第21話:最終区画①
迷宮の最深部に到達した三人は、静寂に包まれた広間へと足を踏み入れた。
最終区画へつながる扉の前には浮かぶように文字が刻まれている。
『心を重ねし者のみ、道は開かれる』
「また暗号かよ……あきたっつーの」
「でも、先に進むしかないみたいですね」
ライカは面倒くさそうに頭をぼりぼりとかき、「しょうがねぇなー」と一歩進む。
「ライカさん!危ないです!!」
「え…??」
扉を開けようとしたライカの足元は歪み、ライカは大きく開いた暗い闇の中に飲み込まれていった。
「ライカさん!!」
ライカの手を取ろうと、アンジーは何も考えず闇の中に自分から飛び込んでいった。
「アンジー!!」
空間が、ねじれた。
3人は暗闇の中に飲み込まれ、姿を消す。
***
気がつくと、アンジーは一人だった。
白い霧に包まれた部屋。前は何も見えなかった。
道はなく、ゴールもない。やみくもに歩いてもどこにもたどり着きそうになかった。
ひたすら心細かった。
「ライカさん…どこですか!?……シュネ様!!!???」
アンジーは声をあげるが、声は反響もされず、ただひたすら虚空に吸い込まれる。
「そんな…」
アンジーはその場でぺたりと座り込んだ。
何もできない無力の自分…。
ライカだったら?シュネだったら?
きっとこの状況を打破できる術を知っていただろう。
すると…聞き覚えのある声が響き渡る。
「アンジーか?」
「ライカさんですか!!ここです!!ここにいます!」
ライカの声を聞いたアンジーはどこからともなく聞こえてくる彼女の声に向かって走り出す。
うれしい。ようやく会えた。
一瞬だが、アンジーの前に黒い影が見えた気がした。
「いや、くるな」
だが、ライカの声は急に低くなる。その声には呆れと怒りが含まれていた。
「前々から思ってたんだけど…うざいんだよ、記憶喪失の役立たず。足手まといって、気づいてんだろ?」
「え?」
「お前は良いよな。自分がエルフって魔法律の連中に目をつけられても大事に保護されるんだろ?あたしは違う。お前とは違う」
「ライカ…さん?」
「お前と仲良しごっことか反吐が出てたんだよ」
「そ、それは本心ですか?私はー…私は」
震える声をふり絞ってアンジーは声の主に語りかける。
「シュネの前で愛想振りまいて満足か?良かったな、守られるだけのエルフちゃん」
「……違う。私は……」
アンジーは黒い影の前でぺたりと座り込み、「違うんです…違うんです」と何度も呟いた。




