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第18話: シュネ様のことは…その、お慕いしております(本人は天然)

静かな中庭に、ぱちんと魔力のはじける音が響く。

今日もいつものように、三人で魔法の練習をしていた。


「……ほら、アンタもやってみな」


ライカが軽く指を鳴らし、雷の魔法を空中に走らせる。

アンジーは小さく頷くと、掌に意識を集中させる。

何度目かの試みの末、ほんのりと風が集まり、小さな旋風が指先にまとわりついた。


「……できたました!ライカさん、見ましたか!出来ましたよ!!」


「子供みたいにはしゃぐな。すげーよ、すげー。できたじゃねーか」


「練習の成果が出て良かったな」


シュネがめずらしくやわらかな笑みを見せると、アンジーははっと頬を染めた。

その様子を横目に見ていたライカが、眉をぴくりと動かした。

妙に空気が……甘い。


「……なあ、ちょっと聞くけどさ」


ライカがふいに切り出す。


「お前らって、好き同士なわけ?」

「え?…はい、もちろんですよ」


天然極まりない笑顔で、アンジーが即答する。


「シュネ様には何度も助けていただきましたし、お慕いしております」


「そう言ってくれると嬉しいな。天使に慕われるのは光栄だ」


「…………」


ライカはお互いが思い合っているのか、何を思ってその言葉が出てきたのか分からなくなる。

ただ分かるのはお互いが恋愛音痴だということだけだった。


「……お前ら、マジかよ……」


お互いをどう思っているの第三者目線では分かるが…この二人がそれにたどり着くのはいつになるのか…。

あえてライカは口にしなかった。

巻き込まれるのはごめんだ。

くだらねー、と空を仰ぎながら、ふと一個だけ思い出したことがあった。


「あ、そうだ。アンジー、お前もう一回”属性判定魔法”やってみろよ」


「え? ……大丈夫なのでしょうか?」


不安になったアンジーはちらりとシュネを見る。


「大丈夫だろう。今度は俺もいる。それに、今の君なら何の問題もいらない。心配しなくていい」


「……はい!!やってみます」


意気込んだアンジーが魔力を込めると、今度は光の輪がゆっくりと空中に現れた。

続けて、淡い風の流れがその周囲を包むように立ち昇る。


「光と……風か」


シュネが腕を組んで静かに呟く。


「おー、お前も二属性持ちか!すげーじゃん。しかも、光とか超レア!あたしは初めて見たぜ!」


とライカが言う横で、彼の表情はわずかに曇る。


「……光魔法は扱いに注意が必要だ」


シュネの声が、少し低くなる。


「光魔法は、限られた者にしか扱えない魔法だ。王宮に仕える司祭──あるいは、長年の修練で神聖属性を極めた者のみ。民間で使えば、“不自然な力”として目をつけられる可能性がある。長寿の象徴であるエルフには使えて当然の魔法だろうが…一般人には到底たどり着けない領域だ」


「……使っちゃダメなのでしょうか?」


アンジーの声が少しだけ、不安げに震えた。


「使うなとは言わない。ただ、“今は”隠しておいた方が無難だ。光魔法は神聖の象徴だが、それゆえに王家に近しい血筋と疑われることもある」


シュネは一呼吸置き、続けて言った。


「……似たようなものに、“炎魔法”というものもある」


ライカとアンジーが目を丸くする。


「炎魔法は王族の中でも、ごく一部にしか伝えられていない秘伝魔法だ。属性として持っている者はほとんど存在しない。……もしも炎属性を持つ人間が現れたら、それだけで身元を調べられる」


「へえ……炎ねー……」


ライカが思わず呟く。

シュネは、目を細めてアンジーを見た。


「君の“光”の適性も、似たような危うさを含んでいる。魔法学校では“平等”を掲げてはいるが、それでも現実は──そう甘くはない…と思う」


「……そうしますと、私は風魔法を頑張った方がいいですね」


アンジーは小さく笑ってみせた。


「事前にリスクを回避するのは、賢明な判断だ」


シュネがうなずく。


「じゃあ、あたしも闇魔法捨てて、雷魔法でいくかな。というか…使いたくねーし」


そう宣言したライカは、ちらと指先に黒い気配を感じながら、わざと目をそらした。

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