〜目覚めは突然に〜
暖めてた作品をここに記させて頂きますことをお許しください
願わくば結末まで書き終えられる事を
………鐘の音………
………自らの心臓の鼓動が聞こえるほどの静寂の中、澄み切った鐘の音が聴こえている………
(………何だこの音………)
自らの身体を動かすことも叶わず、瞼を閉じているにしては異様に暗い暗闇の中、彼は思考した。
感覚が鋭く研ぎ澄まされながらも意識はぼやけていく……
矛盾した精神をけたたましく叩いている鐘の音に、動かないはずの顔をしかめながら彼はその不思議な音色に聞き惚れていた。
(………鳴らして………鐘を………砕いて……闇を………)
女性の声。
とても遠くから聴こえるようなその声に聞き覚えなどない。
しかしとても心動かされる優しい声色だった。
(……鐘は鳴ってるぞ…?闇って…何だ……?)
彼の意識は、思考は、流れを取り戻しつつあったが、彼女の言っている内容が理解できない。
ふと気づくと先程まで響き渡っていた鐘の音は成りを潜め、女性の声はそれきり聴こえなくなった。
そして気づく、あの鐘の音こそが女性の声だったと。そんなはずは無いと彼は首を振り、先程までの短慮を正そうと…
そこで目が覚めた。
「…ーキ!リュウキ!!龍輝!!!」
意識は急速に浮上し、先ほどとは違う、女の子の声が聴こえる。
どうやら眠っていたらしい、なんだ、夢だったのか。道理で支離滅裂な夢だった。
「おはよう…何…?誰…?」
「バカなこと言わないで!!早く迎撃するよ!」
「ほぇ…?ゲーゲキ?なんそれ」
「リュウキ!?なんかおかしくなっ…」
ZGAAAAN!!!!!
腑抜けた会話を劈くように轟音が響き渡り、近くの岩盤が砕け散る。
唖然とした彼は眼前で黒煙を上げている焼けた岩がどんどん遠ざかっているのを夢うつつで見るしかできなかった。
気づけば先程の女の子に後ろ向きで小脇に抱えられ、
お尻に熱風を感じながらも小高い岩山から岩山へ飛び移って移動していた。
「アッツイ!!ケツが熱いよ!!?何!?まだ夢なの!?どういう方向性!?」
「ホント何言ってんの!?リュウキおかしいよ!!とにかく逃げよう!!ヤツが来てる!!」
人間が出すには少々早めのスピードで100m刻みで跳躍し高速移動をしている少女に小脇に抱えられている彼は、尻の熱さから推測するにこれは絶対に現実だと理解、周りを見渡した。
空は今にも雷鳴が轟きそうな黒雲、地平線の彼方まで続く岩肌、そして一際目を引いたのが、とめどなく黒煙と噴石を吐き続ける巨大な山、噴火する火山だった。
「なんじゃぁぁい!!!!」
「リュウキ!!見えたよ!!ゲートだ!!」
自らの短い人生の中で見た中で一番規模のでかい自然の怒りに戦々恐々してた彼は熱風と激しい揺れの中、女の子の進む先を見る。
そこにはシャボン玉を平たく、それでいて奥行きがあるように変形した不思議なものが浮いていた。
「ヒメキさんに連絡してもう繋がってる!!一時退却!!シンバくん達連れてきてリベンジしよう!!」
「ちょっ…ま」
有無を言わさずシャボン玉に飛び込む女の子。抱えられながらも最後まで後ろを見ていた彼は気づいた。気づいてしまった。
火山に連なる山から眼球が覗き、目があった。
巨大な怪獣…彼が火山だと思っていたのは背から黒煙を放ち大地を穿ちこちらに盲信してくる大亀であったことを…。
【チートですけどおかまいなく】
第1×11章
『主人公記憶喪失編』
これは第11章です
しかし彼の記憶は一章からのスタートです