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紡がれ行くあの過去  作者: 榊屋
第一章 始まり始まり、この世界
22/81

22-解決の調-

 言い放ってすぐに、隼人は右手を突き出した。

「本当は、嘉島君が言うべきだけど僕に任せてくれ」

「は?」

「ロックオン、キーは『配置』」

 隼人の言葉。

 そこに特に意味も効果も無いはずだ。しかし空気が変わる。特に――。

 特に俺の胸の内で何かが騒いでいるような感触。

「キングダム。解除コードは『庇い』」

 空気が変わる。先ほどの黒さではない、空間の黒さ。

 『暗い』から『黒い』に変わったような・・・・・・イメージとしては真黒な世界に、緑色で方眼用紙のような線が、壁と床に引かれているイメージだ。

「な・・・・・・なんだこれ・・・・・・!?」

 戸惑っている俺を見て隼人は言う。

「空間支配みたいなものさ。僕の能力『シンキング・キング』の真髄『キングダム』。この空間は、限られた人間しか、かかわることが出来ない一種の『箱』になる」

 隼人が言う。確かに、外にもかかわらず壁や床が存在しているように見えるところからも、箱という言い方は的を射ている。

「今回の場合、僕と君と双葉さん・・・・・・そして本来、扉の裏に居るはずの龍兵衛さん以外の人・物はこの世界に干渉しない」

 振り向くと壁と扉は存在せず、龍兵衛さんの姿がそこに合った。

「無理やり理屈をつけるならば、僕の王としての『威圧感』が、他の何かを感じられないようにしていることになる」

「威圧・・・・・・それだけで・・・・・・」

「その所為で、痛覚や時間すらも感じなくなっているし、他の人々は『なんとなく』ここに近づいたり、気付かなかったりする。威圧感だけで、ね」

 そう言って隼人は話を続ける。




「事件の始まりは関係ない。そもそもこんな事件を起こす人間の気持ちなんて知ったこっちゃ無いから」

 隼人は放り捨てるように、手を払うジェスチャーをする。

「動機も知らない。どうせこの世の中に不満でもあったんだろ?」

「・・・・・・」

 双葉さんの顔色はあまり変わっていないが、俺は分かる。図星だ。

「この事件をややこしくしたのは、龍兵衛さんが貴方を庇った・・・事だ」

「・・・・・・」

「キーが発生した原因は龍兵衛さんの嘘だ」

 隼人はそう言ってから、龍兵衛さんを見る。

「配置に関する嘘・・・・・・。配置を龍兵衛さんは自分が屋上に居た、と言った」

「ああ、言ったな」

「嘘です」

「根拠は?」

「嘉島君です」

 そう言って笑う。

「嘉島君は情報屋と通じているんです。なので、あらゆる方向から情報を集めてきます。その辺りは機密とさせていただきますが・・・・・・」

「なるほど・・・・・・。差し詰め情報探偵か・・・・・・」

 お前といいこの空間といい、不思議なものだな・・・・・・、と続けた。

 実際のところでは、龍兵衛さんが『絶対に隠したい内容』を持っていたときに俺が触ったから、キーが発生したのだろう。


 隼人が言っていた。

「それを根拠としているのだから、本来のやり方ではない。そもそも、動機も分かっていないのに、逮捕なんて出来ない。だから僕らは、犯人の『自供』のみが鍵となる。そして警察の裏づけ捜査の必要が無いくらいの『現実的な根拠』を突きつけるのさ。まぁそれでも効果なんてほとんど無いから、そういう犯人は大抵、死刑か無期懲役・・・・・・或いは、外部に漏れないところで一生研究に使われている可能性もある」


 言い方から考えても、龍兵衛さんはまだ「こういったもの」にかかわりが少ない、或いは0ってことか。

「さて、嘘というのはたった1つ。ここまでくれば誰でも答えは分かる」

「・・・・・・」

「屋上に配置されていたのは双葉さんだ。だから、配置について嘘を吐いた時、双葉さんすらも驚愕の表情を見せた。何故庇われたのかが、わからなかったから」

 そういって双葉さんに視線を向けなおした。


「ですね?」

「・・・・・・ああ」

 双葉さんはそう言って、龍兵衛さんを見る。

「・・・・・・どうしてですか?」

 双葉さんが訊く。

「・・・・・・」

「どうして庇ったんですか?」

「・・・・・・この一見平穏なのに、不穏な社会には若い力が必要だ」

「・・・・・・」

「というのはまぁ後付の設定だ。本当は単純に後輩を守りたかっただけの、間抜けな先輩だよ」

 そう言って龍兵衛さんは笑う。


「双葉・・・・・・守れなくて悪いな・・・・・・」

「・・・・・・今までありがとうございました」

 そう言って、双葉さんも笑う。



「だけどすみません。僕はここで捕まるわけには行かないので」

 そして双葉さんはこちらを睨んできた。

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