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前編

 夜行性鳥の怪しげな鳴き声が闇を揺らす夜、自室で宝玉を通して街の人々の様子を眺めていたレフィエリシナは、乾いたノック音に引き寄せられるように扉の方へと向かった。


 覗き穴越しに見えたのは藍色の頭。

 誰であるかを察したレフィエリシナは扉を開けた。


「何ですか、このような時間に」


 扉の向こう側に立っていたのはどことなく幼さの残る顔立ちが特徴的な青年リベル。


「レフィエリシナ様、今、ちょっとだけ良いですかー?」


 リベルは無邪気な笑みを面に浮かべている。


「何なのですか、このような夜に」

「聞きたいことがあるんですよー」

「……そうですか、分かりました。ではそこでどうぞ」


 鳥の声は暗闇にまだ響いている。


「やっぱり何か隠していますよねー?」


 リベルは口角を持ち上げたままだ。けれど、開かれた二つの瞳には、笑みとは明らかに異なる種の光が宿っていた。特に生まれつきでない色の瞳は気味の悪い輝きをまとっている。


「どうして隠すんですか」

「……何の話かしら」

「そうやってごまかそうとする、でも僕には分かる、貴女はきっと重要なことを伏せている――」


 刹那、リベルは人差し指をレフィエリシナの喉もとに当てた。


「どうして隠す?」


 リベルの面から笑みが消える。

 場を彩るかのように冷たい風が一筋駆け抜けた。


「……貴方に話しても分からないことよ」


 レフィエリシナは血のような色の瞳に鋭さをまとわせて目の前の男を睨んだ。


「分からないことでも言えばいい」

「残念だけれど話す気はないわ」


 リベルは指先はまだ動かさない。

 ただ薄く唇に笑みを浮かべた。


「話せないことだから?」

「……しつこいわよ」

「でも一つは分かった――貴女が本当に隠し事をしてる、って。それは収穫だね」

「……っ」


 レフィエリシナはリベルの手首を掴もうとする。しかしリベルは読んでいた。目の前の彼女の喉もとへ向けていた素早く腕を引く。その動作によってレフィエリシナの手は空振り、リベルの手首を掴めなかった。


「二度目はない」


 扉越しに向かい合う二人。


「僕も馬鹿じゃない」

「……何が言いたいの」

「僕は戦いたいわけじゃないよ、ただ、情報はすべてはっきりさせておきたい」


 警戒心を剥き出しにするレフィエリシナとは対照的に、リベルはどこか余裕のある表情を保っていた。


「フィオーネには話したんだよね?」

「意味が分からないわ、彼女がそう言っていたのかしら」

「違うよ。でも様子がおかしかった。それに、最近フィオーネは貴女とよく一緒にいるようだったから――それってつまり、そういうことでしょ?」


 いつの間にやら鳥の声はやんでいた。

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