記憶
更新、間を空けてしまってすみませんでした!!!
「魔鬼」
あの人の声がする。温もりがする優しい手が僕に差し伸べられる。でも、その温もりはどんどん僕から離れて行って。行かないでって言っても意味はなくて、寂しくて悲しくて苦しくて死にそうだった。
ダンッ
響いたその音は、僕が一番嫌いな音だ。目の前が真っ赤に染まる。あの人は、血まみれで倒れていた。
空は泣きだしていた。僕の頬を伝ったものが雨なのか涙なのかは分からない。火薬と血の匂いがあたりに充満していた。
「ハッ……ハァハッハァッ」
久しぶりにあの夢を見た。今でも、あの火薬のにおいと血の匂いは忘れない。絶対に。
ベッドから降り、身支度を始める。シャツを着て、上着に手を伸ばす。ふと、上着のボタンがとれかけている事に気付く。昔はいつもあの人がやってくれた。裁縫箱を取り出し、とれかけたボタンを再びつけ直す。裁縫を教えてくれたのもあの人だった。料理を教えてくれたのもあの人だった。たぶん僕の生活の殆んどを支えているのはあの人から教わった事なんじゃないかと思うほど僕はあの人からいろいろ教わった。
でも、やっぱり幸せなんてそう長く続くものじゃない。
また、僕の所為で人が死んだ。
僕の所為で、僕の所為で、僕の所為で