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紡がれ行くあの過去  作者: 榊屋
第二章 突然が当然のこの世界
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10-Wish Wash-

 警察署に入って、ロビーへと向かう。


「・・・・・・」

 少し空気がおかしいのが分かる。俺にしか感じられない感覚だろう。

「何かあったのか?」

「・・・・・・まさか、本当に警察に手を回したのか・・・・・・?」

 隼人は独り言のようにそう言って、ロビーの方に駆け出した。俺もその隼人を追っていく。

「すみません、各務原龍兵衛さんをお呼びいただけないでしょうか?」

「龍兵衛さんは、今、ちょっと立て込んでおりまして・・・・・・」

「何とかなりませんか?」

「申し訳ございません、今は――」

「探偵!」

 ロビーの女性の声を遮った主は、話の中心である龍兵衛さんだった。

「丁度良かった。こっちに来い」

 龍兵衛さんはそう言って、俺と隼人を手招きした。

 俺達は龍兵衛さんの元へと向かう。

「何かあったんですか?ロビーの人でさえ、貴方が立て込んでいるのを知っていたようですが・・・・・・」

「お前ら、あの殺人鬼の事件かぎまわってるんだろ?」

 突然龍兵衛さんはそう言って、こちらを見る。

「ええ、まぁ・・・・・・」

「突然、今捕まっている奴が犯人じゃないと、警視総監が言ってきやがった」

「警視総監・・・・・・!?」

 それって・・・・・・!

 じゃあ、あの男は・・・・・・!?

「そして、その証明として新たにもう1つ事件が起きた」

「新たな事件というのは・・・・・・?」

「人が1人殺されたよ。例によって例の如く、犯罪者だ」

 お前らもそのくらいは調べてんだろ?

 と、龍兵衛さんはこちらを見下ろす。

「・・・・・・」

「でだ。お前らが居るって事は、よ」

 龍権兵衛さんは少し身をかがめた。

「そういうことなのか?」

「・・・・・・少なくとも、多少以上の関わりはあるでしょう」

「・・・・・・そうかよ」

 はぁ・・・・・・。と、龍兵衛さんは溜め息をついた。

「まぁいい。それより、お前ら俺に用があるんだろ?」

「ええ、今、大体済みましたけど、1つお願いがあるんです」

「何だ?」

「その容疑者さんに会わせてください」

「・・・・・・いいだろう。面会ってことだな?」

 ついて来い。と龍兵衛さんは言って、廊下を進む。



「ここだ」

 龍兵衛さんは、その扉の横にもたれかかった。

「俺はここで待っている。好きに話せ」

「ありがとうございます」

 隼人はお礼を言って、部屋に入る。俺も頭を下げてから部屋に入った。


「・・・・・・こんにちわ」

「・・・・・・」

 隼人の挨拶にどうでもよさそうな顔をして、こちらを見る。

「貴方が容疑者さんですね?」

「・・・・・・」

「貴方が殺人を犯していないことは分かっています」

「・・・・・・」

「ですが、警察は貴方を拘留した状態から話すことはしないでしょう」

「・・・・・・」

 その容疑者さんは、俯いたまま返事をせず沈黙を守り続けている。

 顔が見えない。


「・・・・・・あの、返事してもらえます?」

「・・・・・・」

「僕ら、人に頼まれてきたんです」

「!」

 ようやく、容疑者の人が静かに顔を上げた。ロングヘアーで顔が隠れて表情が見えない。

「・・・・・・」

「東諒という人です」

「・・・・・・へぇ。東に頼まれてきたんだ。ってことはお前ら相当優しい奴なんだな」

 先ほどまでの沈黙とは裏腹に、とても気さくに話し始めた。

「ああ、最近あんまり口開かなかったから、だるくてしょうがないや。まぁ、それもある意味楽しみではあるか。それにしてもこんな事件に首を突っ込んでくるなんて珍しいね」

「・・・・・・」

 唖然としてしまった。

 先ほどまでの沈黙が嘘のような饒舌だ。

「ああ、失敬。申し遅れたね」

 そう言って、その人は長い髪を後ろに回す。

「え・・・・・・」

 その顔は、綺麗に整っていて、格好いいという印象だった。

 しかし、どうみても・・・・・・。


「女・・・・・・!?」

「ん?東から何も聞いていないのか?まぁいいや。アッハッハッハッハ」

 女性は、そう言って快活に笑ってから言った。


「俺の名前は今日元きょうげん おわり。君の言ったとおり、冤罪を掛けられているかわいそうな女性だよ」

 『女性』のところで俺を見て、にやりと笑った。

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