23-無空間有現実-
バトルを1つにまとめようかと思いましたが、やめました。
バトル前編です。
双葉さんが少しずつこちらに詰め寄ってくる。
「痛覚を否定するんなら、あんまり意味は無いかもしれないが、嘘かどうか殴って試してみる事にしよう」
そう言って拳を構えた。視線の方向は俺に向いている。
「く・・・・・・!」
左手を構え、床に向かって思い切りたたきつけた。思念を送り込むことで、壁を作ろうとしたのだ。
「無理だ!」
「!?」
壁が出来ない。どういうことだ・・・・・・?
思ったときには目の前に拳が迫ってきていたので後方に下がって避ける。『痛覚』を感じないという隼人の発言を信じていないわけではないのだが、条件反射だ。
「な・・・・・・何だ?」
「言ったろう?何も干渉できないって。現実世界には恐らく壁ができているだろうけど、ここには何も現れないよ」
隼人はそう言ってから、双葉さんの動向を探りつつ、話を続ける。
「あと、そこからは離れたほうがいい。今、現実世界の壁の中にいる。キングダムを解除した瞬間に君は壁に埋まって死ぬ事になるだろう」
「ま、マジか・・・・・・」
少しあわてて、そこを離れる。
「更に言えば、少し向こうに行けば、現実世界の『空』に立つ事が出来る。解除したら落下するけどね」
そう言って笑う隼人に少しぞっとする。
そんな会話を聞いた双葉さんは、
「・・・・・・動かないほうがよさそうだな」
そう言って拳を下ろして、
隼人の顎に向かって足を振り上げた。不意打ちというわけだ。
「・・・・・・!?」
その行為に驚いたのは、双葉さんだった。いや、正確には『行為』にではなくその結果に、か。
隼人の体はびくともしなかったのだ。
「・・・・・・言ったじゃん、さっきも。ダメージは食らわないんだって。そもそも関係ない物自体が干渉できないんだから、『衝撃』だって干渉できないのさ」
そう言って隼人は手を伸ばして、双葉さんの顎を掴んだ。
「だから、あんたが僕らを『空』の上に連れていこうなんて考えは無駄なんだよ」
強い口調で言った。
「・・・・・・バレてんのかよ」
双葉さんはそう言って苦笑を浮かべて、足を戻してから離れた。
「そもそも、この空間は僕の意思か、或いは僕が死ぬまたは気絶するかしない限り無理だ。更に言えば、この空間で僕を殺すことは無理。攻撃以外の方法で気絶させれば何とかなるかもしれないけど」
そう言って隼人は笑った。それから、「しかし」と続ける。
「このままの状態で居ても何の解決にもならない」
と右手を伸ばした。
「キングダム、解除」
言いながら指をぱちんと鳴らす。
一瞬だった。
瞬きをしたら、戻ったような・・・・・・そんな感覚で空間が戻る。
空間の黒が、星を移す藍に近い色に戻った。なるほど、こう考えるとやはり空は『暗い』だけだったようだ。
さて、事件は解決したがまだまだ戦いは続くようだな。