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紡がれ行くあの過去  作者: 榊屋
第一章 始まり始まり、この世界
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01-夏休み-


 紡がれ行くあの過去。

 始まりです。

 その日は終業式だったらしい。

 中学3年生の1学期の終わりだった。明日から夏休みでクラスの皆はテンションの上がり方が激しい。

 「らしい」と使ってしまうくらいに、俺にとっては学校は既に退屈を極めていた。親しい友人も居なかったため、まぁ結局言ってしまえば、どうでもよかった。


 終業式が終わり、クラスで先生の話を聞いて、夏休みの宿題のプリントやらをもらって、HRを終えた。後、3年生で受験生だから、今日・・・・・・7月20日から10日程休み、その後また学校でしばらく補習。そして8月20からまた10日程休みだそうだ。

「嘉島・・・・・・だったか?」

 と声を掛けられる。

 えっと・・・・・・青い髪の毛で、手錠のペンダント。こんな奇抜な奴は・・・・・・そうだ。海馬だ。

「何?」

「これからカラオケ行くけど来るか?」

 彼はそう言って僕を誘う。人当たりがよく、誰にでも優しく出来る。

 後、席替えしてから、一度も1番前の席になったことが無かったり、ゴールを見ずにバスケのフリースローが入ったり、今まで一度もサッカーのPKで外した事が無いとか・・・・・・。

 まぁ凄い奴なのだ。

 が。

「・・・・・・」

 その海馬以外の数人が怪訝そうな顔で俺を見ている。

 まぁ、慣れた。

 って思えるような、俺はそんな人間なのだから別に気にしない。

 ま、海馬くらいの奴じゃないと俺を受け入れてはくれないだろう。

「いや、今日はいいよ」

 俺はそう言って断った。

「ん。そうか?じゃ、また補習中にな」

 海馬は尚もそう言ってくれた。



 俺は家に帰って、荷物を置いて、別の荷物を持ってからまた家を出た。

 向かう先は病院である。



「・・・・・・」

 俺は病院についていつも通りエントランスへ。

「あ、奏明君。今日も来てくれたんだね」

「はい。いつもお世話になります」

「気にしなくていいよ。あ、今日からお姉さんの部屋の隣、新しい患者さんが入ったから」

「はい、わかりました」

 と、いつのまにか常連になってしまった俺はそのまま廊下を歩く。


 どうも俺の姉は絶望的らしい。

 生きている事が奇跡的らしい。

 何なんだ医者は。何なんだ神様は。

 どうして絶望と希望を同じ場所に置こうとするんだ。

 とまぁ誰に言うでもなく、そんな仕方の無い事を考えながら俺は姉の病室の扉を開けた。


 姉を媒体に幾つ物回線が延びている。そういう印象を受けるような姿だった。植物状態というのだろうか。こういうのを。姉は人工呼吸器とかそういったものを必要とするほどの重傷だったのだ。

 俺はそんな姉の手を両手で握る。


 コレが俺と姉さんとの唯一の会話方法なのだ。


 俺がまだ小学校だった頃に姉がこの体になった時・・・・・・俺の右手は変化した。

 そして、その時出会った親友・・・・・・「タケル」が俺の左手を作り上げた。

 よく分からないけれど、俺の右手は人の心を受信し、俺の左手は人へ思いを送信する。

 そういう風に出来ているらしい。


「あれ?奏明は今日は学校無かったっけ?」

「あるよ。全然。終わったんだよ」

「ああ、そう。ゴメンね。この状態だと曜日の感覚無くてさ」

「いや、響が気にする事じゃないよ。今日は終業式だったから、曜日の感覚があっても分からなかったと思うしね」

「そう・・・・・・」

「あ、そうだ。響也と奏から1つずつ伝言だよ」

「ん?何?」

「響也が『響の楽器どこだっけ』と奏が『伝説の肉じゃがのレシピ』だってさ」

「そう。じゃあ、今から教えるから奏明覚えてね」

「おうよ」

 それから俺はたわいも無い話をして、時間を潰した。


 そして、夜になってから病室を出るとほぼ同時に隣の部屋から少年が出てきた。

「・・・・・・」

 顔には出さないようにしたが、俺は思う。


 何だコイツ。

 髪の毛は金髪、眼鏡を掛けている。ファッション云々以前の問題で、ジャージを着ているのにも拘らず、それすらも似合ってしまうほどの美男子だ。

 っていうかあのジャージ・・・・・・うちの学校の指定体操服じゃん・・・・・・。

 何だコイツ・・・・・・マジで。おい。

「・・・・・・何?」

「いや・・・・・・」

「そ」

 そう言って、少年は過ぎ去っていった。

 誰だろう・・・・・・と思って、隣の病室のプレートを見る。

「音河響花・・・・・・?」

 って確か響の弟子だったような・・・・・・。

 しかし、他の情報を思い出せない。弟子って何だ。弟子って。

 と思ってからもう1度少年の方を見る。

「アイツはつまり音河ってことか・・・・・・?」

 音河・・・・・・?そんな奴いたかな・・・・・・?

 まあいいや。


 とそんな風に思って俺もそのまま家へと帰ることにした。


 思えばこれが俺と隼人の最初の出会いだったのだ。


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