終わりと始まり
成功を約束された、転生だった筈だ。
前世ではふつうの家庭に生まれ、高校卒業後は、専門学校に進学し、病院に事務職として入職、 20年間会計業務をこなしていた。その間に見たカルテの数は20万冊を超える。度重なるサービス残業、休日出勤による身体の酷使。所謂過労死である、死因急性心不全か脳卒中として処理され、病院のブラックな所は闇に葬り去られている事だろう。
商家の3男として生まれ。3歳にて言語と計算を極める。天才少年としての地位と、裕福な生活で、何不自由なく暮らしていた、13歳の誕生日を迎える朝までは。
2人の兄によって、亡き者にしようと刺客を差し向けられ、そのまま何処へ行くかもわからない、干し草の積まれた馬車に乗り込み逃げた。
事の発端は父の遺言にある。
「15歳の誕生日を迎えると同時に商家の全て私に継がせる」
父は私が7歳の時に事故に遭い死亡となっているが、実の所は不明だ。
父が亡くなるまでは兄達と仲良くしていたが、遺言が出てからは、次第に会話も減っていた。
それでも2歳上の兄のカイルとは仲良くやっているはずだった。
恐らく5歳上の長男グリスマンの仕業だろう。
5歳の時に転生テンプレのオセロを作成し、大ヒットその後もトランプ、将棋と自重しなかったツケか、人様の発明をパクリ、さも自分のアイデアかの様に振舞った事でバチが当たったのか、今となっては、どうでもいい事である。
兄のカイルは優しく、温厚な性格だが、グリスマンという男は、器が小さく俺のオセロ、トランプ、将棋抗し、商品を作るが大量在庫を生み出しては俺に何かと敵愾心剥き出しで対抗してきた。そのせいでヒット商品売り上げと大量在庫で収益はマイナスになっていた。
俺も成功だけでは無い、商品説明のPOPを作成するも、売り上げには直結せず、高級品の紙の無駄遣いなどがある。それはこの世界の識字率の低さを知らず作成してしまった、稚拙な考えであった、しかしそれならと絵による説明にする事によって売り上げが伸びた。
そんなこんなで兄を嫉妬の鬼と化し、兄に命を狙われ夜逃げ同然の生活を送る羽目になった。