第18話 各々
皆さんこんばんは、星月夢夜です。
まだ初詣には行けていないのですが、
お守りがとても欲しいです。
内容が当たった試しがありませんが。
では、本編スタートです。
ソルトたちが森林内を散策していたその時、突然甲高い笛の音がどこからか鳴り響いた。それまでの和やかな雰囲気が一瞬にして消え去り、ソルト、ローズ、リリーの3人は辺りを見回しつつ警戒体制をとる。一方木の上にいるホワイトは笛の音の後、こちらに近付く複数の人の気配を察知していた。それは地上ではなく木の上で、先ほど自分が感じた気配が気のせいではなかったことを確信する。
(……いた)
周囲に散らばる気配を追っていたホワイトは前方に人影を発見する。その者は銀色の細長い何かを腰に携えるようにして持っており、地上に視線を送りながらじっとしていた。離れたところからその人物を観察していると、あることに気が付くホワイト。
(あれは……麻酔銃?)
だが同時に、ホワイトの背後には前方の人物と同じ物を持った人影が迫っていた。その者はホワイトから少し離れたところで動きを止めると、自身が持つ麻酔銃の銃口をホワイトに向けて構える。標的であるホワイトは前方を見たまま動かないため、狙いを定めるのに時間はかからず。そのまま、引き金を引いた。
(……)
発射された麻酔針はホワイトめがけて一直線に飛んでいく。そしてホワイトの首へと刺さる、その瞬間。標的となっていたホワイトの体が左へと動いた。さらに、左へ動くと同時に腰に隠し持っていたナイフを右手で取り出したホワイトは、それを後方の敵に向けて凄まじい力で投げたのだった。まるで先の麻酔針のように真っ直ぐと飛ぶナイフは、綺麗に敵の額に突き刺さる。絶命した敵は力無く地上に落下していく。
「見えてるっての」
そう小さく呟き、今度は前方の敵に狙いを定めるホワイト。その敵が地上にいるソルトたちのことを標的にしていると気付いたホワイトはまるで獲物を見つけた獣のように、圧倒的な速さでその距離を詰める。突如現れたホワイトに驚く敵に構うことなくむしろそれを好機と言わんばかりに、自身の重心を右側に寄せ体を斜めにし、少し浮き上がった左脚で敵の首の後ろを蹴って木に思い切り叩きつけた。とりあえず、と思ったホワイトだったが周囲の敵の気配が消えることはない。
(……鬱陶しいな)
今のこの状況を皆で共有すべきと考えたホワイトは軽々と木から降り、地上にいたソルトたちの目の前に着地する。
「ホワイトさん」
いきなり現れたホワイトに驚くローズ。一方のホワイトは珍しく真剣な表情を浮かべていた。
「なかなかめんどくさい状況にいるよ」
そう言って、ホワイトは腰からもう1本ナイフを取り出し構える。
「木の上に敵の気配が複数。さらに、敵は麻酔銃を所持」
「ま、麻酔銃!?」
ソルトが思わず声を上げる。
「うん。どうやらここは、もうただの森林ではなくなってしまったようだね」
ホワイトのその言葉により、状況を理解した3人は各々の武器を構えて戦闘体制をとった。だが、木の上や地上にいる敵たちは何を思ったのか彼らを襲ってくることはなく、まるで撤退するかのように森の奥へと逃げていく。
(……誘ってるのかな)
ここは向こうの領域であり、初めて訪れた自分たちには圧倒的に不利な状況である。それを考えると、今の敵の行動は罠であることは明らかであった。しかしそれでも、ここで逃すわけにはいかないとホワイトはそう考えた。
「追おう。いいかい?」
もちろん止められることも考えていたホワイトだったが、彼の側にいる3人は異論なく頷いた。
「よし、行こう」
こうしてソルト、ローズ、リリー、ホワイトの4人は自分たちに襲いかかった敵を迎撃するために、地図には載っていない森の奥地へと足を踏み入れる。そこで彼らを待ち受けるものとは。
同じ頃、地図を見ながらソルトたちよりも森林の奥の方へとやって来ていたヒビキ、アイリス、カーネ、ブラックの4人。彼らも同様に、森の中で鳴り響く甲高い笛の音を聞いたのだった。
(……?)
それはヒビキたち参加者には事前に知らされていない出来事であり、笛の音が何の目的で鳴らされたものなのか分からない。この時、アイリスは直感的に警戒すべきと判断する。
「ヒビキ様、私たちから離れないでくださいね」
そう言いながら、ヒビキが自分の後ろに隠れるように少し移動するアイリス。彼女と同じようにカーネも何かを感じとったのか、アイリスの背中側へと動き2人でヒビキを挟むような体勢をとった。アイリスとカーネに感化されたヒビキもまた、自身の気持ちを張り詰めさせる。
(なんだ、一体)
一方ヒビキたちから少し離れたところの木の上にいるブラックは、通常ではない気を察し辺りの様子を伺っていた。
(……!)
そんな時、自身の前方に人影を発見するブラック。
(やっぱり、木の上にもいたんだ)
イベントが始まってヒビキたちが森林に入った後すぐに感じた違和感。あの時から、異変は始まっていたのだ。
(ヒビキ様たちに伝えないと)
そう思ったブラックが木の下にいるヒビキたちに合図を送ろうとした、その時。
「……っ!」
突然首の辺りに小さな、だが確実に痛みを感じたブラック。そしてその直後、背後に何者かの気配を感じとる。それが自身にとって危険なものだと直感したブラックは、その正体を確かめるためすぐさま振り返る。そこには、ブラックに向けて角張った木の棒を振り下ろそうとする敵の姿があった。
「!!」
ブラックは咄嗟に左腕でそれを防ぐ。それを見た敵は体勢を立て直すためか、やや後方に身を引いた。その動きはあまりにも素早く、人間の成せる技とは思えないほどであった。
(コイツ、一体なんなんだ……!)
左腕を押さえ先ほど負った痛みに耐えながら、今自分がどうするべきかを必死に考えるブラック。
(俺がコイツを仕留められるとは限らない。それなら……)
ブラックの結論が出ると同時に、敵が彼に飛び掛かるように襲いかかる。その光景に覚悟を決めたブラックは腰に隠し持っていたナイフを鞘から引き抜くと、それをヒビキたちに見えるようにわざと木の下へと落とした。敵からの攻撃を防御することより、仲間たちに危険を伝えることを優先したブラック。直後、彼は敵の姿を確認する前に頭を殴られそのまま気を失った。
「……」
ブラックが確実に意識を失くしたことを確認した敵は、近くに待機していた仲間に合図を送った。そしてその仲間と共にブラックを担ぎ、下にいるヒビキたちに気付かれないよう森の奥へと姿を消した。
ブラックが敵に連れ去られる前地上で警戒体制をとっていたアイリスは、少し離れたところにある木の上から1本のナイフが落ちるところを目撃する。その落下地点付近に人の気配がすることとナイフがブラックの物であると見えたことから、アイリスはブラックに何か異常が起こったのではないかと考えた。
「……痛っ」
その時、不意にカーネが小さくそう呟いた。アイリスが振り返って様子をみるとカーネは自身の首元を押さえており、気になったアイリスは首だけでなく体ごと振り返りカーネの首元を確認する。
(……!)
そして確認するや否や姿勢を少し低くし、ヒビキのことをまるで彼に覆い被さるかのように抱きしめた。アイリスの突然の行動に驚くヒビキだったが、その直後。目の前で、ゆっくりとカーネが倒れる。
「!! カ……!」
「大丈夫です。おそらく、麻酔針ですので」
カーネの名前を呼ぼうとしたヒビキを制止するようにそう淡々と小さな声で話すアイリス。この場で1人冷静だった彼女は、自身が肩に背負っていた細長いトランクケースを静かに地面へと置き、同じように静かに開いて中に入っている自分の槍を取り出した。もちろん、ヒビキのことを隠しながら。
(念の為持ってきておいて良かったです)
アイリスはやや低い姿勢をとったまま槍を構えると、周りの木々の上に意識を向ける。
(……最初からいなかったのに、突然沢山現れたものですね。先ほどの笛の音と関係があるのでしょう)
木の上に複数の気配があることを、アイリスは笛の音が聞こえた時から分かっていた。そして今、それらはヒビキたちを囲むように点在している。
「……」
辺りを見回し、見えない何者たちとの睨み合いを続けるアイリス。だが、それは唐突に終わりを迎える。自分から見て4時の方角から何かが飛んでくるのを察知したアイリスは、それを槍の刃先で華麗にはじく。それはカーネの首に刺さっていた物と同じ物。つまり、麻酔針であった。その一発が合図かのように、様々な方向から次々と針が飛んでくる。
(……)
槍を少し構え直したアイリスは先ほどと同じように、槍の刃先で自分たちに向かって飛んでくる麻酔針を全てはじいてゆく。その動きには一切無駄が無く、まるで麻酔針がどこからどの順番で向かってきているのかを把握しているかのようであった。だがそんな時、突如として辺りが煙で覆われてしまう。
(……!)
突然悪くなる視界に少し驚きつつも、自分のやるべきことをは変わらないと再び槍を構え直すアイリス。先ほどまでよりもさらに辺りへの警戒を強めたアイリスは、この煙幕の中でも麻酔針が飛んできていることに気付く。最初の方こそはアイリスから少し離れたところへ飛んでいったが、それが驚くべき速さで修正され遂にアイリスにも見えるほどにまで迫っていた。
(見えないのは相手も同じ、という理屈はどうやら通じないようですね)
そう思いながら、再び見えない敵との攻防を始めるアイリス。だがやはり、視界不良のせいか思うように飛んでくる麻酔針に対応することができない。針の気配も煙の中では察知することもできず、絶望的な状況へと追い込まれていた。それでも主を守るために、アイリスは打開策を模索しながら防御を続けていく。
「……ッ!」
しかしながら、そんな彼女に運命の女神が微笑むことはなく。ここまできて、遂にアイリスにも麻酔針が刺さってしまった。その直後アイリスの視界は大きく揺れ歪み、敵前で膝をつき立てなくなってしまう。少しの間自身の槍を支えにしていたが、揺れ続ける視界の前にそれすらもできなくなっていった。
「アイリス!!」
ヒビキがアイリスの名前を叫ぶ。限界を迎えつつありそれを自覚していたアイリスだが決して自身の最優先事項を怠ることはなく、彼女はヒビキのことを外からほとんど見えなくなるように両腕で抱え込んだ。最後の力を振り絞っての行動であったがその間も敵は容赦などせず、アイリスに麻酔針を打ち込んでいく。
「……っ」
朦朧とする意識の中で、アイリスはヒビキを見る。酷く、絶望している主の顔にゆっくりと手を伸ばし触れる。
「貴方は、必ず、私が……」
そう言って、気を失ってしまうアイリス。
「アイリス! アイリス!!」
彼女の傍らで必死に名前を呼び続けるヒビキだったが、それがアイリスには届くことはなく。煙の中、ヒビキは突然背後から体を抑えられ布に染み込ませた薬を嗅がされる。それによりヒビキもまた、気を失ってしまったのだった。
再度皆さんこんばんは、星月夢夜です。
今回は会話がほとんどないナレーター回でした。
こっちでは少し珍しいかもしれません。
敵陣営が少しずつ本性を表してきましたが、
もちろんクライト家も負けてはいません。
緊急時には多少荒くなってしまうものなのです。
それでは、本日もお世話をしてくれている家族と
インスピレーション提供の友達に感謝しつつ
後書きとさせていただきます。
星月夢夜




