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こんな世界

犯罪、病気、災害。絶望に染まる世界でだた1人歩き続けるとある少女の話。

差別、迫害、虐殺、テロ。これらの人的要因と、大規模自然災害、伝染病、放射線などの自然要因が大きく重なるとどうなるのか。

その結果がこの世界だろう。

今生きているこの世界。ほとんどの人間がこう思っている。

『どうしようもない、絶望の世界』と。


聖暦3089年、ここから崩壊が始まった。これまで世界中の工場で出ていた排気ガスが環境に悪影響を及ぼし、世界中で大規模な自然災害が多発した。これだけで機能が麻痺した国もあるくらいな大規模なものだった。それと同時に流行したのが、とある伝染病。その伝染病は感染すると、感染したところから段々と肌が黒くなっていき、死んでいく。現在まで治療薬は確立されておらず、致死率は100%である。そしてそうなると起こるのが、差別や迫害である。感染したかいないかで、差別され、感染者とわかれば事実上の人権がなくなり、迫害される。ときには世界の救世主と名乗る団体が感染者を虐殺した事件も起きている。そうして、国の機能が麻痺し、テロや犯罪が多発。次々に街が機能しなくなっていった。

このようにして、聖暦3098年になるころには一部の国を除いて、ほとんどの国の政府は実質的に機能せず、警察や司法も意味をなさなくなった。


そんな中私は、とある目的のために世界中を旅している。この目的というのも正直、絶望的なものだ。でも私はこの目的が叶うまで、旅をする。


て、ことで今私はとある国の街を訪れている。と言っても観光するわけでもないし、滞在する気もない。

今目指しているのはここから一番近い駅。私の旅は、駅から鉄道に乗って好きなタイミングの駅で降り、降りた駅から一番近い駅まで歩いて、また鉄道に乗るという繰り返し。

鉄道はこの世界で唯一の長距離移動手段。なので鉄道関連は整備が進んでいる。

そして今は次の駅まで歩いている途中。この街には大きな駅があるみたいだから、そこを目指している。


今この世界には警察は実質存在しない。護身具や武器の携帯を政府や国際機関が推奨しているほど外は危険な状態。

私はそれに従って、刀と脇差を携帯している。もちろん、許可をもらっているから合法だ。まぁ、今この世界に合法もクソもないけど。


交差点のど真ん中で包丁を持って人を刺す人もいるし、白昼堂々集団で強盗する人たちもいる。そんな環境の中生き残るには武器が必要だし、実力も必要なのだ。


今、こうしてただただ歩いているだけでも少し血の匂いがしたり、悲鳴が聞こえてきたり。

でも私はそんな世界でも、旅をする。あの人のため。


数時間歩いて、駅についた。噂通りここの駅はターミナル駅で規模が大きい。

路線も多いし、人も多い。


私の乗る鉄道は、3番線の列車で次は30分後と電光掲示板に書かれてあった。


改札を通るため、改札前の駅員にとある物を見せた。


「すみません。これで通していただけますよね?」


見せたのは【旅許可証】。これは正式に旅をするための実力、行動力などが認められ、出身国家から発行されるもので、国から旅を許可されている証拠。


「すみません、お客様。旅人検定書も見せていただいても?」


【旅人検定】これは旅をするのに必要な実力、判断力、行動力を確かめる検定。これは4級~1級まである。ちなみに私は1級。

これは階級によって移動に使う鉄道などの料金、そして宿泊施設の料金などが割引になる。

4級なら上記の料金が25%割。3級なら50%割。2級なら75%割。そして、私みたいな1級は全部無料。


「あ、すみません。はい。どうぞ」


旅人検定書を出し、1級であることを確認した駅員は快く改札を通してくれた。


このように旅人は一種の職業のようなものである。ただ、旅人は死亡率が格段に高い。

旅人になって1年以内に死亡する確率は全体の実に60%を優に超える。


私は今旅人になって、3年。14歳のときに検定を終わらせ、15歳で許可書をもらって旅が始まった。

今は18歳。


そんなことを考えている間にホームだ。まだ列車が来るまで時間がある。ホームにある椅子に座ってゆっくりと待とう。


この列車に乗ってどこまで行こう。どこに行ったら会えるんだろう。

旅の目的はだた一つだけ。あの人にさえ、あの人にさえ会えれば、、、、終われるのにな。人生。


「はぁ…」


上を向き、ため息をつく。ほんと、どこ行っちゃったんだか。


そんな昔のことを思い返していると、突然後ろの方から悲鳴が聞こえてきた。


悲鳴が聞こえた方を見ると、声の主は線路を挟んだ5番線ホームに立っていた。

口を手で抑え、震えている。

なにがあったのか、視線を少し落とし、線路を見る。


案の定、線路は血まみれ。列車のフロントガラスはヒビが入り、少し血も付いている。


どうやら飛び込み自殺のようだ。


でも周りの人は、特に駅員はさほど驚いてはいない。

そう、こういうのは日常茶飯事だから。

日常的なことだから全然驚かない。

『死』が身近すぎて、感覚がおかしくなっているのだ。


『まもなく、3番線に列車が参ります。お気をつけください』


目的の列車が来た。列車は8両編成。今回待っていたところは5両目だったみたい。私はそのまま5両目に乗り込む。


この列車は特急。1両につき、真ん中の通り道を挟んで左右に長椅子のような席が10列ある。


私は後ろから3列目の左に腰掛けた。周りはあまり混んでいない。言うなら、私以外いるかわからないくらい静かだ。

携帯している刀を足の太ももの上に置き、外を眺める。


必死に働いている駅員もいれば、生きることに意味を見出だせない人、大切な人を亡くしたであろう絶望の顔をした人。いろんな人がいる。


でも、一つだけ共通していることがある。


そう、明るく元気に過ごしている人は誰一人としていない。


こんな世界になってしまったんだ。




数分した頃、列車はゆっくりと走り出した。


列車の中ですることは、外をぼーっと眺めるか、本を読むか。

私は本を読むことを選び、栞が挟んであるページを開いて読み始める。

この本は旅に出てから何周もしている。飽きるのでは?と思うかもしれないが、あえて理解するのが難しいものを持ってきているため、案外飽きないものだ。


ところで、列車の中ではこんなにゆったりしていていいのか?そう思う人もいるだろう。

でも、列車はこの世界で一番安全な乗り物かつ移動手段である。


車は簡単に襲われてしまうし、飛行機なんてもう何年も飛んでいない。列車は高速で移動するので外からの攻撃を受けにくい。しかも頑丈にできているので簡単には壊れない。

なので、列車が攻撃されるときは大体は内部から。


それから何駅も過ぎて、それでも私は列車に揺られている。なんだかまだ降りるには早い気がして。

何駅も通り過ぎていった。


そろそろ降りる駅を決めようとしたとき、あることが起きた。


さっきも言った通り、列車はこの世界において唯一安全な移動手段。そう、内部からの攻撃以外は。


パリン、という甲高い音と共に、女性の悲鳴と、男の叫び声が聞こえてきた。


まぁ、列車強盗と言ったところか。


私には関係ない。


そう思い、気にせず本を呼んでいると、私の乗っている5両目にその強盗が入ってきた。


「おい!強盗だぁ!動くんじゃねぇ!」


強盗が叫ぶが、その言葉に私は一切の興味を示さない。


「おい、兄貴。ここの号車だれもいないんじゃないっすか?」


「可能性あるな、念の為ちゃんと確認しろ」


「おいっす」


コト、コト、コト、


ゆっくりと歩いて一列一列ゆっくりと確認する強盗。

普通だったら心臓がはち切れるくらい緊張する場面だろう。

でもそんなことはない。

なんも怖くないさ。

なんでかって?そりゃあ、ただの強盗だからだよ。


そして、私を見つけたみたいだ。


「あ?おい!兄貴、いましたぜ!」


そう言ったあと、その兄貴とやらが来て、私に近づいてきた。

「おい、お前。この列車は俺達が占拠した。大人しく従え」


「…占拠してどうするの?列車は線路の通りにしか動かない。そんな列車を占拠してどうするの?」


私は脅してくる強盗に淡々と答えた。


「そりゃあ、金を根こそぎもらう為さ。列車を占拠すれば大金と引き換えにできるからな。お前には大人しく従ってもらおう」


「従え従え言う前に何してほしいか言ったら?」


恐れることなく淡々と話す私に強盗達は少し顔を引きつっていた。


「じゃあ、武器をよこせ。反抗されたら困るからな。その太ももの上にある刀を没収する」


強盗のリーダーが私の太ももの上を指差す。


「私に危害を加えない限り私から攻撃することはしないからさ、持ってちゃダメ?これ、私にとって大切なものなんだ」


「ダメだ」


「ちなみに、私にそうやって無理やり武器を取ろうとするのも危害を加えるに入るけど、どうする?」


「あ?関係ねぇよ。早くよこせ。そのあとは、そうだな、お前の体を…」


そう言った瞬間、私はコイツらはダメだと察した。

私は足に置いてあった刀に手をかけ、強盗のリーダーが十分に近づいたところで刀を抜いた。


抜かれた刀は強盗リーダーの右脇腹から左肩にかけてを切り裂いていった。

私の嫌いな感覚が手に伝わると共に強盗リーダーの体から血が吹き出た。

幸いにも私に血はかからなかった。

斬られた強盗リーダーはそのまま後ろに倒れ、絶命した。

刀を一振りして、付いた血を払う。そのまま刀を他の強盗たちに向けた。


「で、どうする?」


そう一言。強盗たちはモゴモゴとなにかを言いながらビビっていた。


「っ、!この野郎!!よくも兄貴を!!!」


すると、1人が怒ったのか、鉄パイプを持って私に向かってきた。

それは怒りにすべて身を任せた安易な攻撃であり、それを対処するのはそう難しいことではない。


「よくそんな武器で強盗なんてしようと思ったね」


鉄パイプを見てそう思った私はその気持ちをそのまま口に出した。

そして、持っている鉄パイプに向けて刀を一振り。


金属と金属がぶつかる音がしたあと、鉄パイプは真っ二つに割れた。


「ひっ…!」


強盗は驚いたのか、腰を抜かして尻もちをつきながら、後ずさった。


「まだやる?」


首を傾げ、不思議そうに私が聞くと、


「な、なんだこの化け物!に、逃げるぞ!」


そう言って三人は走って違う号車に逃げていった。


「…根っからの意気地なしかよ。強盗なんてすんな」


全く、、、はぁ。


「あ、てか、ちょっと!死体(これ)、どうにかしてよぉ」


そんな言葉も強盗には届かず、死体のそばで過ごすほかなくなった。


鼻を刺激する独特な匂い。思わず手を鼻にやる。


「っ……血なまぐさい、、、、、」


窓の外を見ながら呟く。


「はぁ、、、次で降りよ、」


次の駅まで20分。死体と共に列車に揺られる。





『次は、リボリナ街。リボリナ街。お出口は左側です」


アナウンスが鳴り、席を立つ。死体をキレイに避け、連結部分近くのドアに向かう。


先ほどの強盗はさっき信号機の故障で列車が停車した隙に列車を降りて逃げたらしい。


ドアの前に立つ。段々と列車の速度が落ちていき、完全に止まる。

数秒もすれば、ドアが開き、一歩踏み出せば外に出る。


先程まで血なまぐさかった空気とは幾分もマシな空気を肺いっぱいに吸い込む。

ふっ、と軽く息を吐き、周りを見渡す。目的は駅員。


えーっと、駅員は、、、あ、いた。


駅員を見つけ、そちらに向かって歩く。


「あの、すみません」


駅員の前まで行って、話しかける。


「はい、どうされましたか?」


「この列車の5号車、後ろから3列目に死体があります。処理をお願いします」


「え、あ、、はい。、、えっと、状況は?」


「死んでいるのは強盗ですよ」


混乱していた駅員もその一言で察したのか、一礼をして列車の車掌にこのことを伝えに行った。


これで私の仕事は終わり。軽く伸びをして、気持ちを切り替える。


よし。


改札に向かって歩こうとしたとき、後ろから声がした。


「あのっ!」


後ろを振り向くと、私と同じくらいか、少し下くらいの年齢の女の子が立っていた。


「さっき、強盗をやっつけた人ですよね?」


「え、あぁ、うん」


彼女の問いに少し戸惑いながらも答える。


「そのっ、ありがとうございます!私、おばあちゃんと一緒に乗ってて、でも怖くて何もできなくて」


その答えがなんだか純粋でかわいかった。


「君、この世界はこうなってしまった。慣れろとは言わないけど、おばあちゃんをちゃんと守ってあげるんだよ」


「…っ!はい!」


その言葉が刺さったのか、手を胸の前で掴み、元気よく返事した。


「じゃあね、気をつけてね」


「あのっ!」


立ち去ろうと思ったら、また呼び止められた。

今度はなんだろうと思いながら振り向く。


「えっと、その、名前とか教えてくれませんか?」


「あ、私?」


「はいっ」


私はふふっ、と少し笑った。


「私の名前は、白雪紗霧(しらゆきさぎり)。ただの旅人だよ」



この先、白雪紗霧が遭遇する出来事はなにがあるだろうか。そして、紗霧の想うあの人とは?

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