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第二十二章 羨まないための仕組み

羨ましさは、

感情だ。


抑えろと言って、

抑えられるものではない。


レオンは、

それをよく知っていた。


「……不満は」


エリザが、

帳面を閉じながら言う。


「減ってはいません」


「はい」


「形を、

 変えただけです」


「はい」


怒りは、

声になる。


羨ましさは、

沈黙になる。


だから、

厄介だった。


「羨まないためには」


レオンは、

静かに言う。


「努力を、

 美徳にしてはいけません」


エリザは、

驚いた顔をする。


「……え?」


「努力は、

 人によって

 条件が違います」


「比較した瞬間、

 歪みます」


倉庫の壁に、

新しい紙が貼られた。


仕事の一覧。


だが、

今までと違う。


「……これは」


「全部、

 別の入口です」


運搬。

製造。

飲食。

商い。


「やりたい者が、

 選べる」


「選ばなかった者を、

 責めない」


それが、

前提だった。


「……でも」


誰かが、

不安そうに言う。


「失敗したら……」


「失敗します」


レオンは、

即答した。


「ですが」


「戻れる道を、

 用意します」


それは、

この街には

なかった発想だった。


条件も、

全て書いた。


危険。

収入の上下。

責任。


「……正直ですね」


「はい」


「隠すと、

 怒りになります」


次に決めたのは、

代表を置かないことだった。


「……え?」


エリザが、

思わず声を出す。


「あなたが、

 やらないんですか?」


「はい」


「私は、

 矢面に立つだけです」


選ぶのは、

働く者たち。


期間も、

決める。


固定しない。


「……そんなの」


「混乱しませんか?」


「します」


レオンは、

否定しない。


「ですが」


「慣れます」


「慣れた後に、

 残るのが

 仕組みです」


最後に。


レオンは、

街中に

紙を配った。


誰でも、

読めるように。


文字は、

少なく。


図を、

多く。


「……これ」


「俺でも、

 分かるぞ」


「やってみるか……」


声が、

少しずつ増える。


エリザは、

その様子を見ていた。


「……すごいですね」


「皆」


「羨むより、

 考えています」


「はい」


レオンは、

小さく息を吐いた。


「考える時間を

 与えただけです」


全てが、

上手くいくわけではない。


失敗も、

必ず出る。


だが――

「選べなかった」という

怒りは、消える。


羨まないための仕組み。


それは、

人を救うものではない。


人が、

 自分で立つための

 土台だった。

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