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紡がれ行くあの過去  作者: 榊屋
第一章 始まり始まり、この世界
21/81

21-尾行×真実×正体-

 ハンター×ハンター的なね?

 夜8時。

 空は雲1つない真黒な海。虚空とは別の意味で、虚無感を感じさせるような空だった。

「・・・・・・」

 そんな空の下、俺と隼人は龍兵衛を尾行していた。

「・・・・・・バレてないのか」

 隼人に尋ねた。相手は言っても警察だ。どちらかというと向こう側の十八番と言うべきだろう。

「分からないさ。でもやるしかない」

 隼人はそう言いながらも龍兵衛さんから視線を外そうとしない。

「そもそもプロを相手取って、尾行しているんだ。最悪バレるであろうことくらいは理解しているつもりだよ」

「大体、龍兵衛さんを尾行する意味が分からないんだけど・・・・・・」

「仕方ないだろ・・・・・・」

 隼人は言ってから、こちらに視線を移す。代わりに俺が監視を続けた。

「僕らが彼を助けるためには、こうして何処かの屋上へ行くのを待つしかない。そして事件が起きる前に止める」

「なるほどな・・・・・・」

 と、そこで龍兵衛さんの動きが止まった。

 1つの建物を見上げている。

 それから建物の中に入っていった。

「今回はあそこってことか」

「らしいね」

 隼人はそう言ってから追いかけて建物の中に入る。


「ここの上・・・・・・なんだろうな」

「事件の解決が近いと同時に、事件が再発するのも時間の問題だ」

「でも早く止めるのが先決じゃない」

 俺はそう言って隼人を見る。隼人はそれに頷いて、

「僕が止めるのが、先決だ」

 と言って、階段を強く踏みしめて昇り始める。

 昔は何かの会社だったようだが、今は会社はなくなっている。もう既に誰からも頼りにされない、機能を失った見取り図によると、4階までしかなさそうだ。高層ビルが立ち並ぶ中央街では珍しい光景である。

「それにしても、どうしてこんな場所から『落下』させるんだろうね」

「確かに、もっと高い場所を選ぶ奴も居るかもしれないけど・・・・・・近いほうが狙いやすいんじゃないか?」

「高ければ高いほど威力と速さは増すだろ?落とすものを岩にすれば隕石くらいの力は出せる。英名は『シューティング・スター』、流星って意味だ」

「・・・・・・じゃあどうしてこんな低い場所を選んだんだ?」

「僕の予想では選んだんではなく、そこしかなかったんだよ。今回も前回も」

 隼人はそう言って俺の前を歩き続ける。

「前回は警察によって配置を決められている。だから、あの場所からしか物を落とす事が出来なかった。だから電気・・・・・・雷を落とす事にしたんだろうね」

「今回は?」

「今回は前回の教訓で、『犯人は高いところに居る』という先入観から、高い建物のほとんどに警察が配置されたり、ヘリコプターで上空からも監視している。それが彼を閉じ込めた」

「なるほど。だから、敢えて低い場所を選んだと・・・・・・」

「配置を無視してでも、屋上にいける場所がここくらいだったんだろうね」

 そこまで話したときには既に4階に到達していた。

「ここの階段を昇れば、屋上って訳か」

「そしてそこに彼は居る」

 そう言って隼人は足を階段へと伸ばして――


 止まった。

「・・・・・・龍兵衛さん」

 階段の上・・・・・・屋上への扉にはその人が立っていた。

「何をしている」

「・・・・・・宣言どおりのことをしにきました」

「分かっているのか?お前らがやろうとしていることの意味を」

「分かっているつもりです」

 隼人は躊躇せずに上っていく。

「貴方の願いです。僕と彼で叶えましょう」

 俺はそんな隼人についていく。

「・・・・・・貴方に出来ない事を僕らに任せてください」

 そう言って屋上の扉を開けた隼人を龍兵衛さんはまたも振り返ることなく言った。


「・・・・・・すまんな」


 扉を開けた。

「ようやくだ」

 そこには居た。

 さきほど隼人が言った言葉・・・・・・『僕は貴方を助けます』。

 そのセリフの真意に龍兵衛さんは気付いていた。だから龍兵衛さんはその言葉に何の反応も示さずに去っていったのだ。

 そりゃそうだ。

 だって隼人は初めから、ずっと犯人に語りかけていたのだから。


 ずっと隼人の正面に居た人・・・・・・に。


「こういう立場で会うのは初めてですかね?」

「どうだろう。あの時完全に、僕に向かっていっていたからね・・・・・・。おかげでたじろいでしまったよ」

「では改めて、探偵らしく言っておきましょう。実際の警察や探偵はこんなことしないんでしょうけど」

 そう言って隼人は指を差す。


「犯人はお前だ。双葉さん」


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