表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/29

第18話 走馬灯と疑念とウニ

 妹に、口へと大量のウニを詰め込まれる刹那。

 俺は走馬灯のように、一つの疑念を抱いていた。


 俺の計画。それは、本当に『ゲームの勢力図を一変させうる』ものだ。経済システムを根本から覆し、新たな常識ルールを作り出してしまう、そんなとんでもない計画だ。


 しかし…それと同時に、ゲームの安定そのものを揺るがしかねない、計画でもある。もっと直接的に言うのなら『運営によるゴールドの掌握システム』に、楔を打ち込む、計画なのだ。


 運営はこれまで、商業系ギルドから利益の大半を奪い、搾取し、統治ギルドに多額の統治権購入費を支払わせるなどして、ありとあらゆる手段を講じ、ゲーム内通貨ゴールドの価値を保ってきた。インフレを防いできた。


 しかし。もし俺のこの計画が成功すれば、そう言った統制システムは、完全崩壊するだろう。特に、商業系ギルドからゴールドを奪えなくなる影響が顕著だ。


 果たして…現在これほどまでに頑強で堅牢な“ゴールドの掌握”を行っている、このゲームの運営が、こんなミスをやらかすのか? 蠱虫エキスの素材調達費と、売却価格を同じにしてしまうなんて、阿呆みたいなミスを。

 統制システムが完全崩壊しかねない致命的隙をさらすか、普通?


 それこそ運営は、俺のような“悪意ある”プレイヤーが、その支配に楔を打ち込むことがないように、注意深く警戒してるものじゃないのか? 意地でも、反乱など起こせないように、してるもんなんじゃないのか?


 そんな疑念が、俺の中でグルグルと渦巻く。


(もしかして…運営も、一枚岩ではない?)


 運営の手による、確固たる“プレイヤー支配”と“経済掌握”。それを推し進める派閥がある一方で、それに異を唱え、ゲームの行く末を、プレイヤー達に任せるべきだと、そう考えている者がいる? ソイツが、こんな“つけいる隙”を用意した?


 だとすると、恐らくソイツは、こう考えている。


(夕闇明石)のような“悪意あるプレイヤー”の発生も含めて“ゲーム”であり、その結果、世界そのものが崩壊してしまおうとも、それもまた、運命なのだ』と。


 もしそんな奴がいるのなら、実際の所ソイツは、テロリストに近い。このゲームの崩壊を招く、危険人物に他ならない。

 まあ、それを実際に実行しようとしている俺に、言えたことじゃないが。


 しかし…いるのか? そんな奴が。俺のようなヤツの発生まで見越し、隙をわざわざ用意しておいた、変わり者が? 策謀に長けた何者かが、実在しうるのか?

 もしそうならば、俺はソイツの手のひらの上で、踊らされていることになるが…


「…」


 いや、無駄だな。そんな見ず知らずの、運営の人間の事に思いを巡らせても、何かが変わるわけではない。答えがわかるわけではない。

 俺のやることが、変わることはない。 


 俺は今、俺に出来ることをする。それだけだ。

 それがたとえ、崩壊の序章だったとしても。


 なぜ、それをなすか?

 その理由は『出来るから』だけで、十分だ。

 そこに、大義名分など無くとも。


 俺はそんなことを考えながら、怒り狂う三久瑠が押し込んでくるウニの大群を、必死に飲み込んだ。死ぬかもしれん。



ブックマーク登録や評価もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ