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裏ボスだけど、悪役令嬢を救いたい(改稿)  作者: あたおかA級戦犯
追放されて、本当の力を得るまで
5/6

05. 誰もが自分の役に縛られてる

 昔話をしよう。

 それはうんっと昔のそのまた昔、世界が赤と青の国に分かれて争っていた時代さ。


 何方の国も恐ろしい、核と呼ばれる魔道具を持っていた。

 それは一つ使えば、大きな都市が丸ごと吹き飛ぶ様なものだったそうだよ。

 そんな魔道具を何万個と持っていたらしい。


 何だよ。嘘くさいって?

 いやいや、ほんとなんだって。

 まあ、そんな物を持っていた訳だからさ、話の終わりは察しの通りさ。



 私が話すのはその後の話。



 文明が滅び、星が痛み、空が荒れ、大地が朽ちた頃の話だ。


 残された種は、星を元に戻すために禁忌を犯した。

 地上に神の肉体を用意し、そこに神を降ろしたんだ。


 種は神に願う。


 "我らが栄えた、あの頃まで世界を戻してくれ" ってね。


 神は星を癒す粉を作り、そして世界に吹き掛ける。


 やがて、幾万もの長い月日が流れた。神を生んだ種が、絶滅したくらいには。


 粉が星を覆い、大地を癒し終える頃に神は思ったんだ。



 "あの頃って言っても、どれがあの頃かわからないじゃん。どうしよう"



 とりあえず神は残された遺産を掘り、過去に繋がる物を集めた。それらを調べる中で、ガラクタの中にも、原子レベルで見ると情報が埋め込まれている事に気が付いたんだ。神はそれらの情報を解析するうちに見つけた。



 "ナーロッパ"



 ナーロッパ、それは激動な時代だった。

 とんでもパワーで竜巻を起こし、雨を降らせて、火がぐわんとなって、目からビームだって出せる。


 神は考えた。


 かつての種、それは曲がりなりにも神をこの世に生み出した者達。つまりは凄い者達だ。


 あの頃というのは、そんなすごい者達が神に頼るほど戻すのが難しいという事。つまりは超高難易度の世界。


 ギリギリだ。

 いっちゃう? ナーロッパ。


 そうして神は挑戦した。

 その結果、魔法を生み出し、様々な種族を生み出す事に成功したんだ。


 まじかよ、出来ちゃったよ。

 神はそうやって思っただろうね。


 やがて神の仕事が落ち着いてきた時、神は自分が作ったナーロッパを見て思うんだ。



 どこか違う。



 ナーロッパは、もっと激動な時代だったはずだ。


 冒険者は仲間を追放し、悪役令嬢は断罪され、スローライフはスローじゃない。

 それにも関わらず、神が作った世界はどうだろうか?

 これは不完全だ。

 不完全は、正さなくてはならない。

 そうして神は、役という仕組みを作ったのさ。


 君はきっと、耳を塞いで狂った様にブツブツと呟くエミリコさんでもみたのかな? そうだよね?


 それが役なんだよ。


 大気中の微小な魔道具が、彼女に語り掛けているのさ。役に沿って動けってね。

 知能を持つ生物は皆、生まれた時から影響を受け続けているから気が付かないけど。


 まあ、気が付いたとしても。大抵の人は気違いって言われて、教会行きだと思うけどさ。



 ♦♦♦♦♦♢♦♦♦♦♦



 この人は、本当によくしゃべる。まあ、作り話としては面白いかもしれない。

 ただなあ。神様って言われても...... まあ、とりあえず、役が原因だって仮定するよ? それをどうすりゃいいんだ。


「その、役? はどうすれば消す事が出来ますか?」

「それはね、神様を...... あゝ、ここから先の話はおしゃべりを越えてるね。対価を貰えないと、話せません」


 ふぁあああ! こ、こいつ! 金とんのかよ! く...... クソ。まあ、どんな情報でも......


「幾らですか?」

「じゃあ、君の髪の毛一本でどう?」


 何この人、怖わない? 髪の毛欲しいって、結構キモイぞ。ま、まあ。髪の毛位なら何も問題ないけどさ。


「分かりました。良いですよ」

「ああ良かった! ちょっと待ってね」


 師匠は外套のポケットから、ペンと紙の束を取り出す。そして何かを書き始める。

 そうして暫くすると、話を続けた。「それじゃあ、髪の毛を抜いて私にくれる?」


 髪の毛を一本抜いて、師匠に渡してやった。師匠は髪の毛を、紙の束の間に挟んで閉じる。


「えっと、君が知りたいのは役を消す方法だったね? それは神さまにお願いすれば良いよ」

「神様にお願いですか? 教会にでも行って祈れば良いんですか?」


「いやいや。祈ったって救われないよ。君は運が良いぜ? 私と契約しない? 神様と会えるよ?」


 ふぁああああ! この人宗教勧誘のひとだよおおおおお!

 変な店はいっちまったああああーーーー!


 逃げよう。


「えーごめんなさい、もう行かなきゃいけないので!」

「待って待って! ほら、地図は書いておいたから。......現在地は此処ね? ドア出て左がこっち」


 帰り際、師匠は何かを思い出した様子で手を "ポンっ" と叩く。


「あゝそうだ。明後日に鑑定の儀があるでしょ? 君とエミリコさんも鑑定を受けるよね」

「はい」


「その時、素質がわかるよね? 教会がエミリコさんの素質を何て言うか、私が当てて進ぜよう」


 師匠は腕を組んで胸を張る。ランプの精みたいな感じだ。


 ————年に一度、教会は世界各地で鑑定の儀を開く。鑑定スキルで素質を調べる為だ。素質によって人生は決まる。例えば、戦士だとか、神官、魔法使い、魔獣使い。あとは農民や商人ってのも、立派な素質だ。


 しかし稀に、何も素質が無い者がいる。そういう奴は無能と呼ばる。


 エミリコの事だ、きっと良い素質になる。魔法が全属性使えるし、賢者とかだったりするんじゃないかな。


「ずばり言うとね? 聖女 だね」


 はあ? 聖女? それはありえない。


 聖女ってのは強力な治癒魔法を持つ。例えば、失った手足すらも癒す事が出来るらしい。エミリコが治癒魔法を使う所を、一度も見たことが無い。


「まあまあ。もしも困った事があったらまた来てよ。君はきっともう一度来ることになるよ」


 まあ、もう来ないだろうな。聖女はあり得ない。......明後日が鑑定の儀だ。天才と呼ばれながらも、未だ何も魔法やスキルが使えない俺には、何の素質があるのだろうか。

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