知っていた。
東先輩が今日元さんに迷惑を――心配をかけないように努力している事を。
「さて。後は探偵に任せるぜ」
今日元さんはそう言って、手錠をパキッと破壊してから
「頑張れ~」
と気の抜けた応援をして去って行った。
どうでもいいけど、東先輩の心配はするけど、俺達の心配はしてくれないんだな。
まぁいいや。
俺もその後部屋を出て、廊下を歩く。
特に異変も無い。
安心安心。
そして元の部屋に戻ると。
その部屋だけが綺麗に爆発していた。