18-事件は始まる-
夕方・・・・・・正確に言うならば、19時になった。
俺たちは犯人が現れるのを、中央街の喫茶店のテラスの席で昼から待ち構えている。
次の犯行場所は、前回と変わらず中央街だった。
街に視線を向け、
「それにしても・・・・・・」
呟いてから、隼人の方を見る。
「警察の配備が思ったより多いな」
「だね。でも今回の配置が分からないからまだどうとも言えないけれど」
「この配置がいいのか悪いのか・・・・・・ということか」
「そういうこと。まぁ、相手は世間からすれば、『何か分からない超能力のようなもの』なのだから、警察が何人導入されようともあまり変わることは無いと思うけど」
隼人は言いながら紅茶を含む。ちなみに、昼食からここを動いていないので、かなりの量の飲み物と食糧を消費している。これいくらくらい払う事になるのだろう。
「よぉ」
突然掛けられた声を見る。
「・・・・・・!」
店外から自由に入ることの出来る、テラスに入ってきたらしい。
この事件の最後の鍵・・・・・・。
「こんばんわ。龍兵衛さん、双葉さん」
突然現れた人物にどもっている俺と引き替え、隼人は立ち上がり、スムーズに挨拶した。いつも通りの冷静さを保っている。俺はその隼人に次いで立ち上がった。
「双葉から聞いたぞ。この事件に首を突っ込んでいるらしいな」
「えぇ、まぁ」
「・・・・・・お前らの命のために言ってやるが、警察沙汰のしかも、こういうわけの分からない事件に関わるな」
龍兵衛さんはそう言って俺達に近づいてくる。そして、俺と隼人の間に立った。
「余計な真似をするな、死ぬぞ」
そう言い放って、そのまま真っ直ぐ歩いていく。殺気を発しながら歩き去っていくその背中に恐怖を感じながら、目で追う。
「それでもやるというのなら、やればいい。捕まえられるものなら捕まえてみろ。生き残れるものなら生き残ってみろ。倒せるものなら倒してみろ」
龍兵衛さんはそう言ってそこで立ち止まった。そして
「俺に出来ない事を・・・・・・やってみせろ」
と言って、また足を踏み出した。
「僕らは」
隼人は言った。龍兵衛さんを全く見ようとせずに、真っ直ぐ前を見つめている。
「貴方を助けます」
隼人はその一言だけを言って、そのまま自分の席に座って、紅茶のカップを口に運んだ。
「・・・・・・フッ」
とその言葉に小さく笑うと、龍兵衛さんまた足を動かして、喫茶店のテラスから出て行く。
道は真っ直ぐで、龍権兵衛さんの背中は常に見えている状態だった。
しかし、隼人と龍兵衛さんがお互いを振り返ることは無かった。