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第14話: 記憶も魔力もないのに、魔法学校に入ることになりました!?

「――魔法律学校と、魔法学校。名前は似ていても、その中身はまるで違う」


そう切り出したシュネの声は落ち着いていた。アンジーは、思わず彼の横顔を見つめる。


「魔法律学校は……主に貴族の子息や政務官志望者が通う場所だ。

法律、規則、統制。すべて“管理”の視点で魔法を扱う。座学が中心で、実践的な訓練は皆無に等しい」


「じゃあ、実際に魔法を使う場面では……?」


「使えない。けど、論理や定義には異常に強い。理論武装には向いているが……」


と、少し口調を落とした。


「……現場を知らずして、何が法律か、と思うようになった。

本当の意味で魔法を理解するには、使い手の息遣いごと、“手触り”で知る必要がある。だから俺は――魔法学校へ編入することを”今”決めた」


アンジーの瞳に、わずかな戸惑いが浮かぶ。するとすぐに、それを察したようにシュネがにこりと笑う。


「君が俺を動かしたんだ。ありがとう、アンジー」


「えっ……?」


驚いたように声を上げるアンジー。その胸に、不安の影がよぎった。


「……でも、わたし、そんな……」


「気にするな。前々から思っていたことなんだ。気持ちに踏ん切りが出来てすがすがしいよ」


「でも、私は…素性の知れないエルフですし…」


「君がどこの誰で、どこから来たかは問題じゃない。これから“どうするか”が、すべてだ。で、君はどうしたい?もちろん、君も来るだろう?」


「シュネ…様」


シュネの優しさに甘えてしまっていいのか…

図々しい真似はできない、とアンジーは首を横に振る。


「遠慮はするな。君の気持が知りたいんだ」


シュネの氷に反射する光のような瞳にアンジーはうっとりしてしまう。

彼の優しさに…アンジーは動かされる。


「………私…魔法学校に言ってみたいです」


アンジーの意思を確認し、シュネは満足そうに口元を緩ませた。


「で、そこの盗み聞き魔。出てこいよ」


シュネはそう言って、部屋の隅へ目をやった。


「……は? いつから気づいてた」


渋々とカーテンの影から現れたのは、明らかにバツの悪そうなライカだった。


「最初からだ。足音がバカでかい」


「はあ!? この部屋の床がキシキシうるさいんだろーが!」


「ともかく――お前も、来てもらう」


「……は? なんであたしまで!」


不満を爆発させるライカに、シュネは淡々と、しかし冷静に突きつける。


「お前も“同族”だろう。墨黒の血を引く者としてな」


一瞬、ライカの顔色が変わった。


「人から恐れられ、存在ごと目を背けられる」


シュネは少し声を落として続ける。


「ならば、“どんな力であれ学問になる場所”で、自分の在り方を見つければいい。 自分が正しいと信じられる道を、自分で選べ。俺はその場を用意してやる。いつまでも俺の威光の裏に隠れられると思うなよ」


ライカは口を開けかけ、何かを言おうとしたが、飲み込んで――鼻を鳴らした。


「……ちっ、うるせぇな。わかったよ、行きゃいいんだろ。どうせお前とアンジーがいなくなりゃ、あたしも立場がなくなる」


アンジーがはっとライカを見る。けれどその背中は、どこか強がって見えた。


「入学は来年の5月。残り半年、地獄を見る覚悟をしろ」


そう言って、シュネはどさどさと分厚い資料の束を机に置いた。


「掃除の合間に読め。料理の待ち時間に覚えろ。口を開く前に、ページを開け。お前たちの未来のためだ」


唖然とする二人を前に、シュネは小さく笑った。


「俺も“同級生”になるのを楽しみにしている」

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