13-No Now-
「そこまでだ」
俺の背後から声が聞こえたかと思うと、如月の体が吹っ飛んだ。
「・・・・・・!」
後ろに居たのは、東先輩だった。
バイクにまたがり、珍しく1人で立っている。
「悪いな、嘉島。ここからは俺のターンだ」
そう言ってバイクから降りる。
「・・・・・・何をした?」
如月はそう言って東先輩を睨む。
「タイヤを投げた」
そう言って東先輩は手の上に小さなタイヤを作る。
「・・・・・・この街にはこんなのばっかりなのか?」
如月はそう言って。
背を向けて走り出した。
「逃げるが勝ちだな」
如月の捨て台詞が聴こえる。
「無理だぜ」
東先輩はポケットに手を突っ込んだ。
そしてそのまま走り出した。
「!?」
そして如月に追いついた。
「何で・・・・・・!」
「俺の靴には車輪とエンジンがついているんだよ」
そう言って、如月をラリアットの要領で後ろから殴り倒した。
「ぐぁ!」
如月は叫んで、床に伏す。
そしてその首を掴んで東先輩は如月を押し倒す。
「捕まえたぜ・・・・・・!」
「僕の殺人を舐めるな」
如月はそう言ってナイフを後方に向かって投げた。地面に伏した状態でだ。
そしてそれを見もせずに両足の靴の間で掴みなおす。
「!」
その状態から膝を曲げた。つまり、東先輩の方に向かっては靴は動く。
ザシュ!
と。
東先輩の腕に突き刺さる。
「ぐ・・・・・・!」
東先輩は思わず、手を離す。
その瞬間に如月は態勢を取り直すと、すぐに動いて東先輩の腕からナイフを抜いた。
「コイツは返してもらうぜ」
「逃がしゃしねーぞ」
そう言って、2人は睨む合う。
「はい、残念」
そう言って、如月の後ろに黒い影が降り立った。
「如月。勝手に行動するな。お前1人の行動で全員やばくなるんだぜ?」
「あー・・・・・・」
如月はそう言って残念そうに頭を掻く。それから言った。
「悪いな。だけど来たのがお前でよかったよ。神道とかが来たら僕は――」
会話している2人の後方から3人の影がやってくる。
「如月ィ・・・・・・」
「げ」
「勝手に行動するなといっただろうが!!」
男はそう言って如月を睨む。
「神道!落ち着け!」
「貴様は何故こうも自分勝手に――」
「おい!」
思わず俺は叫んだ。
「お前・・・・・・あの時の男だろ・・・・・!」
「ん・・・・・・ああ。それがどうした」
何の事無いように『神道』は答える。
「お前ら何なんだ・・・・・・」
「如月 幽鬼」
「神道 結弦」
「羽賀 祝人」
「橋田 明日香」
「無花果 弥生」
全員がそう言って名を名乗る。
「シンデレラだ」
『神道』がそう言った。
「シンデレラ・・・・・・?」
「俺達はシンデレラと名乗り、様々な場所で犯罪者駆除を行っている。そういう面子なんだよ」
『羽賀』が答えた。
「それより、如月。もうここから離れるってさ」
『橋田』がそう言って如月を呼ぶ。
「え!?何で!?」
「聴いてなかったの?ここでの犯行が大きくなりすぎて、模倣犯が出たわ。しかもその所為で罪無き人が捕まってしまった。それは私達の主義に反するの」
『無花果』がそう言って、如月を引っ張る。
「と、言うわけだ。じゃあな」
神道の発言を合図に、他の4人も道を引き返していく。
「逃がすわけねーだろ!」
東先輩が動こうとするが、それを
「ああ、そういえば」
と神道が止めた。
「貴様らが免罪だと言っているあの女・・・・・・。あの女が捕まった事件は、俺達の模倣犯の犯行だ。気絶したのもその模倣犯の所為だろう。だから俺達を怒るのは間違えている」
「信じられないな」
「信じなくてもいい。だが、2つ教えておいてやる。1つは、俺達を相手にすれば間違いなく貴様らは明日のうちには死体だ。いくら妙な力を持っていようとな。そしてもう1つは、犯人は貴様らのような奴らだから、貴様らに任せてやろうという考えだ」
そう言って神道は歩く。
「中央街の10階建て以上のビルが立ち並ぶ場所だ。そこに行けば貴様の仲間の頭脳なら分かる」
何故だか分からないけれど、俺と東先輩はその場を動けずに居た。