13-左手は『創造』を-
左手は創造することを司る。
その後、一度拠点に戻り相談する事にした。
というより、俺の能力について聞きたいらしい。
「あの壁・・・・・・君が作ったんだろ?」
「当然!」
俺は左手でグッジョブの形をした。
「で、その左手は一体何なんだ?」
「何って・・・・・・『リメンバー・リメイン』じゃねーのか?」
「・・・・・・ああ、違和感の正体が分かったよ」
隼人はそう言って、指を差した。
「その左手は『リメンバー・リメイン』じゃないね」
「そう・・・・・・なのか」
「恐らく、君の右手の変化に適応できなかった体が、左手に別の情報を与えてしまった。その結果、左右の能力が逆作用になってしまったんじゃないかな」
「・・・・・・なるほどな。お前は、よくそんなこと考え付くよ」
「まぁ、答えがあっているとも限らないけれどね」
隼人はそう言ってから、それでも自信満々の顔で、寝転んだ。
・・・・・・。
違うんだぜ、隼人。その回答は。
もしも、そうだとしてもそれは違う。
変化に対応できなかったんじゃない。それ相応のギリギリの適応状態なんだよ。
単純に俺の体の中には2つの能力があるだけなんだ。
「これからどうしようって算段だ?」
「まずは、警察へ行こう。僕らが出会った現状について説明するんだ」
「現状って・・・・・・ナイフが宙を舞ってこっちに飛んできたなんて、誰が信じるんだよ」
「そっちじゃない。僕らの目の前が光って、後ろから殴られたことだよ」
「ああ・・・・・・そっちか」
忘れていた。そういえば、俺、殴られたんだった。
「でも、雷が落ちてきた事なんて信じるのか?」
「恐らくだけど、最初の事件や君や僕のときに『目撃者』はいたはずだろう。いくつか、証言があるはず。それに、最悪、君が殴られた事を口実に事情聴取させてもらえる。その時にこちらから質問させてもらおう。今は少しでも情報が欲しい」
警察署内。
初めて来た。
「・・・・・・何か・・・・・・思ったより普通だな」
「刑事ドラマの見すぎじゃないのかい?まぁ、人の期待や願いなんて、僕らみたいなのじゃない限り、叶えられる事も無いよ」
「だな」
俺はそう頷いてから、隼人の後ろを歩く。
隼人がロビーの警察の方に話をつけている間、俺はソファーに座っておくことにした。何しろ交渉関係には滅法弱いので。
「おい」
横から突然声を掛けられた。
「お前ら、何しに来たんだ?」
2人の青年・・・・・・新米だろうか?若々しい警察官が言う。
「ちょっと、中心街での落雷事故でのことで・・・・・・」
「ソイツなら、俺たちの担当だ」
警察官の1人はそう言って、ロビーのところに行って
「コイツらの話を聞く。外のどっかで訊いて来るから、取調室はそのまま他の奴等のこと聞いておいてくれ」
と伝えると、隼人の頭を軽く叩いてから、こちらにやってきた。
「喫茶店行こうぜ。話しはそれからにしよう」
その警察官はそういうと、
「おっと、自己紹介を忘れていた」
と言って、こちらに向き直った。
「コイツは、新米刑事の、双葉」
そう紹介されたもう一人の刑事はこちらにぺこりと頭を下げた。
「俺は、各務原 龍兵衛だ。よろしくな」
これが、しばらく世話になる。龍兵衛さんとの出会いだった。