05-Short Shoot-
次の日だった。
俺達は先生へ、それぞれそれなりの理由をつけて、今回の補習を休ませてもらう手続きを済ませた。教師側には未だ俺達の噂は入っていなかったようで、特に怪しまれることも無かった。
そして、今、僕らは殺人現場を回っていた。
「依頼内容はよぉ!」
夜なのに叫び声から変わらない東先輩(呼称決定)はそう言って、玄関で話を続けようとする。
「分かりましたから、叫ばないで下さい!」
隼人はそう言って、叫び返す。
「お、おう。分かった。じゃあ、中入れてくれるか?」
「分かりました・・・・・・けど、貴方1人でお願いします」
「おうよ」
そう言って東先輩は、外の皆の方を見た。
「てめぇら!今日は解散だ!さっさと帰れ!」
「「「了解っす!!」」」
全員そう叫んで、エンジン音を激しく鳴らしながら、エンジン音に負けないくらいの叫び声で
「うぉぉぉぉおおおおおおおお!!」
と去っていった。
・・・・・・。
嵐のように現れて、しかも元凶が滞在している・・・・・・。
何なんだ、この状況は・・・・・・。
「では、中へ」
そう言って隼人は東先輩を促す。
「さて・・・・・・」
隼人は紅茶のティーカップを3つ机の上に置き、ソファに座った。もう1つの方に東先輩が座ったので、俺は隼人の横に立った。こうすると、なんとなく助手というか執事っぽい。
「依頼とは何でしょうか?」
「お前、アレだろ?よく分からんの専門の探偵なんだって?」
『よく分からんの』・・・・・・?
それは・・・・・・もしかして・・・・・・。
「・・・・・・どこでそれを・・・・・・」
「おいおい、俺達を舐めんなよ。俺は義賊やってるような奴だぜ?情報網がそれだけあるってことだぜ?」
「・・・・・・で、用件は?」
隼人は先程より俄然興味が沸いてきたのか、身を乗り出す。
「最近逮捕された、例の殺人鬼を救って欲しい」
「はぁ!?」
思わず叫んでしまった。
「いいから、慌てんなよ、後輩」
東先輩はそう言って、俺をなだめる。
「あの事件は、犯人は別にいる」
「何で、そう思うんですか?」
「その殺人鬼として捕まった奴が俺の友達なんだよ。で、ソイツは、普通、捕まらない」
意味は分かるよな?
と、東先輩は続けた。
・・・・・・ということはそのお仲間さんはアクター・・・・・・。
「・・・・・・なるほど」
「俺は脱獄の手伝いをしろって言ってんじゃないんだ。真犯人を捜してほしい」
そう言って、東先輩は頭を下げた。
「俺には出来ない・・・・・・。俺の『力』じゃ無理なんだ・・・・・・」
「しかし・・・・・・本当に犯人は別に居たのか・・・・・・」
「まあ、推理によればそういうことになるよね」
「そういえば、あの夜言おうとしたことって何なんだ?」
確か、途中で東先輩が入ってきたはず。
「ああ。それは犯人の捕まった場所だ」
「捕まった場所?」
「犯人が捕まった場所は、路地裏だ。しかも気絶していた」
「気絶・・・・・・!?」
「もうこれは絶対に、誰かが犯人に仕立て上げようとしたとしか考えられない・・・・・・のに、捕まった女性は何一つ口を開いていないらしい。おかしいだろ?」
「だな・・・・・・」
「ま、その辺はアクターだって分かったから、それで解決だろ」
隼人はそう言って地図を見る。
「それにしても、急にアクター絡みが多くなったな・・・・・・」
「僕の場合は昔から関わっていたから、そんなに印象深くないけど、確かに向こうからやってくるパターンは初めてだ。もしかしたら、君にひきつける力があるのかもしれないね」
そう言って隼人は不敵に笑った。
おいおい・・・・・・冗談じゃねーぞ。無理やりそんなことこじ付けすんなよ・・・・・・。
「巻き込んでいるのは君じゃないか?」
「いくらなんでもそれは――」
チュン!
という、静かな鋭い音で地面がはじけた。
事件現場を歩いていただけだぜ・・・・・・?
でも、この音・・・・・・。
「サイレンサー・・・・・・!?」
チュン!
「逃げろ!」
隼人が叫ぶと、
ズガン!チュン!
と銃声が増えた。
結局、こんな風になるのかよ・・・・・・。