第1話 ここが俺と妹の新たなるパラダイス!
『ようこそM&Sの世界へ』
VRゲーム用のヘッドセットを装着して、電源を入れると。俺の頭部を覆う画面上に、そんな文字が表示された。直後、目の前に見渡す限りの世界が広がる。気がつけば俺は、いつのまにやら道の真ん中に立っていた。
どこまでも続く町並み。人混み。人の声。聞くに堪えない人格否定の罵詈雑言。
どうやら無事、ゲームにログインできたようである。
周囲には中世ヨーロッパを思わせる建築が立ち並び、そしてそれらはどれもが、まるで実在しているかのような“現実味”を帯びている。
現実味。そう、それが凄まじい。VRとはとても思えない。ちょっと油断すると、ここが非現実であることをうっかり忘れてしまいそうになる程だ。
いやしかし、さすが最近のゲームはすごいな。進歩がめざましい。俺が小学生だった頃は、まだまだスマホゲームが主流だったけれど、今やこの通り、体感型のVRゲームが一般に普及していて、その臨場感も甚だしいものがある。時の流れと人類の進歩には、常々驚かされるな。
もっとも。いくら技術が進歩しても、それを使う人間の精神性は一切変わりないことは、さっきから俺の周囲を飛び交う罵倒の数々からも、明らかではあるが。ゲームが2次元から3次元へと進化したというのに、相も変わらずそれをやるプレイヤー達の方は、幼いままのようだ。
まあ、それこそが人の業である。気にしたら負けだ。
いやはや。それにしても、本当に凄いな。小学生の頃にしたスマホゲームを最後に、大学生になるまでゲームから離れていた俺からしてみると、気分はまるで、戦国時代から現代にタイムスリップした侍のようだ。
「…さて、しかし。どうしたものか」
技術の進歩に胸躍らせるのも束の間。俺はそうつぶやき、辺りを見まわす。
『マジック&ソード』通称M&S。俺が今やっているゲームはそれだ。
聞いた話だと、このゲームはMMORPGに分類されるゲームらしく、魔法使いや剣士といったキャラクターになって、時にモンスターと、時には他のプレイヤー達と、戦い殺し合う、そんなゲームらしい。野蛮な気もするが、しかし面白そうでもある。
でだ。そんなゲームを俺がこうしてやっているのには、まあ理由があって。端的に言えば誘われたのである。『一緒にやらないか?』と。
それで、どうせ大学も休みで暇だったので、こうやってゲームを始め、ログインしたわけだが…居ない。居ないのである。俺をこのゲームに誘った張本人が。俺にこの世界のセオリーを教えてくれるはずだった彼女が。居ないのだ。
うむむ、どうしたものか。正直なところ、俺はこのゲームがMMORPGであると言うこと以外、何も知らない。ログインして最初に何をすべきだとか、何処に向かうべきかだとか、そういうことは一切合切、存じ上げていない。俺を誘ってくれた”アイツ”に教えて貰えると聞いていたので、何も調べずにログインしてしまった。今思えば、少しくらい事前に調べておくべきだったと思う。後悔先に立たずである。
言わば今の俺は、荒野に一人置き去りにされた迷える子羊も同然…いや、何か違うな。井の中に叩き落とされたヒキガエル? 電気ネズミの前に引っ張り出されたコイキング? いや、どれも違うな…まあなんだ、つまりは世間知らずで無力な弱小情弱プレイヤーというわけだ。ヘルプミー。
やれやれ、本当なら、俺を誘ってくれた彼女が、弱々しきバンビの如き俺を、華麗にエスコートしてくれる手筈だったんだがな。しかし見つからないのではしょうが無い。無い物ねだりは無意味だ。
さて、そうなると。俺の方からアイツを探すか、それともアイツに頼らず、自力で何とかして、合流したときにアイツを驚かせてやるか…ううむ、どうしたものか…
「なあ。もしかしてお前、アタシの兄ちゃんか?」
「…!」
道の真ん中で考え込んでいた俺に、ふと後ろから、そんな声がかけられた。
俺は驚き、後ろを振り返る。
そこには一人の、恐らく世界で最も可愛らしい…否、“確実に”宇宙で最も可愛く可憐で美しい、超絶怒濤のスーパーハイパーウルトラミラクルエクセレント美少女が立っていた。
その少女のあまりの可愛さに、俺は頭をクラつかせて思考停止、前後不覚に陥りつつも、しかし何とか正気を保ち、少女に尋ね返す。
「…もしかしてお前、三久瑠か?」
「てことは、やっぱ兄ちゃんだな。やっと見つけたぜ」
我が妹――の操作するキャラクターはそう言うと、「たく、見つかんねえから心配してたんだぜ」とはにかんだ。
可愛い。何と可愛いのだ。その笑顔、そのえくぼ、そのつむじ&くるぶし。何もかもが愛らしく愛おしい。撫で回したい。舐め回した…げふん。いえ、なんでもありません。
しかし――おぉ、神よ。感謝します。これ程までに可愛くて、心優しい少女と――つまり妹と、俺を引き合わせてくださり。出会わせて頂きまして、言葉もありません。感謝しかありません。いずれ必ずや、このご厚意に報いて見せます。
神の創造せし最高傑作、我が妹の三久瑠は、妹との再会に胸震わせる俺を見つつ「ま、すぐに見つかって良かったぜ、兄ちゃん」と言った。
「ゲームはじめる前にうっかり、兄ちゃんが自分のキャラネームを何にすんのか、聞き忘れてただろ? んで、見つけらんなかったんだよ。ゲームの中じゃ、本名なんて見えねえしな。どこにいんのかわかんなくて、もしこのまま会えなかったらどうしようかって思ってたぜ」
「ふふん、心配するな妹よ。俺とお前は兄妹。すなわち固い絆の糸で結ばれているのだ。故に、例え名も知らず、どこに居るかわからない状況でも、必ずや互いを見つけ出す事が出来ると、相場が決まっている。二人を引き裂くのがたとえ、電脳世界のプライバシーポリシーだったとしてもな」
「…なに言ってんのか全然わかんねえんだけど」
わからないか、そうか。
「まあかいつまんで言うとだな、お前と兄ちゃんは運命の糸で雁字搦めって事だ。それはもう、グッチャグチャのネッチョネチョに」
「なんかキメェな、それ」
「そんな事言われたら兄ちゃん泣くぞ」
この宇宙一の美少女は、もう既に言ったとおり、俺の妹である。名前は夕闇三久瑠と言う。俺をこのゲーム、M&Sに誘った張本人だ。
と言うのも数日前、大学が休みであったがために暇を持て余していた俺に、なんと心優しいことだろうか、三久瑠が「やることないなら一緒にゲームしねえ?」と、提案してくれたのだ。
妹に遊びに誘われるなんて、兄としては最大の幸福、最上の誉れ、断る理由は皆無。故に俺は二つ返事、いや“一つ返事”で『YES』と即答。ネット通販でVRゲーム用のヘッドセットを速達注文し、そして本日、このM&Sの世界にログインしたわけだ。
「ゲームの中じゃ、顔もいじくれちまうからな。こんな道の真ん中でキョロキョロしてる初心者見かけなかったら、多分兄ちゃんのこと、スルーしてたぜ。わかんなかったよ、兄ちゃんだって。つーか兄ちゃん、現実よりちょっとイケメンじゃね? もしかしてキャラメイクで顔弄くった?」
「ふふん、その通りだ妹よ。お前に格好悪い姿なんて見せられないからな。キャラクターメイクの所で、色々と顔をいじくらせて貰った。もっとも実際は、鼻を少しだけ高くして目をでかくしたのみで、他は殆どいじくってないが。どうだ? イケメンのお兄ちゃんに惚れ直したか?」
「そうだな。出来れば現実でもそんくらいカッコよかったら、嬉しいんだぜ」
「…」
整形手術、受けようかな。割と真面目に。
「…そういうお前は、現実とあんまし変わんないだな、三久瑠。顔とか、見た目とか」
「まあな。だってこういうゲームって、自分と同じ見た目のキャラが、色々活躍するから楽しいもんだろ?」
「見栄張って顔を弄くった兄ちゃんの前で、そんな事言わないでくれ…耳が痛い」
ついでに言うと心も。
しかしまあ、三久瑠のその考えに関しては、賛否両論…かな。
三久瑠の言うとおり、『自分と同じ姿のキャラが活躍するから楽しい』という考えも、一定数はあるだろう。しかし一方で『自分とは全く違う人物になって活躍する』のが楽しいと考える人間も、相当数居るはずだ。
ま、これに関しては、人それぞれって事で。誰が正しくて、誰が間違ってるだとか、そんなのはナンセンスな話だ。
「でもあれだな、三久瑠。お前はゲームでも現実でも、変わることなく普遍的に可愛いな。ふつくしぃな。クレオパトラも斯くたるやって感じだ。相変わらず惚れ惚れしちまうぜ」
「そ、そうか? へへ、ありがとなんだぜ、兄ちゃん」
あぁ、なんと可愛い。照れている姿もまた、可愛いな。可愛すぎる。
ここが公衆の面前だとか、ゲームの中だとか、そんなのお構いなしで、この宇宙一の妹を、愛でたくなる。愛でまわしたくなる。
いっそ、周りの連中に見せつけるように、愛でてやろうか。嫉妬させてやろうか、周りの野郎共を。羨まれるくらいに、この可愛すぎる妹のことを抱きしめてやろうか。
「兄ちゃん、一応言っとくけどさ。ゲームの中で他のプレイヤーに“濃厚接触”したら、アカウントBANされちゃうぜ? いつもみたく、アタシに抱きついたりしたら、一発アウトだかんな」
「…左様ですか」
さすが我が妹。変態兄貴の考えは、全てお見通しと言うことらしい。抱きついて撫で回す前に、釘を刺されてお灸を据えられた。
やれやれ、アカBANされると聞いちゃあ、さすがに妹に抱きつくわけにはいかないな。三久瑠と一緒にゲームをするために、わざわざ速達して貰ったこのゲームセットが、使用開始から僅か数分で、無用の長物のガラクタになってしまう。
そんな事になったら、さすがの俺も、このヘッドセットを発注から僅か一日で迅速に届けてくださった佐川のお兄さんに、顔向けが出来ない。妹を愛でるのは、現実に帰ってからにするとしよう。現実の世界でゆっくり、妹を愛でてやろう。そこでなら邪魔も入らんだろうからな、うん。
「そういやさ、兄ちゃんは結局、キャラネーム何にしたんだ? まさか本名使ってんじゃ…」
「そんなわけあるか。いくら兄ちゃんでも、ネットという大海で、自分の個人情報さらけ出す程マヌケじゃないぞ。見くびるなよ」
「ふーん、じゃあ、なんて名前にしたんだよ?」
「いいだろう。教えてやる。兄ちゃんの名前はな、“NONENAME”だ!」
「…は? NONENAME? 名無しって…まさか名前つけなかったのか?」
「ノンノン! “NONENAME”が、名前なんだよ。つまり、“名無し”っていうのが名前ってことだ。格好いいだろう?」
「…かっこわる。中二かよ」
「泣くぞ、兄ちゃん」
妹に格好悪いと言われる。それ即ち、兄の名折れ。兄として最大の屈辱。未来永劫、忘れ去られることなく語り継がれる、人生最悪の汚点。
なんたることだ。三久瑠に「うわぁ! NONENAMEって、すっげえカッケーぜ兄ちゃん! さっすがアタシの自慢の兄ちゃんだ!」と賞賛される予定が、何をどう間違ったのか、『だせぇ』と罵倒されてしまった。すごく恥ずかしい。死にたい。今すぐにでも、即死系ダンジョンに飛び込んで瞬殺されたい気分だ。誰か俺を八つ裂きにしてくれ。
「なんだよ“名無し”って。意味分かんねえぜ。その名前つけたとき、なに考えてたんだよ兄ちゃんは?」
「え? いや…その、なんか…“名前がない”って言うのが名前なのって、格好いいかなぁ…と…思いまして…ほら、『誰でもない誰か』みたいな感じでさ。すごく…カッコよくない?」
「だっせぇ」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
妹に、ネーミングセンスを罵倒されて泣き叫ぶ兄貴が居た。
俺だ。どうか夢であるなら覚めてくれ。
「しかも、なんで日本人のくせして、わざわざアルファベットで書いちゃってんだぜ兄ちゃん。そういう所が、さらに恥ずかしくねえか?」
「ひぎぃ!」
「しかも全部大文字。小5のアタシでも知ってるぞ。普通は、頭文字だけ大文字なんだぜ。大学生なのに知らねえのか?」
「や、やめて! やめるんだ三久瑠! それ以上兄の威厳を破壊するな! 暴虐の限りを尽くすんじゃない! お前、お兄ちゃんが恥ずかしさのあまり、自殺してもいいのか!?」
「破壊するも何も、すでにボロボロな気がすんだけど?」
「返す言葉もございません!」
もう嫌だ。ゲーム開始から十分と経たずに、このゲームにログインしたことを後悔しているぞ。
“まだまともに戦ってすらいない”のにだ。
なんだ。なんなんだこのゲームは。開始数分で、しかも“戦う前から”やる気が失せるとか、とんでもないクソゲーだぞ。まあ、やる気が失せてるのは、全部俺が小っ恥ずかしいキャラネームにしちゃった所為なんですけどね。
いやでも、ゲーム開発者が、中二くさくて小っ恥ずかしい名前を検出するフィルタリング機能をつけてくれてたら、俺は今こんな思いをしなくて済んでたわけだから、やっぱりこのゲームはクソゲーだ。間違いない。あとでありとあらゆるレビューサイトで“最低”として評価してやる。
「…そういえば、俺の方はともかくとして、お前の方はなんて名前なんだ三久瑠?」
「ん? アタシか? アタシの方“は”普通だぜ」
「いや、三久瑠よ。まるで兄ちゃんの名前が普通じゃないみたいな言い方、しないでくれないか?」
「だって普通じゃねえじゃん、兄ちゃんの名前」
「…それもそうだな」
「んで、あたしの名前だけど。兄ちゃんと違って、すっげえ可愛い名前なんだぜ」
「へえ、それは楽しみだな。で、なんて名前なんだ?」
「ミッキィっつうんだ」
「おい待て」
危険を察知したお兄ちゃんの制止に、しかし愚かなる我が妹は「なんだよ兄ちゃん?」と首をかしげる。
「えーっと…すまん、多分聞き間違いだろうけど。今一瞬、凄まじく“危ない”名前が、聞こえた気がしたんだが。いや、確かに可愛い名前ではあるよ? 世界中の子供達から、愛されてそうな名前ではあるよ? でもさぁ…」
「なに言ってんだよ兄ちゃん。大丈夫か?」
我が妹は、心配そうにそう尋ねる。
うん、聞き間違いだ。きっとそうだ。そうに違いない。そうであってくれ。いくら三久瑠といえど、そんなクレイジーな名前をつけるわけがない。聞き間違いで間違いない。
きっと、先ほどまで妹に、自らのネーミングセンスの無さを散々罵倒されてたせいで、耳と頭がイカれちまってたんだな。だから、“呼んではいけないあの人”の名前が、聞こえたんだろう。うん、きっとそうだ。
「悪いな三久瑠。もういっぺん、お兄ちゃんにお前の可愛い名前を聞かせておくれ。今度はハッキリと、大きな声で頼むぞ」
「わかったぜ兄ちゃん」
そう答えると我が妹は、周りに居る他の人達にも聞こえるくらい大きな声で「ミッキィィィィィィィィィィ!」と叫んだ。
やっぱ完全アウトのヤベェ名前じゃねえか。
「は? ヤバい名前? なに言ってんだよ兄ちゃん」
「それはこっちのセリフだ、妹よ。一応言っておくが、我が家には、某社に名前の利用料を支払うほどの経済的余裕は存在しないぞ」
もし支払い要求されたりしたら、一体どうしましょ。少なくとも我が家が売りに出されるのは確実である。明日からホームレスなんて、そんなの兄ちゃん嫌だぞ。
「だからなに言ってんだよ。あたしの名前、三久瑠だろ? だからミッキィ。全然おかしくねえじゃん」
「確かに“理由には”おかしな点は一つも無い。ただな、法治国家において、それは決して無断で用いられてはならない名前なんだ。“呼んではいけない名前”なんだよ。ヴォ◯デモート並にな」
某“夢の国”の、マスコットキャラクター。黄色いヤツと並び、世界で最も有名なネズミと称される、D社のラスボス。
あろうことか我が妹は、そんな世界最強のマウスと同じ名前を、自分のキャラクターネームにしている。訴えられるぞ。
「訴えられる? だからさ、なに言ってんだよ兄ちゃん。だって考えてもみろよ。ミッ◯ーって名前自体は、別におかしくないだろ? ありふれた普通の名前だろ?」
「いや、そうか? 某ネズミ以外じゃ、普通聞かない気がするが…」
「有名人と同姓同名の別人がいたって、別にソイツがパクりって事にはならないだろ? 単に有名なのが“そっち”ってだけで、有名じゃない方にだって、自分の名前を名乗る権利くらい、あるはずだ」
「うむむ…なるほど、確かにその通り…」
「まあアタシは、ミッ◯ー好きだからこの名前にしたんだけど」
「じゃあやっぱ確信犯じゃねえか」
「いやでも、一応予防線は張ってるんだぜ? ミッ◯ーじゃなくてミッキィだし。“―”じゃなくて“ィ”だし」
「そこそんなに重要か?」
いや、何というか…俺は今猛烈に、兄として、危機感を抱いている。
大丈夫だろうか? 俺の妹、なんか色々と、ヤバくない? 小5という年齢を差し引いても、著作権に関するリテラシーが低すぎじゃない? 大丈夫?
こんなゲーム今すぐにでもやめて、妹に著作権に関する特別授業をしてやった方がいいのではなかろうか…
「んなことよりさ、早く行こうぜ兄ちゃん。こんなとこで無駄話してねえでさ」
妹の将来に一抹の不安を覚えている俺を、三久瑠はそう言って急かした。
「せっかく兄ちゃんも、このゲームにログインしてくれたんだ。アタシ、早く兄ちゃんと一緒に、冒険したいんだぜ」
「はうっ…!」
「…? 急にどうしたんだよ兄ちゃん、胸なんか押さえて」
「いや…唐突に『兄ちゃんと冒険したい』なんて言われた所為で、俺の心に存在する“妹バロメータ”の針が振り切れちまった…危うく死ぬとこだったぜ、ふぅ」
「…んだよ“妹バロメータ”って」
「妹に対する愛の度合いを示すメーターだ。ちなみに、振り切れると死ぬ」
「殆ど爆弾じゃん」
「そう、爆弾だ。全世界の全ての兄貴はな、全員がその心に、妹という名の爆弾を宿しているのさ」
「…なに言ってんのか全然わかんねえ」
「いずれわかるときが来る。そしてその時、お前は兄ちゃんのお前に対する愛情の深さを知り、こう言うだろう。『お兄ちゃん大好き! 結婚して!』とな」
「…きもっ」
とまあそんな感じで。俺はこのM&Sという名のゲーム世界に、足を踏み入れたのだった。