↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

雑記2 ピエロ or 能面、どっち?

作者: 遠部右喬
掲載日:2023/12/08

 ピエロのメイクと能面には共通点があるように思う。

 彼等の弛まぬ努力で培われた動きは、言葉を越えた美しさで、彼等の内包する世界へと見る者達を誘う。ある種完成された世界観は彼等から顔を取り払った。メイクで、面で、彼等は表情という「個性」を消し、身体の動きで物語を紡ぐ。一種独特な動きは静を引き立たせ、静もまた動へと連なり互いを引き立て合う。

 だからだろうか、ピエロは生き物というには何処か無機物めいて見え、能面は作り物と言うには生命を感じさせる。そのちぐはぐさに心が波立つのは、恐らく私だけではないだろう。その波には、美、滑稽さ、郷愁、観る者によって様々な名が付く。そして、恐怖と名付ける人間も一定数居る様だ。


 と言う訳で、身近な人間にアンケートを取ってみることにした。


「あなたはピエロと能面に共通点を感じますか?」

 この際、ピエロに限らず、クラウン全般どのメイクでも構わない。面も、小面でも翁面でも好きに想像して貰うことにする。


 A氏……「言われてみれば、似た雰囲気を感じる」

 B氏……「すごく感じる」


 成程、どうやら彼等も、ピエロと能面を同じジャンルと捉えることに異議はないようだ。更に質問を続けてみる。


「ピエロと能面に恐怖を覚えますか? また、より恐いのはどちらですか?」


 A氏……「別にどっちも怖くない」

 B氏……「どっちも同じ位怖いが? もし帰宅して部屋にそんなのが鎮座してたら、どっちだろうと多分失禁する」


 A氏も、非常に嫌な顔をしつつ答えてくれたB氏も、ご協力ありがとう。とりあえずB氏には、部屋に見知らぬものが転がっていたら、それが何であろうと失禁の前に通報するようアドバイスを送っておいた。

 しかし、二人に一人はどちらにも恐怖を覚えるということか。思ったより多いぞ。アンケートの対象人数が少ないことは置いておこう。


 さて、世界中のあちこちの文化で、古くから「面」は存在する。「入れ墨」や「化粧」も同様、それらは皆同じ根から発するもので、呪術であり、時には社会階級の目印として、一目で同じ集団に属することを認識出来る便利なツールだった筈だ。それはやがて芸能、芸術へと昇華し、現代まで残り続けた。

 何故、残り続けたのだろう。その理由こそが、B氏の答えに表れているように思える。化粧も面も、恐怖と紐づくことがあるからではないだろうか。


 その昔、部族氏族は今よりも遥かに拘束力を持っていた。知恵と結束が無ければ、人間と言う脆弱な肉体は大自然を生き残れなかった。そして脅威は、大自然だけではなく、時には他の部族も含んでいた。

 人間が増えれば増える程、自分の所属する以外の集団は脅威となった。いざという時、同胞を一目で見分けられる目印があればかなり便利だっただろう。人類最初のメイクは、身につけた模様で身内かどうかを確認しやすくする目的があったのではないかと思う。

 少なくともメイクに関しては、今でもその名残はあるだろう。仲の良い女子同士のメイクや服装は、同系統に纏まっている様に見える。仮に、傍から見て奇抜なメイクだったとしても、仲良しグループの中ではそれは普通であり、安心の対象なのだ。外からやいのやいの言うのは、余計なお世話というものだろう。

 面も入れ墨も同様で、やがては儀式などにも使われるようになったが、本来は仲間や仲間内の序列を見極める為の手段だっただろう。身内以外の模様を纏っている相手や、身内であっても自分とは違う立場の模様は、脅威になったに違いない。直接的な被害だけではなく、ぼっちにならない為に、不利益を被りかねない相手を避ける為の反射反応として、それらに恐怖を感じるのは自然なことだ。恐怖は、生き抜くのに直結する感情だ。野生では、恐れるべき敵や場所を知らない個体は長生き出来ないのである。


 では、何故ピエロと能面に飛びぬけて恐怖を覚えるのか。もしかしたらそれは、日本で暮らす我々にとって、どちらもある程度馴染みがあるというだけの理由なのかもしれない。メイクや面で顔を覆い、静と動のコントラストが際立つような伝統芸能は世界中に数多ある筈で、世界を見渡せば、その国なりの面やメイクへの恐怖がきっとある。色々な国の人に確かめてみたいが、それを訊ねるだけの語学力も社交性も欠いている人間には、ハードルが高い。答えを知ることなく人生を終えそうである。


 因みに、私は某世界的ハンバーガーチェーン店の彼にやや恐怖を覚える。勿論、彼にもハンバーガーにも罪は無い。こちらの気持ちの問題に過ぎないので、店頭に鎮座する彼の立て看板等が目に入らない様、無心で手元のポテトを食べることにしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。