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1-2. 独り立ち

【美容師の娘】より 冒険者として、一歩を踏み出すイアンの物語。


【美容師の娘】

https://ncode.syosetu.com/n6487gq/


【美容師の娘シリーズ】

https://ncode.syosetu.com/s0641g/

私の名前は、デターネ=イアン=ヘドファン。

ヘドファン伯爵家の 次男として生まれ、その家を 離れた。


独立した私が、最初に 向かったのは、ギルドと呼ばれる 組合だ。

このギルド(組合)に登録しなくても、冒険者としての 活動はできるのだが、

信用度や 依頼の事務作業のことを 考えると、所属しておいた方が よい。

真っ直ぐに 窓口へと 向かった先、受付の女性は、15歳くらいに 見えた。


ギルド(組合員)登録の申請を お願いします。」


登録にも、多少の 手数料が かかる。

最初の獲得報酬で 支払っても良い ということであったが、借金は 嫌いだ。

さっさと 金貨を渡す。


実は、私は 1つのミスを (おか)していた。

所詮(しょせん)、貴族の子弟(してい)

周りから見れば、甘いお子様 なのだろう。


しかし、それは、(のち)の話だ。


ギルド(組合)登録を 済ませ、私は、ただの冒険者 イアンとなった。

名前に、デターネも、ヘドファンも 付かないということが、これほど、

心を軽くするとは 思わなかった。

その日の 昼から行われた、ギルド(組合)の つまらない11級(ルーキー)講習も、

気持ちよく受講することが できた。


さて、ギルド(組合)の階級の 説明をしよう。

実は、初心者は、11級(ルーキー)と呼ばれる。

ここから 経験を積み、ギルド(組合)に貢献することで

階級が10級、9級、8級と 上がっていく。


11級とは、なんとも 中途半端な 数字である。

これには、事実上の 級外という意味が ある。

依頼を 受注するには、階級が10級以上でないと ダメだ。

11級(ルーキー)から 10級へ上がってはじめて、冒険者として 扱われるのだ。


当然、登録したばかりの 私も、11級(ルーキー)である。

級を(クラス )上げなければならない。

このためには、ギルド(組合)の 試験依頼を クリアする 必要がある。


1.植物 採取 試験 アトロパベラドリネ 草の 根の採取

2.害獣 駆除 試験 トキニホン ウルフの 退治

3.魔物 討伐 試験 ヴォル デーモンの 退治


これらを、採取、退治し、その証明部位を 持ち帰らなければ ならない。


このような試験をすると、

乱獲で 草がなくなってしまう。ウルフが 絶滅してしまう。

と思う人も いるかもしれない。

しかし、アトロパベラドリネ草も、トキニホンウルフも、繁殖力が強く、

多少、乱獲されようとも 絶滅することはない。

また、ヴォルデーモンという ヘビの魔物については、

むしろ 絶滅してほしい とさえ 思われている。


私は、この試験を ショートカットすることに 決めていた。

正直、私の力であれば、どの試験も 苦労せず クリアできるのだが、

獲物(えもの)に 出会うまでが、とても 時間がかかるのだ。


「アトロパベラドリネ草の根 10本」

「トキニホンウルフの首」

「ヴォルデーモンの 毒腺のある 2本のキバ」


ギルド(組合) 11級(ルーキー)試験の 情報は、公開されているので、

私は、事前に これらの品を 購入しておいた。


カウンターで、証明部位を 提出する。

特に「ウルフの首」と「毒腺のキバ」のせいではあるのだが、

そのまま 自分の革袋にいれると 汚れるのと、毒が 危険である。

そこで、私が提出した時は、

販売されていた時の 麻袋に入れたままに してあった。

後で考えると、これも 良くなかったのだろう。


それは さておき、私は、ギルド(組合)登録と 10級昇進を 同日に完了した。


ちなみに、この試験依頼の 報酬は、銅貨3枚。

購入には、金貨1枚程度 かかっているので、

暴利と言っていいほどの 赤字である。


ただ、これで いつでも依頼を 受けることができる。

私は、更新された 10級ギルド(組合)カードを 受け取り、

今日1日の仕事を終えた気分で 帰路についた。


宿に 戻るには、日が高い。

当然である。まだ 夕刻だ。


「まぁ軽く食事でもするか。」


そこそこの 大きさの、そこそこ 流行っている 食堂。

ただ、料理の量が とても多かった。

味は、そこそこ であったが。


ゆっくりと 食事を済ませ、少しアルコールも 入って いい気分だ。

私は、ほろ酔いで 宿へと向かった。


ふと気づくと、後ろから 私をつけて来る者がいる。

気付かれぬよう、酔ったふりをして 道端に しゃがみこみ 気配をうかがう。

2人組。

魔法が 使える私ならば、2人くらいであれば、簡単に 相手ができる。


誘いこむため、わざと、細い路地に 入り込んだ。

判断ミスで あっただろう。


「何か 私に用かな?」

2人組が 路地に入った タイミングで、後ろを 振り返る。


「あら?気づいていたのね。

 路地に 入ったということは、(わな)に はめた つもりかしら?」

こたえる 女の声と、隣に立つ 小柄な男。


声の(ぬし)は、15歳くらいに見えた ギルド(組合)の受付の女性 であった。


ピーピュルリー

小柄な男が 笛のようなものを 吹く。

鳥の 鳴き声のような音だ。


どこに 隠れていたのか。

気配を感じることが出来なかった 10人ほどの男が 現れる。


しまった。

行き止まりのある道、細い袋小路(ふくろこうじ)に入ったのは 間違いであった。


相手の実力にもよるが、私なら、おそらく 勝つことはできる。

しかし、さすがに 10人以上を相手に 戦った場合、

数人は 殺さざるを 得ないだろう。

人は、殺したくない。

できれば、戦闘に ならないように しなければならない。


「すごい人数だな。で、用件は?」

とりあえず 時間を 稼いでみる。


しかし、無駄であろう。

あの 笛の音も 鳥のさえずりにしか 聞こえない。

誰か、人が 駆けつけることを 期待するのは、無理だろう。


「そうね。たいしたことじゃないの。

 持っている お金と 荷物を 置いていって ほしいだけよ。」


「最近の ギルド(組合)は、追剥(おいはぎ)も はじめたのか?」


どうやら 戦闘は、不可避のようだ。

いつでも 剣を抜ける 態勢を とり、魔法の 発動準備を する。


「たかだか、銅貨1枚の ギルド(組合)登録手数料を、金貨で 払おうとする。

 11級(ルーキー)試験の 証明部位を、高級店で 購入し、

 その店の 印の(しるし )入った 麻袋で 提出する。

 この 人数相手に、剣を 手に 取ろうとする。

 いったい、どこの 世間知らずの お坊ちゃま なのかしら?」


1枚の金貨と、高級店の袋が、このハエどもを 呼び寄せたのか。

なるほど、確かに 迂闊(うかつ)であった。


「戦闘中に、行動を 反省するのは、素人である。

 その思考より、瞬時に 反応できるように 準備する方が 優先される。

 反省するのは、終わった後で よい。」

とは、以前出会った冒険者に 教わった忠告だ。


世間知らずの お坊ちゃまと 言われたのも、仕方がない かもしれない。

金貨と 袋のことが 頭の中に よぎったために、敵に 先手を 取られた。


短剣が 飛んでくる。


攻撃用に 準備していた 風魔法を発動させ、勢いを殺し はじく。

細い路地であるので、対面するのは、せいぜい 2人なのだが、

後ろからの 飛び道具が 厄介(やっかい)だ。


剣で、対面する2人を あしらいつつ、

風魔法で 飛んでくる 短剣や 石を ()らす。


繰り返すうちに、対面の 1人が振り下ろした剣が、空を切る。

私の右側を 通り過ぎたその剣を ブーツで 踏みつけ、

相手の 右側面、革鎧の(かわよろい )部分を ()ぎ払った。


ドサり。

ピクリとも 動かない。

これで、一人退場。


殺しては いない。気絶 しているだけ であろう。

もちろん、鎧の(よろい )の無い部分を 狙うこともできたのだが、

それでは、致命的な 斬撃(ざんげき)に なってしまう。


動きの邪魔になる 倒れた男を、思いきり 蹴とばし、相手と 距離をとる。


この時、私は、肩で 息をしていた。

剣で 急所を刺したり、魔法で 燃やせば、恐らく 簡単に 片付くだろう。

しかし、殺さずに 対応するとなると、私の手には 余るようだ。


殺すか・・・。覚悟を 決める。

手に 魔力を込め、火球、炎の玉を 用意・・・しようとした。


「えっ・・きゃっ・・・」

バタリ。

受付の女が 倒れる音。


「手助けは、必要かな?」

どうやら 路地の入口に、少なくとも 敵ではない 誰かが、現れたようだ。


その男の声に 振り向いた敵3人を、叩き伏せる。

先ほど 用意しようとした 火球より、小さなものを 敵の 鎧に 放り込む。

たぶん 火傷で済むだろう。 後遺症は 残るだろうが。


敵ではない男は、味方のようだ。

入り口側に居た 敵が、2人 倒れている。


そうして、挟み撃ちされる 形になった

相手を 倒しきるのには、時間を 必要としなかった。


「忠告して 教えたはずだよ。

 君は、まだ未熟な子供で、用心しないと 悪い大人に 騙されると。」


立っていたのは、長剣を(さや)に 収めようとする 味方の男。


=== ==== === === ==== ===


暴れる馬から 振り落とされた際、受け止めてくれた 冒険者であった。


=== ==== === === ==== ===

仕立て直しなので、今回は連投になりました。


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