26-最後に落ちたもの-
会話しているのは、嘉島でも隼人でもないよ。
・・・・・・。
おさまったな。
殺しは出来ていないだろう。先ほど壁が出来ていたのを見た。
嘉島と王城・・・・・・奴らは一体何者だ。
「・・・・・・やっぱり生きてるか」
2つの影があった。槍は1つも帰ってくること無く、バズーカの弾は当然コンクリートを破壊したりしているため、帰ってきているはずも無い。あるのは炎だけ。
最後に落とすもの・・・・・・それは炎か。
アイツはこれを読んでいたのだろうか?
・・・・・・いや、そんなはずもない。
「何をした?」
王城に訊いてみる。
「少し、回収させてもらった」
手にはスタンガン。
「コイツらをもう一度使われたらこっちも困るんで」
「だろうな」
王城はそれらを嘉島に投げる。
「処理宜しく」
「了解」
嘉島はそう言って、左手を突き出す。
そしてそれらの全てを黒い塊へと作り変えた。
「・・・・・・貴方が最後に落とすものは、これで『炎』だけになりました」
「なるほど・・・・・・。だが、それで俺は十分だ」
炎の数は5つ。これだけあれば、何とかなるだろう。
「だったら大きさで勝てばいい」
炎を1つにまとめる。
これで直系10メートルくらいの巨大な火の玉の出来上がりだ。
騒ぎになるかもしれないが、コイツらさえ何とかすればいいだろう。
「1人ずつ、確実に殺す」
まずは、王城!
炎を投げた。
「・・・・・・」
王城は黙って突っ込んでくる。
「本当はこういうのはすべきじゃないんだよ。だって、良い子がまねするだろ?」
突然そういったかと思うと、屋上の手すりの方向へ。
そして飛び上がって、屋上の手すりに立った。
「ここに立てば何の問題も無い!」
王城はそう言ってこちらに向かってくる。
全く・・・・・・。
「阿呆が」
炎の熱が手すりを溶かす。
「げ」
王城はそう呟いて、飛ぶようにして離れる。それでも尚、こちらに突っ込んでくる。
「大きければ大きいほど、速さも増す。本来は落下のほうが得意なんだがな」
炎を王城の方向へとついてこさせる。
「貴方にぶつければ炎は消える!」
「だからそれは無理だ」
王城は俺の前をダッシュで通り過ぎる。
炎はこちらに近づいてくる。
「王城を追跡だ」
指令を出す。炎はその命を受けて王城の方へ向かう。
「・・・・・・」
王城の方を見る。
「・・・・・・!」
頬が歪んでいる。
笑った・・・・・・!?
突然だった。
頭に電流が走った。
物理的な意味で。
見ると、スタンガンの塊を嘉島が投げてきたようだ。少し電気を帯びていたようで、頭の激痛が当社比2倍くらい違う。
「くっそ・・・・・・!!」
そうか。王城は炎がでかくなる事も分かっていた。そして、その影に嘉島を隠す事で、不意打ちをしたんだ。
「くらえ!」
嘉島はそう言って走りこんできて、俺の頭を右手で狙う。
「・・・・・・大人を舐めるな」
ここまでくればただの力技だろうが!!!
俺は嘉島を地面にたたきつけた。
「バカが!大人に力で勝てるわけ無いだろうが!」
「取った」
ぱん。
え?
・・・・・・頭から力が抜ける。
死ぬ時に人の思考は異常に働くのかもしれない。
見えたのは、入り口で銃を構えている先輩の姿。目から涙がこぼれている。
聞こえた気がした。
「双葉さん・・・・・・貴方が最後に落とすもの・・・・・・それは」
なるほどな。