20-王城隼人の人間心理-
この題名には元ネタが存在します。
分かる人は分かるかな?
彼が言った、「決まった未来なんてつまらない」という言葉の真意を知るために、俺が知っている王城隼人という人間について語っておくことにしよう。
今日の午後の話だ。
「僕はね、王城グループの跡取りとして決定付けられているんだ」
「・・・・・・はぁ」
突然言い出した発言に俺はそう答える事しか出来なかった。
「決定付けられている・・・・・・つまり、それ以外の方針を許されていない」
「・・・・・・」
「僕にはその道しか与えられていないんだよ」
そう言ってから、脚をを組み替えて虚空を見つめる。
「・・・・・・王城も大変なんだな」
「そうでもないさ。勝手に決められて与えられたレールに沿って歩いていくだけで、誰よりも早く、誰よりも高い地点に到達できる。案外、楽かもしれないぜ?」
隼人はそう言って、紅茶のカップを口に運ぶ。
「いいのか?」
俺の発言に、隼人は手を止める。
「お前の未来が勝手に決められようとしているんだぞ?お前はそれでいいのか?」
「さっきも言ったろう?楽なんだって。そっちの方が」
「お前がそれでいいのかを訊いているんだ」
強気に俺は言う。しかし隼人は余裕そうにカップに口をつけた。そして飲み込んでから、
「良いに決まっているだろ?」
と言って笑った。
「楽に簡単に早く高い場所にいける。それの何に不自由があるってのさ」
「自由を手に入れるために自由を手放すのか?」
「・・・・・・」
「そこに何が残るんだよ」
「・・・・・・じゃあ、僕はどうすればいいんだよ」
隼人は茶化すように笑う。しかし目は真剣そのものだ。
「抗えよ」
「相手は王城だぜ?どうやって――」
「何のために演じるんだ」
俺の発言にもう一度隼人の動きが止まった。今度はこちらを見て驚いている。
「お前が手に入れたいものを手に入れるために手に入れたんだろ?『シンキング・キング』を」
「・・・・・・」
「嘘つかずに言ってみろよ。お前はそれでいいのか?」
隼人の止まった動きは、紅茶のカップを置くという行動を起こし、そしてこちらへと視線を向ける。
「・・・・・・いいわけない」
「・・・・・・」
「そんなことしても何の意味もない。僕は僕でありたい」
「・・・・・・自由が欲しいんだろ?」
「ああ。不自由な自由なんていらない。僕にだって道を選ぶ権利はあるはずだ」
「それが真実だ。一々誰かに確認してもらうような問題じゃない」
俺はそう言ってから自分のコーラをストローを通して自分の胃に入れていく。
それから、
「これを求めてたんだろ?誰かに一蹴して欲しかったんじゃないか?そんな考えはおかしすぎるって」
と隼人に確認した。
「・・・・・・そうかもしれない」
隼人はそう言って笑った。
「そうだね。僕は僕のために頑張ろう」
「ファイト」
俺はそう言ってから、コーラを飲み干した。
隼人は自分の決まった道を外れる事を。
レールを無視して進むことを。
さらに高いところを遅くてもいいから目指す事を決めた。