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第3話「男と女、密室、サキュバス。何も起きないはずがなく……」①

仕事が忙しくて更新忘れてました。すみません。

 放課後になり、生徒の数がまばらになってきた教室内で。俺の席の傍らに立ち、やたらと俺に迫る女、朝日奈夜陰が、いつものようなテンションで、突如俺に提案をしてきた。



「ねぇねぇクロくん。今日、私の家に来ない?」



 俺は夜陰の提案に対して、『何を言っているんだこいつは』と思ってしまった。


 健全な男子高校生ならば、かわいい女子からこんなことを言われようものなら、まず真っ先にいやらしいことを考える。


 多くの場合それは男子足るが故の勘違いなのだが、困ったことに、この朝日奈夜陰に関しては勘違いではない。コイツは間違いなく、俺のケツの穴を狙っている。


 あまりにもわかりやすい誘いに対して、俺は「いやいやいや」と首を勢いよく左右に振って突っ込んだ。



「お前さ、女の子の部屋に男1人で入るって、まずいだろ」


「えー、でも、この間は君の部屋で2人きりだったじゃん」


「いやアレはお前が勝手に入って来たんであって……」


「同じだよ、どっちも。あーあー、私はクロくんの部屋に入ったのに、クロくんは私の部屋に来てくれないんだもんなぁ。それってなんだか、不公平だなぁ」



 うっ……。俺は夜陰からの圧に喉元を押さえられたような気持ちになった。


 公平だの不公平だの、こう言った文言を出されると、男子としては非常に言葉が出しづらい。俺はそれでも「いや、でも、やっぱり男と女なんだしさ」と食い下がり、なんとか夜陰を遠ざけようとする。


 と、


「私の部屋、ゼノレダクロニクルの新作あるよ」


「え、マジで? 行く」



 夜陰の言葉を聞いて、俺は一瞬で食らいついてしまった。


 しまった、と後悔したのも束の間。夜陰は「やった! それじゃあ、すぐ出発しよう!」とリュックを背負い、楽しそうに飛び跳ねながら教室の出入り口へと向かった。


 やべぇ。ゲームにつられて安請け合いしてしまった。このままでは確定してしまうかもしれない、と俺は自分の軽率さを後悔し、机に手を付き項垂れる。



「早くしよ、クロくん!」



 と、俺は夜陰の明るい声を聞き、彼女の方を向いた。


 夜陰は嬉しそうに、扉の前で手を振っている。俺はその笑顔を見て、『まあ、何も起きなきゃいいか』と、ほのかに笑いながら、学生鞄を背負った。



◇ ◇ ◇ ◇



 そうして、俺は夜陰の家にまでやって来た。


 石造りの玄関口で、木製の扉をマジマジと見つめる。もうある程度見慣れた家だと言うのに、これから女子の部屋に入るのだと考えると、妙にドギマギとして気が落ち着かない。



「ようこそ、クロくん! 私の家へ!」


「いや、もう見慣れてるから……」


「えへへ~、初めての女子の家で緊張してるって顔してるよ? 隠してもバレバレだから、隠さなくていいよ♪」



 夜陰はいつも通り、俺の隣で楽しそうに笑った。クソ、俺が女子と遊んだことが無いのがそんなに嬉しいのか?


 俺は少しばかり気恥ずかしい気持ちを抱えながら、おずおずと玄関の扉に触れ、ガチャリと扉を開ける。



「お、おじゃましま~……」


「あ、クロくん、ごめん、言うの忘れてた――」



 ん? 何がだ? 俺は夜陰の方を振り向きながら首を傾げる。


 と、その瞬間、



「あなた~~~~~~!!!!!!」



 黄色い大声と共に、突如謎の物体が俺に向けてすっ飛んできた。俺は「うわあああああっ!!!」と叫び声をあげ、突然現れた地球外生命体(仮)に押し倒される。


 何か、とても柔らかい感触が顔面を覆った。よくわからないが、触れているとなぜか幸せな気分になってくる。


 い、いや。浸ってる場合じゃねぇ。俺は「ンンンンンンン!!!!」と窒息しかけながら、手足をバタバタと動かし、覆いかぶさる何某を必死に引きはがそうとする。



「あ、あら。違ったわ。ごめんなさい、ボクくん」



 体に飛びついてきた何某は、そう言うとゆっくりと立ち上がり、俺の体から退いた。


 俺はゲホゲホと咳き込みながら立ち上がり、肩を落として目の前の存在を見る。


 そこには、長く艶やかな黒髪をした、とても綺麗な女性がいた。


 身長は俺よりも高いが、おそらく170は無いだろうと言う感じだった。肌は白く透き通るようで、妖艶な顔立ちに派手さのない銀縁の眼鏡を着けていて、しかし、それがむしろ、この人から奥ゆかしさのようなものを醸し出させていた。


 大人びた魅力を放ってはいるが、夜陰に似ている。俺は視線を夜陰に向けると、彼女は笑いながら、目の前の何某の紹介を始めた。



「その人は、私のお母さんだよ! ごめんね、クロくん。お母さん、お父さんが帰って来るのをいつも心待ちにしているから、誰かがドアを開けると、すっ飛んで来ちゃうの」


「そ、そう言うのはあらかじめ言っておいてくれねぇかな……」



 俺は肩を落とし、夜陰にため息を吐く。まあ、誰にでもうっかりはあるし、別にいいけど。


 ――いや。ていうか。俺は自然と、ゆっくりと、視線をある場所へと移していた。



 ――いや、でっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!



 あまりにも、デカイ。夜陰のお母さんだと言うのに、それはあまりに暴力的だった。


 なんだこの乳は。俺の妹やリオナ先生もかなり大きいと思うが、これはもはやそう言うレベルじゃない。常軌どころか、宇宙の法則でさえ逸している。


 いやもう、マジで言葉じゃ表現できない。手で収まらないとかじゃない。人の頭よりもさらにふた回り、いやよん回りほどデカイ。


 一体どう生活したらこんなことになるのか。おそらく世界中の叡智たちが議論を重ねても、答えは出ないだろう。ただ一つ言えることは、これがあれば人を殺せると言うことだ。とりわけオス共は。


 俺は核兵器級のとんでもおっぱいに視線が釘付けになった。と、傍らの夜陰が、ドスリと俺の脇腹に貫手を放ってきた。



「ぐはぁ! ごめんなさい!」


「クロくん。クロくんも、やっぱり大きい方がいいの?」


「い、いやそう言うわけじゃ! あ、ああ、悪い夜陰、傷付ける意図はなかったんだ! いやでも、これは……これは見るだろ、どう考えても!」



 俺はぎゃんと夜陰に叫んだ。頼む、理解してくれ。これはスケベ男のみみっちい言い訳とかじゃない。ていうか、ここまでデカいと、女子も見るだろ。反射的に。


 俺が顔を赤くすると、夜陰のお母さんはくすくすと笑い、「あらあら。仕方がないわ。男の子だもん」と俺をフォローしてくれた。ありがたいが、なんか違う気がする。



「あら? そう言えば、あなた、クロくんじゃない?」


「え? あ、は、はい。あれ? 俺、会ったこと……」



 俺が首を傾げると、途端、夜陰のお母さんは、「あら~!」と喜びながら、突然俺に抱き着いてきた。



「あらあらあらあらあら~! 久しぶりじゃなーい! 懐かしいわ! へ~、大きくなっちゃって! まだ小さいけど!」


「う、うわあ! 小さいって余計っスよ! ていうか、胸! やめて、死ぬ!」


「あら、ごめんなさい」



 夜陰のお母さんはそう言って俺から離れてくれた。


 あ、あぶねぇ。あのままだとたぶん鼻血を出して死んでた。俺は歴史の教科書に残るような恥をさらさずに済んだことにほっと胸を撫でおろした。



「て、ていうか、俺のこと、知ってるんですか?」


「ええ、とても。私ね、あなたと双子の妹さんがまだ赤ちゃんだった頃に、お母さんと一緒によく面倒見てたのよ。いきなり双子だったからねぇ、一人じゃ大変だったと思うわ。あの頃はあなたのお父さんも忙しくて、なかなか子育てに参加できなかったみたいだし」


「へ、へぇ。……え、じゃあ、俺と夜陰って、」


「赤ん坊の頃からの付き合いね。まあ、4歳の頃に私たちが引っ越しちゃったから、覚えていないかもしれないけど」


「へ、へぇ……」



 俺は夜陰のお母さんの言葉に頷いた。なんと言うか、そんなに小さい頃から夜陰と一緒だったって聞くと、なんかすごく照れるな。


 俺がそんなことを思っていると、夜陰のお母さんは、「そう言えば」と言って、俺に話を振って来た。



「ねえ、妹ちゃんの方は元気にしてる?」


「ああ。シロなら今、たぶん部屋でゲームしてますよ」


「あら、元気そうでよかったわ」



 夜陰のお母さんがくすくすと笑う。と、隣の夜陰が、俺の脇腹をちょんちょんと指で突いてきた。



「クロくん。そろそろ私にも構って」


「あ……ああ、悪い。すみません、今日夜陰と遊ぶ予定で。部屋、上がらせてもらいます」


「まあ~♡ わかる、わかるわ。これは、エッチな展開の導入ね!」


「んなことしませんから! ていうか、親なら止めましょうよ!」



 何かを期待し目にハートを浮かべる夜陰のお母さんに突っ込んで、俺と夜陰は家にあがる。


 その後、俺たちは、二階にある夜陰の部屋へと向かった。

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