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掌編小説集5 (201話~250話)

UFO来たる

作者: 蹴沢缶九郎

ある日、地球の上空に一機の未確認飛行物体が飛来した。飛行物体は適当な広さの場所を見つけると、そこに静かに着陸した。初めて遭遇する地球外の存在に、人類は「奴等は地球を侵略に来たんだ」とか、「いや、友好を結びに来たのだろう」と好き好きに噂をする。


やがて、それは起こった。皆が固唾を飲んで見守る中、飛行物体の一部分が開き、中から姿形が人間にそっくりの宇宙人が姿を現したのだ。宇宙人は小型のバイクのような物に(また)がると、遥か空に飛んで消えていってしまった。

後に残された飛行物体はその場に静止したまま。まだ中に仲間がいるのかいないのか、一体何しに来たのか、このままでは埒があかないと、飛行物体に向かい巨大なスピーカーで呼びかけが行われ、その他に電波や光によるコンタクトも試みられたが、飛行物体からの返事はなく、いずれも結果は同じであった。


学者達が集められ、飛行物体についてあれこれと議論を繰り広げる。ある学者は、「奴等はどこかで我々の様子を(うかが)っていて、笑いバカにしているんだ」と言ったし、別の学者は、「地球侵略の為、我々が先に攻撃するのを待っているに違いない」と言った。そのどれかが正解なのかもしれないし、全てが不正解かもしれない。答えのわからない人類にとって出来る事は、ただ飛行物体を見守るのみであった…。


飛行物体が出現して一週間が経過し、飛行物体の周りには規制線が張られ、誰も近づけなくなる。ある一羽のカラスが、飛行物体の上に留まり、人々は「変な事をしてくれるな」と肝を冷やすが、カラスからすれば人間が勝手に騒いでいるだけで、そんな事カラスの勝手である。


どこかの新興宗教の教祖が規制線の間近にやって来て言った。


「馬鹿者ども!! あの飛行物体は神の使いである。私が呼びかけるから見ていなさい」


と、飛行物体に向かい何やら叫んでいたが、もちろん何の変化もなく、この出来事が原因で威厳を失った教祖の宗教は、信者の脱退が後を絶たず、教祖は数日後に命を絶った。


次にやって来たのは歌手。


「人類の文化を学びに来たのでしょう」


と、ギターを弾きながら唄を歌いだした。この歌の下手な事。とても聞けたもんじゃないと、周りの人間によって取り抑えられた。


そんなこんなで一ヶ月が経ち、とうとう飛行物体に変化があった。いつかの宇宙人が空飛ぶバイクに乗って戻り、飛行物体に乗り込むと、地球人には何をする事もなく、飛んで去っていったのだ。それから、二度と飛行物体が現れる事はなかった。


誰かが言った。


「あの宇宙人、我々と何ら変わらないじゃないか。路上ならぬ、地球駐車をしていたんだ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 肩透かし系の古典的オチ。 楽しませていただきました。 人間の無様な動きがコミカルすぎる。 [気になる点] カラスが蛇足だったかな? カラスの辺りってオチと全く同じこと先に説明してる。 (人…
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