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第1話「転校してきたサキュバスにけつなあなを狙われている件」③

 サキュバス。曰く、人間の精力を糧として生きる、異世界とやらに存在する魔物の一種らしい。


 魔物の中でも特に知性がある存在を魔族と言い、夜陰はつまり、魔族でサキュバスで、何よりも、異世界人と言う奴らしい。


 リビングで机に座り、母ちゃんと俺と夜陰が面を合わせる中。俺は2人の説明を聞き、2度、3度ほど頷いてから言った。



「ありえねぇよ! なんだよ異世界って! なろう小説の読みすぎだろ!」


「クロくん。現実を認められないのはどうかと思うよ?」


「非現実的だから認められねぇんだよ!」



 俺は夜陰の言葉に頭を抱えた。と、隣の母ちゃんが、「まあまあ」と俺の肩に触れて優しくなだめる。



「信じられないのも無理はないさ。私だって、ずっと正体を隠してたんだしねぇ」


「しょ、正体って……じゃあ、母ちゃんも?」


「そう! 異世界人! と言うか、髪の毛金髪でしょ? 結構わかりやすかったと思うんだけどなぁ〜」



 母ちゃんがたははと笑いながら説明する。俺はますます訳が分からなくなり、顔をどんどんと歪ませ崩壊させていく。



「つまりだよ、クロくん。実は世の中には、異世界人って言う身分を偽って生活している人が結構いるんだ」



 俺は夜陰の言葉にますます納得が出来なかった。本当に心の底から何もわからなかったが、これ以上考えると脳が壊れる可能性があったので、「なるほど、そういう事か」と頷いた。



「うん。実はあの学校、結構そう言う人いるよ?」


「えっ、マジで?」


「うん。髪の色が変な子は大体そうだし、あと体育の先生いるでしょ? あの人なんかもそうだよ」


「えっ!? り、リオナ先生が!? ……ただの外国人だと思ってた……」



 俺は頭の中に先生を思い出し目を丸くする。


 正直、にわかには信じ難い。しかし、目の前にいる夜陰は、現に悪魔のような尻尾をうねうねとさせているわけで。


 ……世の中、なにが起きるかわからない物だな。俺は怒涛の展開にますます辟易としてしまった。



「……と言うか、異世界人ってことは……その、魔法とか使えたりするの?」


「うん。君の部屋の鍵を開けたのは、私の魔法だよ。あとクロくんのお母さんなんかは、見た感じ、ものすごい魔法使いだよ」


「えっ!? そ、そうなの……?」



 俺は母ちゃんの方を見る。と、母ちゃんは大層なドヤ顔で、「ふっふーん♪」と鼻息を荒くした。



「これでも昔は、勇者のパーティーの一員として、魔王討伐の旅に勤しんだものさ」


「えっ!? や、やっぱりいるんだ、魔王とかそう言うの……」


「うん。昔は、魔王と人間ってのは争い合ってたんだよね。なんか、今はその辺のわだかまりも無くなって平和なんだけど」


「へ、へぇ……」



 色々とよくわからないな。俺は母ちゃんたちの話に口角をヒクヒクとさせて、肩を落とすことしか出来なかった。



「……てことは、母ちゃんって色んな魔法使えたりするの?」


「うん。そりゃあもう、私はすごいよ。適当に叫んだ必殺技は全部魔法にできる」


「え!? なにそれ、チートじゃん! やっべえ、ちょっとやってみせてよ!」


「へっへっへっ、息子のご所望とあらば仕方ないね。よっしゃ、じゃあさっそくやってみよう! ほーれ、髪が薄くなる魔法!」



 母ちゃんがそう言った瞬間、リビングのドアが開いて、「ただいまぁ」と屈強な肉体の男が現れた。俺はすぐに「おっ、父ちゃん」と帰ってきた父親に挨拶をする。


 途端、俺の父ちゃんの髪が『ズバッ!』と言う音と共に弾け飛んだ。


 残ったのは、某国民的アニメのお父さんのような微妙な毛髪のみ。父ちゃんはどこからか取り出した手鏡を見て、口を大きく開けて絶句していた。



「ふっふっふ、これが私の魔法さ! なんでも出来る最強の力さ!」



 母ちゃんが、絶望して床に手を着き項垂れる父ちゃんをよそに笑う。俺はあまりに苦しくなって、「せめて父ちゃんを助けてあげて」と声を絞り出した。



「だいじょぶだいじょぶ。髪の毛くらい簡単に再生できるから。ほーれ☆」



 母ちゃんがそう言うと、途端に『モリっ!』と父ちゃんの頭から髪の毛が生えてきた。


 父ちゃんは頭を2度、3度ほど触ると、颯爽と母ちゃんの肩を抱き、とても綺麗な笑顔で天を仰ぎながら言った。



「やっぱ、持つべきものは最高の妻だな……」


「えへへ、愛してるよお父さん……♡」



 母ちゃんは父ちゃんに抱かれて恍惚とした表情で呟く。俺は一連の流れが理解出来ず、無言で2人を見つめることしか出来なかった。



「……と言うか、お前ら。一体何の話をしていたんだ?」



 と、父ちゃんは、男らしい屈強な腕を母ちゃんに頬ずりされながら、首を傾げて俺たちに問う。俺は背の高い男の顔を見上げながら、「なんて説明すればいいのかわかんねぇ」と頭を搔く。



「あー、それはね……」



 と、そこを母ちゃんがかくかくしかじかと説明する。話を聞いた父ちゃんは、「なるほどな」と頷き、それ以上は何も言わなかった。



「いや、納得するのかよ!?」


「男ってのは細かいことにこだわっちゃあならねぇんだ。それに、母さんがなんか人と違うのは付き合ってた頃からわかってたし、ちょいちょいひとりでに掃除機とかが動いてるのは見てたからな。貞子でも住んでるのかと思っていたが、母さんの魔法って考えりゃ辻褄は合う」


「……なんか、色々とんでもねぇこと言ってるんだけど……」


「ハッハッハ! 心霊現象程度でビビってちゃあ男とは言えねぇな!」



 俺の父ちゃんは豪快に笑いながら、俺の背中をバシバシと叩いた。俺は「うるせぇやい」と口を尖らせると、父ちゃんは俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。



「まあ、とりあえず俺は一旦シャワー浴びてくるぜ」



 父ちゃんはそう言うと、スーツを脱ぎながら脱衣所へと向かった。俺は父ちゃんの豪快さに「やっぱあの人すげぇわ」と呟いた。



「まあ、それはさておき」



 と、母ちゃんが本棚の上に置かれたYES、NOと書かれた枕を「YES」の面に変えながら話題を切り替える。



「夜陰ちゃんがまさか隣に越して来るとは思わなかったからさぁ。これからはこの子共々よろしくね、夜陰ちゃん!」


「ハイ! それはもう、私もとってもよろしくしますので!」


「えへへ。あ、あとさっきは殴ろうとしてごめんね。お詫びに息子のことは好きにしていいから」



 俺は母ちゃんの提案に「いやなんでだよ!」とつっこむ。すると母ちゃんは、「あはは、だってクロ、正直嬉しそうだったからさ」と笑った。



「そ、そんなわけ……」


「いやぁ。だって、一応私って勇者パーティーだったわけだけど。つまり、勇者としての特別な枠組みに入るんだよね。そんな私の血を、君は引いてるわけだ」


「……それがどうしたんだよ」


「勇者の力を持っている人間はね、サキュバスの催淫が効かないんだよ。つまりアレは、君が望んでやってたってことだね。知らない人とそう言う関係になるのは流石にヤバいから止めたけど、夜陰ちゃんなら別さ」



 俺は母ちゃんに言われ、顔を赤くさせプルプルと身を震わせた。隣の夜陰がニコニコと笑い、俺の顔を見つめてくる。



「クロくん。どうやら私たち、両想いみたいだね」


「はっ!?!?!? ふ、ふざけんな!!! て、て言うか、母ちゃん!!!! お、俺たちまだ高校生だぞ!!! そう言うの勧めるのは良くないって!!!!」


「私の世界じゃ、15で子供作るなんて珍しく無いんだ。だから私は君たちがそう言うことするのは健全だと思っている。文化の違いさ」


「ここは日本だぞ!!!」


「あともうひとつ言うなら、サキュバスは基本人から精を奪う生態だから、妊娠をコントロール出来るんだよ。普通ならお金を稼げない学生諸君がそう言うのをするのは良くないって話になるけど、サキュバスは例外だからね。あと病気にもならないし。そうやって、女の子との経験を積んでおいた方が、将来的にも役に立つさ。だから私は夜陰ちゃんとの付き合いは賛成だよ」



 なんてことだ、母ちゃんが全面的に不貞を肯定してしまった。俺は自分の母親の教育観念が予想以上にぶっ飛んでいる事を知ると、ダラダラと冷や汗をかく。


 と。夜陰がシュルりと俺の体に尻尾を巻き付け、そのまま俺を持ち上げとことこと歩き始めた。



「そう言うわけだから、クロくんはけつあな確定ね♡ えへへ、かわいくなっちゃうクロくん、楽しみだなぁ♡」


「や、やめろォ! せめてこう言うのはちゃんと正式に付き合ってからにしろぉ! 肉体関係から始まる恋愛なんて、俺絶対に嫌だぞ!!!」



 身をよじりながら俺は叫ぶ。その後、夜陰は俺の気持ちを理解してくれて、俺は何とか解放された。


 これが、このとんでもないサキュバス、朝日奈夜陰との関係の始まりだった。


 果たして俺は一体どうなってしまうのだろうか。俺は尻の穴をキュッと締め上げた。

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