馬車で6日移動しました。
幌馬車に乗り込み乗り換えを繰り返し、6日が経った。
ここまでくれば大丈夫だろうと思っていた。
しかし、この街は見覚えがある。
それも当然の結果、馬車は2つの街を往復していたのだ。
普通の馬車に乗って移動する事に決めるが、夜逃げ同然で出たため、当然お金もほとんどない。
そこで僕はある決断をする。
1度家に戻り、身支度を整えて再出発する。
時間的にも昼頃だし、この時間なら安全だろうと考えで行動する。
「ただいま」と言いながら、家と繋がった。店から入ると、次男のカイルがいた。
「おかえり、アレックス。」と微笑んで迎え入れてくれた。
「グリスマン兄さんは?」
「あぁ、兄さんは居ないよ。」と暗い表情で言い、続きを語り出す。
「この商会はもうじき潰れるんだ。」と笑いながら答えてきた。
僕は突然の報告に、「マジで、何で?」と問うと
「兄さんとお店の金庫のお金が消えた。ごめんよアレックス、グリスマン兄さんを止めれなくて。」兄カイルの頬を一筋の涙が、溢れ落ちる。よく見ると目にはクマのあとが見せる。
「兄さんいつからから寝てないんだ。とりあえず店の事は、僕に任せて少しでも休め」と気休めを言う。お金を取りに来たのに、家にはお金がありそうにない。
その日は、早めに店を閉めた。幸い売るものはほとんど残っていない。
兄が起きるのを待ち、兄と2人で家族会議を行う。
「僕は王都に行く。それに王都には母さんもいるしね」自分の決断を告げる。
母は僕を産んで以来身体を壊し、王都にある治癒術院で療養をしている。
これからの店のことを告げる。
「商業ギルドにこれを持っていけば、なんとかなる。」と兄に数枚の紙を差し出す。
「これは…」
「兄さん見た事無いと思うから説明するね、これは専売許可書と言って、この紙に記された商店でしか、商品が取り扱えないだ。オセロとトランプと将棋がね、他にもどんなのがあるか知らないけど、これを売れば結構なお金になるよ。」
本来の目的はこれを持ち出し金に替える事だったが、兄の現在と生まれ育った家が無くなる現実は堪えられなかった。
「兄さん。明日はお店を閉めて2人でギルドに行こう。さぁ、冷めないうちに、ご飯食べないと、そしてそうと決まれば、今日は早く寝ないとね」
そうこうして2人だけの家族会議は終わり、夜を越え、朝を迎えるのだった。