28-2次会-
題名には特に意味はありません。
「上がりなよ」
隼人はそう言って、玄関の扉を開ける。
この小さな家の立ち並ぶ住宅街に、1つ大きな家があり、それが隼人の家だった。白く、他の家より、頭1つ出た3階立ての家で、その3階が天窓であることが分かる。
「ああ、アレはデフォルトでついていたんだけど、僕は使わないから数年前の状態で放置されてるよ」
「家族で利用しないのか?」
「ん?・・・・・・言わなかったっけ?」
隼人はそう言って、こう続けた。
「この家には、僕だけしか住んでいない」
「え・・・・・・?」
じゃあつまりこいつは一人暮らしってことか?
「実家にいたら、嫌でも王城を感じなければならないからね」
「ああ、そういうこと・・・・・・」
「まぁ、この家ももとは王城グループの所有物で、それを僕が買い取ったにすぎないんだけどね」
そう言って部屋の廊下を歩く。いくつか部屋の扉がある。風呂やトイレも完備されているようだ(家だから当然ではあるけど)。
廊下の一番奥にあった扉を開けると、リビングが広がっていた。かなり大きい。部屋を半分に分けた右側にソファは3人掛けが1つで、2人掛けが1つ。その2つを直角とした間に、長方形の机が1つ置かれている。また大きなテレビも1台ある。対し、左側には食卓用のテーブルと椅子が置いてある。その奥にキッチンがあり、食卓まで料理を運びやすく、また食卓に座った家族と母親が話しやすい環境となっている。
で、当然違和感。
明らかに家族向けの家だ。何故こんな家に隼人は住んでいるのだろうか。
「さてと、これで僕のことはほとんど明らかにしたつもりだぜ?」
「・・・・・・」
「次は君の番だ」
俺の番ね・・・・・・。
つまり俺の願いということか。
屋上での事件が形の上では解決して、その後の会話だ。
「奴がああなってしまったのは俺の責任もある。双葉が抱えていた歪みを取り除くことが出来なかったのだから」
それを知っていたのは俺だけだったというのにな。
まるで自嘲するかのように龍兵衛さんはそう言った。
「しかし、双葉さんを助ける方法は彼が、自らに責任を持つことだけでした。それができないとなれば・・・・・・」
「・・・・・・そうだな」
龍兵衛さんは納得したように上を見る。
「取り敢えずここにも警察が来るだろう。お前らはさっさと離れた方がいい」
「分かりました。では、またお会いしましょう」
隼人はそう言って、階段の方へと向かう。
「最後の1つだけいいか?」
「何でしょうか?」
龍兵衛さんと隼人は相変わらず背中で会話する。
「お前は一体何なんだ」
龍兵衛さんの問いに、迷わず、間髪いれずに答えた。
「探偵ですよ」