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第二十五章 遅れてきた違和感

違和感は、

いつも遅れてやってくる。


忙しさに紛れ、

成果に隠れ、

「うまくいっている」という言葉の裏に潜む。


仕事は、回っていた。


運搬は滞らず、

製造は安定し、

商いも途切れない。


数字だけを見れば、

順調だった。


「……問題、

 ないですね」


エリザが、

帳面を閉じて言う。


「はい」


レオンも、

同じ数字を見ている。


だが――

胸の奥に、

小さな引っかかりがあった。


「……人が」


レオンは、

ぽつりと呟く。


「増えています」


「はい」


「働く人も、

 働かない人も」


エリザは、

一瞬考えてから答える。


「街に、

 人が集まってきていますね」


「はい」


それ自体は、

悪いことではない。


仕事がある街に、

人が寄るのは自然だ。


だが。


「……入口を」


レオンは、

続ける。


「用意していない人が、

 増えています」


エリザは、

言葉を失った。


「……それって」


「想定外です」


レオンは、

はっきり言った。


倉庫の外。


新しい顔が、

増えている。


仕事を探す目。

期待と、

焦り。


「……お願いします」


「何でもします」


その言葉は、

重い。


エリザは、

胸が締めつけられた。


「……私たち」


「呼び寄せて、

 しまいましたか」


「はい」


レオンは、

否定しない。


「ですが、

 止めるわけには

 いきません」


止めれば、

崩れる。


「……じゃあ」


エリザは、

必死に考える。


「どうすれば……」


レオンは、

すぐには答えなかった。


紙に、

線を引く。


点と点を、

繋ぐ。


「……流れが、

 必要です」


「滞留しない、

 流れです」


それは、

個人の問題ではない。


街の、

構造だった。


「……仕事は」


レオンは、

ゆっくり言う。


「街の中だけで

 完結していません」


「外と、

 繋がっています」


「ですが」


「その窓口が、

 ありません」


エリザは、

はっとする。


「……だから」


「ここに、

 人が溜まる」


「はい」


「行き先が、

 見えないからです」


仕事は、

作れる。


だが――

流通と、

契約がなければ、

街の外へは出られない。


「……レオン」


エリザの声は、

震えていた。


「また、

 大きな話に

 なってきました」


「はい」


レオンは、

静かに頷く。


「ですが」


「必要な段階です」


夜。


倉庫の灯りが、

一つずつ消えていく。


外には、

まだ人がいる。


期待を、

抱いたまま。


レオンは、

その様子を見て思う。


これは、

善意の結果だ。


だが――

善意だけでは、

回らない。


「……次は」


レオンは、

低く呟いた。


「街の外と、

 繋がる仕組みです」


遅れてきた違和感。


それは、

次の一手を

求める合図だった。

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