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裏ボスだけど、悪役令嬢を救いたい(改稿)  作者: あたおかA級戦犯
追放されて、本当の力を得るまで
2/6

02. エミリコとの出会い

 数日後、セルバーティの屋敷に行った。

 到着した俺を出迎えたのは、初老の執事。


 「レイク様ですね。お待ちしておりました。エミリコお嬢様の元へご案内いたします」


 執事は丁寧に頭を下げ、屋敷の中へと導く。古びた石造りの廊下を進む間、執事はエミリコについて話し始めた。


 「お嬢様は少々気性が荒く、癇癪を起こしやすいご性格です。時折、暴力的な行動を取られることもありますが...... どうか気を悪くなさらず」


 暴力的!? ......気を悪くなさらずって言われても、怖いんだが?


 内心ビビりつつ、執事の後をついていった。

 やがて一つの部屋の前で止まると、突然扉が勢いよく開かれ、一人のメイドが泣きながら飛び出してきた。


 「執事様! お嬢様が...... また水をっ!」


 メイドは髪を濡らし、執事にすがりつく。執事は深くため息をつき、穏やかな声で尋ねた。


「なぜお嬢様は水をかけたのですか?」

「何もしていません。急にお嬢様が......」


 執事とメイドが話している間、興味本位で部屋の中を覗き込んだ。


 そこには一人の少女————エミリコが立っていた。彼女の長い黒髪は水を吸い、しっとりと艶めく。綺麗な翡翠色の瞳が印象的だ。全身びしょ濡れでありながら、その姿はどこか威厳があり、見とれてしまう。


 ......って、見ている場合じゃない。彼女の方がびしょ濡れだ。


 急いで彼女の元へ向かう。ハンカチを取り出してそっと手を伸ばした。


 「大丈夫ですか?  ハンカチ......」

 「触るな!」


 大きな声と共に、鋭い目を此方に向ける。

 顔は強張り、どこか怯えているように感じる。


 え、これ、大丈夫? 仲良くなれる? ......いやいや、自分を信じろ、レイク。友達の作り方は勉強してきた。自己紹介だって100万回は練習してきた。大丈夫だ、俺なら出来る。


 「初めまして、俺はレイク・オーグナーです。今日からあなたの従者としてお仕えすることになりました」


 彼女は俺の話をじっと聞きながらも、未だに此方を警戒するように身構えている。暫くしてから「分かった」と短く答え、手を差し出してきた。


「握手」

「え? はい」


 彼女の手をそっと取る。————その瞬間、エミリコの瞳がぱっと大きく開いた。数拍程の沈黙の後、それまでの不機嫌そうな表情が和らぎ、彼女の口元に小さな笑みが浮かぶ。


「エミリコよ。ねえ、あなた何歳」

「エミリコ様と同じ十二歳です」


 エミリコは少し考える素振りを見せた後、微笑んで言った。


「そう。様は付けなくていいわ。普通に呼んでちょうだい」


 あれ? 思ってたよりも全然気さくだぞ? "乱暴者で手がつけられない" って話はどこ行ったんだよ?


「レイク! 貴方、屋敷には来たばかり? 私が案内するわ!」


 彼女は濡れていることなんて構いもせずに、楽しそうに俺を屋敷に案内しようとしている。その無邪気さに思わず笑っちまった。多分、こいつは良い奴だ。


 濡れたままでは風邪ひくかもだし、案内の前に着替えたほうが良いよな。とりあえずハンカチ渡しておくか。


「ありがとうございます。でも、さすがにこのままだと風邪ひいちゃいますし、まずは服を着替えましょうか?」


 執事は彼女の事を暴力的だと言っていたが、あれは何だったのだろうか。

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