嵐の中で 1
その日の朝は、最悪の目覚めだった。
どんよりとした空、今にも一雨来そうな天気そんな中、家の門口には沢山の人だかり。
それぞれが口々に「金を払え」「金返せ」と叫びながら、家のあちこちを叩いていた。
その光景を窓からぼんやり眺めていると眠っていた脳が一気に目覚める。
「えっ借金取り、チンピラが来た。」と呟くと、唐突に背後から説明される。
「そう。毎朝利息の回収に来るんだ。おはようアレックス」と兄はにこやかな笑顔だ。
「おはよう兄さん…、利息、借金って」
「えっーと、借金は30万ゼナぐらいかな。利息は1万」と笑いながら話して来た。
まじか金貨で30枚、店の売り上げの7、8年分。貸金規制法や総量規制なんてあったものではない。
ちなみにこの世界での平均年収が5、6千ゼナ程である。
見たところ家に金は無さそうだ。
「兄さんお金はあるの。」
「無い。全く無い」と当たり前のように兄は口にする。この間もチンピラ達は騒ぎてる。
しかし、このままでは埒があかない。裏口も塞がれしまっている。
騒ぎを聞きつけた官兵がやってきて、騒ぎは収まったが、チンピラ供は一行に帰る気配を見せない。
そこへ落雷を伴って嵐のような大雨が降りだし、そこでようやくチンピラ供が姿を消した。