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第二十四章 矢面に立つという役目

変化が広がると、

必ず視線が集まる。


それは、

歓迎だけではない。


最初に聞こえてきたのは、

噂だった。


「……レオンが、

 仕切ってるらしい」


「仕事を、

 選ばせてるって」


「うまくいかなかった奴は、

 切られるそうだ」


言葉は、

少しずつ歪む。


エリザは、

その噂を耳にしていた。


「……酷いですね」


「そんなこと、

 していないのに」


「はい」


レオンは、

否定も弁明もしない。


「広がるときは、

 形が崩れます」


それを、

止めるつもりはなかった。


やがて、

直接来る者が現れた。


「……あんたが、

 レオンか」


中年の男。


顔には、

疲れがにじんでいる。


「うちの息子が、

 運搬で失敗した」


「金を、

 失った」


「責任を、

 取れ」


声は、

荒れていた。


エリザが、

一歩前に出ようとする。


だが――

レオンが、

静かに手を上げた。


「説明は、

 私がします」


それだけで、

十分だった。


「条件は、

 伝えました」


「危険も、

 収入の上下も」


「選んだのは、

 ご本人です」


冷たい言葉だ。


だが――

嘘はない。


「……それでも」


男は、

唇を噛む。


「親として、

 納得できない」


「はい」


レオンは、

目を逸らさない。


「納得しなくて

 構いません」


「ですが」


「嘘をつくことは、

 できません」


男は、

何も言えなくなった。


怒りは、

ぶつける先を失うと、

形を変える。


悔しさに。


「……戻る場所は、

 あります」


レオンは、

最後に言った。


「次は、

 製造でも、

 別の仕事でも」


「……金は?」


「最初の分は、

 返します」


それは、

契約通りだった。


その夜。


エリザは、

強く拳を握っていた。


「……どうして」


「全部、

 背負うんですか」


「怒られる役も」


「憎まれる役も」


レオンは、

少し考えてから答える。


「仕組みは、

 感情を持ちません」


「だから」


「誰かが、

 感情を受け取る

 必要があります」


「……それが、

 あなたですか」


「はい」


「私で、

 十分です」


それ以上、

適任はいなかった。


噂は、

さらに広がった。


「冷たい奴だ」

「血も涙もない」


レオンは、

何も言わない。


弁解もしない。


だが――

倉庫の中は、

静かだった。


仕事は、

止まらない。


エリザは、

その背中を見続けていた。


この人は、

皆に好かれたいわけではない。


ただ――

壊れない形を

 残したいだけだ。


矢面に立つという役目。


それは、

誰もやりたがらない。


だからこそ、

レオンが引き受けた。

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