10-残留思念-
「起きろ」
俺はそう言って隼人を蹴った。
「最悪のモーニングコール」
隼人は言いながら、痙攣する。うむ、思ったよりも強すぎたかな?
隼人が落ち着くまで待つ。
「で・・・・・・何?」
「1時間くらい経ったから、飯持ってきた」
「ああ、そう」
隼人はそう言ってから俺の持っている食糧を取った。
「で、検証どうだった?」
「噂は凄い速度で広がっているな。情報量自体は足りなくて困っているけれど」
「そうかい。そりゃよかった」
隼人はそう言ってから食糧をほおばる。そしてペットボトルの水でそれらを流し込む。王城の御曹司なのに行儀悪いな・・・・・・って、ことは置いておいて。
「『よかった』?」
「ん?」
飲み込まずにそう言って反応する。
「いや、よかったのか?」
「んぐ・・・・・・。ああ。それはさっきも言ったろう?」
隼人はそう言ってから笑う。そして紙に何かを書き始めた。
「アレは、事故として処理してもらわなければならないんだよ。だから、事件だってばれそうな情報は少ないほうがいい。恐らく、集まった情報は『急に雷が落ちてきた』って程度だろう?」
「そう・・・・・・なのか?でも、じゃあ噂が広がっている事も悪いことじゃないのか?」
「逆なのさ」
隼人はそう言って、紙を折りたたんで、俺に渡した。
「そういう噂が広がれば、こういう愉快犯型の犯人はもう一度事件を起こしてくる。注目されたい人間の典型的な犯罪者だよ」
隼人はそう言ってから、部屋を出た。
凄いな・・・・・・。犯人の事まで考えて行動しているのか・・・・・・。
と思いながら、貰った紙を開ける。
「・・・・・・」
自由研究のまとめだった。内容を変えて、実験結果を記載している。それを、10枚くらいに水増しするための方法とかも書かれてある。
あんな話しながら、これ書いていたのか・・・・・・。もしかしてアイツ、脳が2つくらいあるんじゃないのか?
しばらくして隼人が帰ってきた。
「この部屋はしばらく借りて置けるように頼んでおいた。少し料金が掛かるけど、そのくらいの余裕はあるさ」
そう言って隼人は荷物を持って、外に出た。そして首をひょこっと、もう一度見せて、
「ソウメイ君もいくよ」
と俺を呼ぶ。
「誰がソウメイだ。俺は、奏明だっつってんだろ」
「そーですね」
隼人は軽い態度をとって受け流し、そのまま首を引っ込めた。
俺はその隼人を追うようにして出て行く。
中央街。
事件の発端となった場所に俺は立った。
「さて、始めようと思うんだけど・・・・・・」
隼人はそう言ってから、周りを見渡す。
「特に情報もなさそうだね」
「そうか?」
「ん?」
「情報ならここに溜まってんじゃねーか」
俺はそう言ってから右手を出した。
「情報を回収する」
「ああ、そうか。リメンバー・リメイン・・・・・・」
俺は右手を地面につけた。
「別名『残留思念』」
そこに残っている記憶や思い・・・・・・それが残留思念なのだ。