32-俺の夢-
今回は若干短いです。
すみません。
「俺の夢・・・・・・か」
自分でそう呟いて、思考を開始するように促す。
結果。
正直に言うべきだろうと判断した。
「俺には、お前も知っている通り、姉がいる。姉の病状ははっきり言って最悪だ」
「・・・・・・」
隼人は黙って、話を聞いている。まあ、茶々入れられたら話しにくいし、都合のいいことではある。
「隼人は、『嘉島家族』を知っているか?」
「・・・・・・知らない」
「だろうな。じゃあ『嘉島 響』は?」
「・・・・・・知らない」
「それもそうだろう。しかし、これらは全て検索すれば、トップに出るくらいの有名な人たちだ。お前は、これらを忘れているんだよ」
「・・・・・・どういうことだ?」
隼人は、そう言って俺を改めて見つめる。
「俺の姉の・・・・・・恐らく、アクターだろう。その力は『人々の記憶を混沌させる』こと。結果的には全員、誰も俺の姉を知らないという状況になる」
「・・・・・・」
「俺の家系は、そういう『記憶』に関係する何かを持っている」
そこまで言って、隼人を見る。不思議そうな顔をしている。
「で、何で俺がこんな話をしたのか・・・・・・だよな?」
「そう。驚きの内容だったけれど、それが君の夢とどう関わっているんだ?」
「俺の夢は『家族を守ること』だ」
俺の発言を隼人は相変わらず不思議そうに訊く。
「俺の父さんは、ある美術品を持って失踪した」
「美術品・・・・・・?」
「どうせ知らないっつーか、忘れているからいいよ。でも、バイオリンらしい」
「バイオリン・・・・・・?」
「そ。それで、そのバイオリンを手に入れるために、皆、俺達家族を狙っていた。それを守るために、姉さんは、自分の能力を使って、家族全員とバイオリンの存在を隠したんだ。その代償として、今、姉さんはあの状況なのさ」
そこまで俺が話して、改めて隼人を見た。
「俺は、家族全員を守りたい」
「・・・・・・」
「だから、俺はお前の仲間になるような余裕は無いぜ」
俺はそう言って、隼人を睨む。
それを訊いた隼人は目を丸く見開いて言った。
「どうして分かった?」